_Wide Screen_ - Curator: Jerome Sans. - Ange Leccia & Dominique Gonzalez-Foerster, _Ile de Beaute_ (1996, 35mm, 70min), Dominique Gonzalez-Foerster, _Riyo_ (1999, 35mm, 10min), Didier Bay, _Wet Dreams_ (-, Video, 46min), Marie Legros, _Walking Things_ (1997, Video, 6min), Philippe Parreno, Carsten Hoeller & Rirkrit Tirabanija, _Vicinato_ (1995, Video, 12min), Rainer Oldendorf, _Marco (1-5)_ (1992-97, Video, 49min), Markus Hansen, _Falling Angel_ (1997, Video, 45sec), Pierre Huyghe, _Blanche-Neige Lucie_ (1997, Video, 4min), Georges Tony Stoll, _The Day I Decided To Paint My Hands Blue / August 1997 (1997, Video, 10min), Sophie Calle, _Double-Blind_ (1992, Video, 74min). 『パサージュ:フランスの新しい美術』展 (_Passage: New French Art_; 世田谷美術館, 1999/7-9, 他巡回) の関連企画としての、フランス在住の現代美術 作家による映画・ビデオをメディアに使った作品の上映会が、『第5回アート・ ドキュメンタリー映画祭』 (ユーロスペース, 1999/11-12) の中の企画として 行われている。キュレータは、フランス人の Jerome Sans 。Sidney Biennale を 皮切りに巡回しているらしい。 アート的なイデオロギーを背景に持った映画であれば、映画の文脈においても、 特に独立系プロダクションを中心に制作されてきているわけだし。現代美術作家が 制作したからといって、さほど期待していなかったが。やはり、睡魔と闘いながら 観るような作品が多かった。全体的な印象では、1時間近い長さの作品で顕著になる のだが、やはり、鑑賞時間の扱い方が下手のように思う。そういう意味では、 短編のほうが楽しめたように思う。以下、個別に作品に触れる。 一番面白かったのは、Marie Legros, _Walking Things_。黒いハイヒールを履いた 女性が部屋を歩き回るだけなのだが。床の上ではなく、題名通り「物の上を歩く」 様子を捕えている。同じルートを2回。それも、アングルは、ハイヒールのクロース アップで、女性の姿はもちろん、部屋全体の様子を捉えるのも難しい。ヒールに 踏みつけられ、凹むベッドや椅子、鞄の様子が次々と写されていく様子が、特に、 プラスチック製の椅子やボウルが砕け散ったペッコリ凹んだりするところが、妙で 可笑しい。ちょっとフェチが入った感じも、ユーモアに繋がっているかもしれない。 Peter Fischli & David Weiss, _Der Lauf Der Dinge_ (1987) の大掛かりなドミノ 倒しを捕えたビデオ作品と似ているかもしれない。こういう映画をもっと多く取り 上げて欲しかった。 比較的静的な映像とナレーションや字幕を衝突させるような短編映画も、あまり 映画で使われないだけに、印象に残るものもあった。ディスニー映画『白雪姫』 フランス語版の声優だった老女性が、その中の歌「いつか王子様が」を口ずさむ様子 をバストアップで捕えた映像に、その声の権利に関する彼女とディズニーの間の裁判の 経緯の字幕を重ねる Pierre Huyghe, _Blanche-Neige Lucie_ (1997) は、淡々と しているだけに、逆にぐっとくるところもあった。京都の鴨川の映像に、高校生の 携帯電話での会話を重ねた Dominique Gonzalez-Foerster, _Riyo_ (1999) も、 画面と会話のズレは面白かったけど、ちょっと他愛無さ過ぎるような気もした。 2年前に単独で公開された Sophie Calle, _Double-Blind_ (1992) を除けば、 長編は観ていて辛いものばかりだけだったが、そんな中では、映画のステロタイプ からなる映画、Rainer Oldendorf, _Marco (1-5)_ (1992-97) は、元ネタと言葉が 判れば、もっと楽しめたかもしれない。セリフは最初はドイツ語だったが、 いつのまにかセリフがフランス語になってたりしたのだが。そういうのがはっきり 判れば、その異化作用も強烈なのかもしれないのだが。 それに比べたら、Sophie Calle, _Double-Blind_ (1992) は、物語性が強いので 退屈さからは逃れているし、登場する男女2人の撮影した映像と、さらにアフレコ されたナレーションの食い違いが、常に互いをズラしていくようなところは、 確かに面白いのだが。ただ、題材の恋愛がロマンチックに過ぎる嫌いがあるのと、 このテーマなら70分余もの長さの必要はないのではないか、という気もする。 1999/11/29 (1999/11/28) 嶋田 Trout Fishing in Japan