Rita McBride, _National Chain_ Galerie Deux, 目黒区柿の木坂2-10-17 (学芸大学), tel.03-3717-0020 1999/9/9-12/18 (日月祝休), 11:00-18:00 オフィスの天井に使うレールで1m四方程度の単位で組まれた格子が、人の肩程の 高さに吊るされたインスタレーション作品。ギャラリーいっぱい、少し入口から はみ出るほどに広がっており、ギャラリーの天井から細いワイヤで吊るされている。 格子はギャラリーの長方形に対してバイアスになっており、入口から観ると ギャラリー空間を上下に切っているような感じもある。 実際にギャラリーの中に入ってみると、この肩ほどの高さというのが絶妙である。 なんとか屈んで下を歩くことができるくらいの高さだし、格子から頭を出すと、 格子の上面が視線と近いため、その下側の視界が遮られた感じとなり、格子による 上下の区切りが強く感じられるからだ。穿たれた穴から頭を出している感じに近い。 このインスタレーションは、以前にも Rotterdam, NL でやったことがあるそう なのだが、そのときよりも少々低めに設定されているそう。欧州の人と日本人の 平均身長の違いを、やはり意識しているのだろう。 もちろん、贅沢なほど天井の高く床面積も広いホワイトキューブのギャラリー空間に、 天井用の建材のレールを使っただけのミニマルな作りも、逆にいろいろ想像力を かきたてられるものがあった。 格子の下を屈み歩いたり、這いずりまわったり、転げまわったりして移動しては、 頭を出していると、視界の変る感じがとても面白いし。一人でではなく複数人で 来てゲームのようなことをすると、楽しいのではないか、という気もする。 あと、ダンスやコントのようなパフォーマンスのようなことをしたり。 作風からしてヨーロッパの作家かと思ったら、アメリカの作家ということだった。 今は Berlin のカフェを使ったプロジェクトもしているとのこと。建築の写真の 作品もあり、建築や空間に関心のある作家なのだろうか。 _ _ _ Steven Pippin, _Fax 69_ Gallery Side 2, 渋谷区千駄ヶ谷1-29-4-B1F (千駄ヶ谷) 1999/9/10-10/8 (日月休), 11:00-19:00 去年の夏に Comme des Garcons 青山店に設置された数枚の連続する自動ドアの 作品 _Endless Entrance_ が、ガラスの自動ドアの透明性が仮想的なものに過ぎ ないこと暴く作品という感じで面白かった。そんな印象のあった作家だったので、 ちょっと期待していた。 今回は2台の Fax を使った作品。一方の Fax から送信したデータをもう一方の Fax で受信する一方、用紙をループさせ受信側の Fax のプリントアウトを送信側の Fax にフィードさせている。 白紙で始めるとのことなのだが、ノイズとして生じる黒い点などが、このループの 中でどんどんと増幅され、一日も回していると紙は真っ黒になってしまうという。 とても単純な仕組みで視覚的なアナログノイズを可視かするような感じが面白い。 また、パターンは機種や場所によって違うということだったので、ノイズにも、 いろいろな特性があるのだろう。そういうのを対比するような展示もあっても良いと 思ったが。 また、バスタブや洋式水洗トイレ、洗濯機でピンホールカメラを組んで撮影をする という作品も作っていて、その様子を捉えたドキュメンタリ・ビデオも見せて もらった。正直に言うとビデオではよくわからなかったが。_Endless Entrance_ といいい、どうも作風やコンセプトが分裂気味な作家のような気がする。 _Artforum_ Sept. 1999 号によると、今年の Turner Prize にノミネートされた ようだが、その記事によると38歳。所謂 British Young Artists にしてはちょっと 世代が上なのだろうか。 _ _ _ ちょっと世代も違うし、回顧展ということで展覧会の質も違うと思うがついでに軽く。 Gianni Colombo 草月美術館, 港区赤坂7-2-21草月会館 (青山一丁目), tel.03-3408-1294 1999/10/2-11/16 (日祝休), 10:00-17:00 1960年代に Gruppo T などで活躍し、cinetic art で知られたイタリアの現代作家の 回顧展。6階7階の展示はいかにも回顧展という感じで観に来たことを後悔したが。 地下の草月ホールを使って設置されたインスタレーションの再現は、それなりに 楽しめた。 _Topoestesia_ (1965) は、傾いた通路と小部屋という感じで、このデコンな感じが、 小泉ビルの Eisenman Gallery を連想させられた。と思ったら、この作品の発想の 元になったという Baster Keaton の映画に出てくる傾いだ建物のスチル写真が 展示されていたのだけど、それが、デコンな建築そのまんまだったので、笑って しまった。元祖デコン建築は Baster Keaton にあったのかー。 ヴェネチア・ビエンナーレで大賞を取った _Spazio Elastico_ (1968) の再現は、 暗い空間に白く浮かびあがる格子状の糸が、ジリジリと変形するというもの。 モーターのジージーいう音といい、今からすると素朴な感じが逆に気楽に楽しめた。 ICCのようなコンピュータを使ったギミックも無いし。もっと広い空間なら、 中で遊べるのに、とは思ってしまったが。 1999/10/2 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕