大道芸ワールドカップ in 静岡 1999 "Daidogei Worldcup in Shizuoka, 1999" 駿府公園, 青葉シンボルロード, 等, (静岡市内) 1999/11/3-7 http://www.daidogei.com/ 1992年から始まった静岡の『大道芸ワールドカップ』も、今年で八年目。なかなか 静岡まで観に行く気合が入らないのだけれど、久々に遠征してきた。以前に行った のは1995年だから4年ぶり。今回は平日の2日を含む2泊3日ということで、かなりの 余裕を持って観て回ることが出来、楽しむことができた。見た演目は30近くなった。 そんな中からいくつか紹介したい。 東京近辺というと、春の横浜の『野毛大道芸』があるわけだが、こちらがむしろ ジャグラーや日本的な芸能が多いのに対して、静岡は大道芸というよりも野外劇、 もしくは野外ダンスとでも言うものが多い。そして、静岡に行く主な楽しみは、 なかなか観る機会の無いこの手の演目を観ることだった。 そんな中で最も良かったのは、Australia の空中ダンス・カンパニー Strange Fruit。 男女2人ずつの4人だったが、どうやらサブセットでの来日ということのようだ。 高さ5mのファイバーグラスのポールの上に体を固定して、ポールをしならせ揺らし ながら踊る、というもの。秋晴れの青空を背景に頭上を舞う様子はとても綺麗で、 遠目からでもかなりの客の目を惹いていた。ポールの上でのパフォーマンスは動きは 制限されているわけだけれども、逆に制限されているだけに単純なポールの揺れに 様々なニュアンスを付加していくやり方が、とても面白かった。衣装はクラウン的な ニュアンスを持たせた1900年代初頭のファッションだったが、もっとモダンな衣装な ものでも面白いのではないかと思う。日や時間によって演目や衣装を変えるかとも 期待したけれども、大きな変更はなかった。3日の演技よりも、4日の演技の方が余裕 があったように思う。ちょっと演出も変わっていたし。4年前に『大道芸ワールド カップ in 静岡』を観たときも、Stalker という、やはり Australia 出身の 高足 (stilt) のダンス・パンバニーが出演していて、これも素晴らしかったのですが、 高足とポールという違いはあるものの、Strange Fruit もそれと同じような系統の パフォーマンスだと感じた。Australia にはこのようなカンパニーが多いのだろうか。 普段は大道芸というより cirque (circus) のプログラムの一つとして演技されて いそうなパフォーマンスも多く見られたわけだが、その中でも一番良かったのは、 Spain から空中芸の女性ソロ、Fura。高く吊るした布や空中ブランコにぶら 下がっての空中ダンスとでもいうべきもの。激しい動きは無いのだが、静かに 滑らかに様々な姿勢を決めていくという感じで、抽象的な演出が逆に肉体の動きの 艶めかしさを際立たせているように感じた。昼と夕方の2回、演技をしたのだが、 昼は黒い衣装に空中ブランコ、夕方は赤い衣装に赤い布、という演目を違えており、 空の色や明るさをよく考えて構成されていたように思う。 cirque の clown 系のアクロバットや、その文脈から離れた comedy 系の芸人も 沢山観たし、ハズレも2〜3程度しか無いレベルの高さだったと思うけれども。 その中で、それも初めて観たものの中では、Germany の Ulik は、ローラー ブレードを履いて巨大扇風機を背負って突っ走ってくる登場から派手。tuba な 自転車、大太鼓な ring (cirque における)、など鳴り物の使い方のセンスも良くて、 とても面白かった。 ジャグラー系は、今までも野毛大道芸などで観てきたお馴染みの芸人のものが多く、 もちろん充分に楽しめたのだけれど。初見の中では、Spain の Mambo Brothers。 2人組なのだけれども、まさに、synchronized jaggling とでもいうべき、ぴったり あった演技が綺麗だった。ナイト・パフォーマンスで観たのだけど、火の大きさや 発光ボールなど、暗い夜を考えた演出をしていたのも良かった。 以前に野毛大道芸で観たときは全然だめな仕上がりだった、雪竹 太郎 の 『アントニオの夜会劇』も、ナイト・パフォーマンスで観たのだが、今回は 引き出された客のセンスが良くて面白かった。大道芸って客に大きく左右される のだなぁ、と痛感。 日本人の芸人というと、青空曲芸シアター 小出 直樹 や つぶつぶオレンジ とか 好きだし、相変わらずの芸を楽しませてもらったのだけれど。初見の中では、 Mr. アパッチ が、話の巧さも含めて、印象に残った。なんでも、上海の雑技団に 留学していたとのこと。 『大道芸ワールドカップ in 静岡』は良くオーガナイズされており、ガイドブック などを駆使してかなり効率良く観て回ることができる。この規模のフェスティヴァル ともなるとその必要があると思うが。その一方で、通りがかりに足を止めて観る、 というような、普段の街中で観るような大道芸ならではの楽しみには欠けるような 気がする。ステージでやっているのと変わらなくなってしまっている、と思うような ところもあって、大道芸のフェスティヴァルのようなものが抱える矛盾も感じた。 それから、今回は休暇を取って平日2日を充てたのだけれど、休日より空いていて 観易くて良かった。また、幼稚園から小学校低学年くらいの客が多く、その反応も 楽しむことが出来た。特に、青空曲芸シアター 小出 直樹 のときに、場を横切った 子供は最高に面白かった。休暇を取るだけの価値はあると思う。 1999/11/07 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕