東京オペラシティの現代美術スペース 2題。 『感覚の解放』 _Releasing Senses_ 東京オペラシティアートギャラリー, 新宿区西新宿3-20-2 (初台), tel.03-5353-0756 1999/9/9-11/21 (月休), 12:00-20:00 (金土12:00-21:00) - Anya Gallaccio, Christian Marclay, Saburo Muraoka, Martin Walde _Real/Life - New British Art_ (栃木県立近代美術館, 1999/4,5) で朽ちていく 花を使ったインスタレーションを出展していた Anya Gallaccio の今回の素材は、 蝋燭とチョコレート。蝋燭のインスタレーションだったら、近い傾向を感じる 渡辺 好明 のインスタレーションの方がいいかな、とか思ってしまうところが、 ちょっと弱いか。少々期待していただけに残念。 最も気に入ったのは、Martin Walde。特にロープを沢山集めて積み上げた作品。 端に座ってロープをつついている客ばかりだったが、やはり、ここはロープの 山の中に飛び込んで引っ張り回して遊びたいところだ。周囲の客の奇異の視線も 気にせずひと暴れしたけど。複数人で縄を使った馬鹿なパフォーマンスとかすると、 楽しいだろう、とか思ったが。 『ICCビエンナーレ'99 ― インタラクション』 _ICC Biennale '99 - Interaction_ NTTインターコミュニケーションセンター, 新宿区西新宿3-20-2 (初台), http://www.ntticc.or.jp/, tel.0120-144199. 1999/10/15-11/28 (月休), 10:00-18:00 (金10:00-21:00) - Maurice Benayoun, 近森 基, Jean-Marie Dallet, Ken Goldberg and Randall Packer and Wojciech Matusik and Gregory Kuhn, Perry Hoberman, Eduardo Kac, Martin Riches, Douglas Edric Stanley, Studio Azzuro, Grahame Weinbern インタラクションをテーマにした展覧会だが、作品と鑑賞者が感覚を直接的に 繋がって相互作用していると感じさせる、というより、間に何段かの観念的な 段階を経ているといると感じさせるものの方が多く、操作してもまだるっこ しくていまいち。というか、どうも、観客は安全な位置というか観念的な高み から作品を操作している感じがするものが多く、それがダメに感じられた。 Studio Azzuro は、『恋スル身体』展 (宇都宮美術館, 1999/7,8) での _Chorus_ というインスタレーションがユーモラスで良かったので、期待していたのだが。 今回の作品は、鑑賞者は突っ立っているだけだし。 そんな中でダントツに面白かったのは、Martin Riches, _Interactive Field_。 台の上に、片面を白、もう片面を黒に塗った羽パネルが沢山並んでいて、 周囲の観客の動きに反応して、羽パネルがいろいろ向きを変えるというもの。 仕組み自体はかなり単純なアイデア一発という感じだが、台の周りを動き回ると 音を出して動くので、ちょっと楽器を演奏しているような気分。思わず、台の 周りを走ったり歩いたりステップを踏んだり、手をかざしたり振り回したり、と 遊んでしまった。そんな楽しみ方が出来る作品だと思う。といっても、そんな ことをしている間にも、数人の客が出入りしたのだが、みな、台の周りを少し 歩いてみて台の下を覗いて仕組みを見て、納得したような顔をして出て行って しまったけれども。 直前に『大道芸ワールドカップ in 静岡』に行ってきたばかりだったことも あるのかもしれないけれど、観客をパフォーマンスさせる/作品に巻き込んで こそインタラクティヴ、とも思う。そして、『感覚の解放』展にしても、 『ICCビエンナーレ'99 ― インタラクション』展にしても、面白く感じら れたのは、そういう作品だったように思う。 1999/11/7 嶋田 Trout Fishing in Japan 丈裕