_Fuse Exhibition: An Exhibition Of Fuse Posters And Fonts_ ギンザ・グラフィック・ギャラリー, 中央区銀座7-7-2DNP銀座ビル (銀座) http://www.dnp.co.jp/gallery/contents.html, tel.03-3571-5206 1999/10/1-26 (日祝休), 11:00-19:00 (土11:00-18:00) - Neville Brody, Phil Barnes, Ian Swift, Malcolm Garrett, Gerald Unger, Just van Rossum, Max Kisman, Erik van Blokland, Barbara Butterweck, Erik Spiekermann, Martin Wenzel, Cornel Windlin, Barry Deck, Jeffrey Keedy, Rick Volicenti, David Berlow, Paul Elliman, Peter Saville, Pierre di Sciullo, Lo Breier/Florian Fossel, Paul Sych, Ian Anderson, Rick Vermeulen, David Carson, Phil Bicker, Tobias Frere-Jones, David Crow, Tibor Kalman, Chu Uroz, Margaret Calvert, Vaughan Oliver, Russell Mills, Mario Beernaert, Sylke Janetzky, John Critchley, Jon Wozencroft, Ian Wright, Lucas de Groot, FUEL, Matthew Butterick, WD+RU, Simon Staines, Scott Clum, Tomato, Katsuhiko Hibino (日比野 克彦), Pablo Rovalo, Moniteurs, xplicit, Brett Wickens, Tom Hingston, Frank Heine, Peter Grundy, Alexei Tylewich, Naomi Enami (江並 直美), Florian Heiss, Function, Anna-Lisa Schoenecker Neville Brody によって1991年に創刊されたグラフィック・デザインの雑誌 _Fuse_ の展覧会。雑誌といってもフロッピー・マガジンという形式で、実験的なデジタル・ フォントが、ポスターやエッセーと共に箱に入れられているというもの。デザインも タイポグラフィ中心のグラフィックデザインである。 _Fuse_ は、Digitalogue で一号10,000円近い値段で売られているのは知っていたが、 高くて手がでるものではなかったので、フォントや (全部ではないが) ポスターを 観る機会ができたのは、とても嬉しかった。 展示の仕方は、ちょっと芸が無いようにも思ったが、変に気取ってポスターや フォントに集中できなくなるインスタレーションをされるよりはましかもしれない。 一階がフォント一覧の展示、地階がポスターの展示となっていた。展示はデジタル データの出力のデモンストレーションも兼ねていたようで、全てロール状の紙に 直接出力されたものだった。 フロッピーマガジンの展覧会の割に、デジタルっぽさが少なくて紙媒体がメインな ところが、大日本印刷のギャラリーらしいと思ったが。地階では、_Fuse_ のCD-ROMを G3 Mac で操作できるようになっていた。その画面を投影する部屋も作られていたが、 こちらの方は意図不明。これならもっと展示するポスターの数を増やして欲しかった。 _Fuse_ は、グラフィック・デザイナー自身によるコンテンツの出版の先駆けと 言われているものであり、依頼されてデザインしたものとは違う、ある意味で、 Art 的なものである。個人的には、こういう自律性の中にある作品だけよりも、 _Fuse_ の contributer たちの、雑誌やレコード・ジャケット、広告での仕事などを 並置したりした展覧会の方が、面白かったのではないかと思うところもあった。 その一方で、平凡な現代美術の平面の展覧会よりも、ずっとグラフィカルに面白い 展覧会ではないか、とも思う。 _Fuse_ の創刊者の Neville Brody は、_Face_ 誌などで有名になる前の1980年代前半、 Fetish レーベルのディレクターとして Cabaret Voltaire のジャケット等を手掛けて いた。_Fuse_ の編集者である Jon Wozencroft も Touch レーベルの設立者でもある。 contributer の中にも、Buzzcocks のジャケット・デザインを手掛けた Malcolm Garrett、Factory の創設者の一人で Joy Division 〜 Now Order のグラフィック・ デザインを手掛けてきた Peter Saville、4AD レーベルのイメージを決定つけた デザインチーム 23 Envelop の Vaughan Oliver、Wire 界隈のジャケット・デザイン だけでなく Dome とレコード製作したこもある Russell Mills など、1980年代から UK の Punk 〜 Post-Punk を追いかけてきた人なら、そのレコード・ジャケットや ポスターなどでお馴染みのデザイナーの、フォントやポスターが楽しむことが出来る だろう。_Fuse_ で見られるデザインは、Post-Punk のジャケットデザインに多く 見られた、独特のテイストの延長にあるデザインだと思う。しかし、それらしいと 思うときもあるし、え、あのデザイナーがこんなフォントを、と思うものもある。 もちろん、Tomato や Ian Swift (Talkin' Loud など) などの最近の Techno 世代 のデザイナーもいる。 僕は、音楽を通してグラフィック・デザインに接することが多いので、知っている デザイナーに偏りがあるが、contributor 達の経歴を見ると Nike などのスポーツ 用品の広告のデザインを手掛けていたり、とか、もっと幅広いようではあるが。 UK の雑誌ということもあってか、デザイナーが欧州に偏っているようにも思うし、 デザインのテイストもそのように思うが。しかし、USA の contributor もいるし、 日本からも 日比野 克彦 と 江並 直美 が参加している。が、ローマ字の世界での タイポグラフィーを中心とするグラフィック・デザインで勝負というせいもあるのか、 それほど目立ってはいなかった。 ちなみに、最も気に入ったフォント+ポスターは、Malcolm Garrett の _Stelth_。 正方形の中に丸っこいサンセリフの文字を抜いたもので、可読性も高いし。 そういえば、Buzzcocks の最近の作品のCDのジャケットでも、これが使われて いたと思う。 1999/10/2 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕