Mischa Kuball, _Power of Codes - Space of Speech_ ミシャ・クバル『パワー・オブ・コード ― 対話のスペース』 東京国立博物館本館第一室, 台東区上野公園13-9 (上野), tel.03-3822-1111 1999/10/12-31 (月休), 9:30-17:00 博物館の日本の陶磁史に関する展示室を、展示はそのままにインスタレーションを 施したもの。壷や茶碗の名器が並ぶ展示ケースの上の数箇所に、回転するスライド 投影機が設置されていた。スライドから投影された白い光の様々なフォントの ローマ文字一文字や矩形や円のような単純な図形が、天井近い壁のところを ぐるぐる回っている。投影される文字や図形は時々切り替えられていた。 スライドの設置位置 (壁からの距離) によって、文字が大きく移動が速くなったり、 小さくなってじりじりしか動かなくなったりする。その一つの文字や図形の変化の めりはりが面白いだけでなく、複数の文字や図形が抜き差しされる感じも面白い。 陶磁器の展示室だし、日本での展示なのだから、ローマ文字ではなく、カナ漢字を 使ってみるのも面白いような気がしたけれども。それでも、戦前の建物の中の 陶磁器の展示室、という、伝統的で古めかしく感じる空間に、文字が走っている 様子を見るのは、妙なずれがあって楽しい。子連れの客で、親がゆっくり壷や茶碗を 眺めているのに、子供は走る文字を見付けそれを追いかけ展示室内を走り回ったり している様子を見るのはもっと楽しい。さすがに、親に叱られていたけれども。 Niele Toroni Gallery Shimada, 渋谷区神宮前4-7-2 (表参道), tel.03-5411-1796 1999/10/12-11/20 (日月祝休), 11:00-19:00 初めて Niele Toroni の「30cm の間隔で規則正しく繰り返される50番の絵筆の痕跡」 を観たのは、千葉市立美術館の『静謐』(1995) ででだったのだけれど、そのときは、 普段は掛け軸などが展示されている空間に、そのドットが施されていた ― 常設の 展示物は取り払われていたけれど。そして、それが面白いと思ったのだけれど。 しかし、この Gallery Shimada の空間では、特に他に展示があるわけではないので、 作品が弱く感じられた。入口のサッシのガラスにドットが施されていたので、もっと 中身も面白いかと期待したのだが。 Niele Toroni や Daniel Buren のような作家にしても、自律した展覧会を開催する のではなく、Mischa Kuball の展覧会のように博物館の常設展の中に作り込んだ方が 面白いと思う。東京国立博物館も、第一室を Kuball に充てただけだったけれども、 全室をそういった現代美術作家に割り当ててインスタレーションするような企画を すると、もっと面白いように思うのだけれど。 1999/10/31 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕