第2回「いーぐる日曜フォーラム」(97/8/24) 脱ロック 嶋田 丈裕 (a.k.a. TFJ or Trout Fishing in Japan) e-mail: tfj@kt.rim.or.jp / fax: 03-5742-7055 WWW: http://www.kt.rim.or.jp/~tfj/ 解説+選曲リスト 1 rock / punk / post-punk / post-rock 1.1 はじめに Marka Spiegel 「ポスト・ロック (post rock) って何?」 Colin Newman 「『メロディ・メーカー』誌のあるジャーナリストによって発明 された用語だ。歌唱といったものがあまりなくて、レトロでも MTV 的でも なくって、けど、ビートもあまりなくて。って、ビートにこだわった途端、 用いているビートの種類によって、ダンス音楽のあるジャンルにされてしまう からね。けど、ビートを入れなければ、ポスト・ロックになり得るんだ。」 -- ~swim Records, 1996/9/23 「ロックの評論家はいつも芸術を主観的な表現について表現してきた。たとえば 音楽は『ローリング・ストーン』誌の発展させた批評の原理によれば、正直に 捉えられた。批評家は演奏がフィーリングの正統なる表現と聞こえたならば高く 評価した。フィーリングが明確に強く出ているほど良いとされた。一番素朴な レベルでは、歌詞が歌い手自身の体験を歌っているかどうかで歌詞を聴いた。 洗練された批評家でさえ誠実さを聴いた。ロックの創造性は個人の感受性を記述し、 ポップ・ミュージックの魂の脱け殻のような定型と対比された。 前衛パンクはそういう音楽的関連を芸術的な目的に転用した。彼らは音楽用語の 「自然性」を疑った。すべての音楽は作られたものだという前提から出発して、 音楽の根底までさらけだそうとした。さまざまなジャンルの規則ときまりを並列 した。聴き手はそれまでは聴けなかった効果が音楽的に現れているのに注意を 向けるようになった。ロックのファンが最も軽蔑していたポップのクオリティで ある人工性を評価した。彼らはリズムの規則 (ディスコ、ファンク、レゲエ) に 関心を持ったが、それはリズムが主観主義的・現実主義的に最も記述しにくい 音楽要素だからだ。ドラマーはギタリストや歌手のように自分を表現しているとは 聴かれていない。ポップのビートの社会的意味は普通、機能的で、音楽を踊り やすくするだけなのだ。」 --- Simon Frith (1983) サイモン・フリス: サウンドの力, 晶文社, 1991 (Simon Frith "Sound Effects, '83) 1.2 Wire に見る punk から post-punk の4年 ('77-'80) Wire "Pink Flag" (Harvest / EMI, CDGO2063, '77/, CD) Wire "Chairs Missing" (Harvest / EMI, CDGO2065, '77/, CD) Wire "154" (Harvest / EMI, CDGO2064, '77/, CD) Wire "On Returning" (Restless Retro, 7 72358-2, '89, CD) この時期の Wire を概観できる好編集盤。Jon Savage のライナーノーツも良い。 "It was a deconstruction, a piss-take of rock'n'roll music. The structure were rock'n'roll, but taken apart and put together in different ways." --- Graham Lewis 1.3 80s後半の独立系の rock の状況: NME C86 世代, etc Various Artists "NME C86" (Rough Trade, ROUGH100, '86, LP) UK の独立系レーベルの世代交代を告げる好編集盤。 R.E.M. "Eponymous" (I.R.S., IRSD-6262, '88, CD) US の独立系レーベル出身のロックバンドの雄 R.E.M. の独立系レーベル時代のベスト。 2 post-rock Wir "So And Slow It Grows" (Mute, CDMUTE107, '91, CDS) Sweet Exocist "C.C.C.D" (Warp, WARPCD1, '90, CD) Sheffield で Warp レーベル活動開始。第一弾アルバムは、Richard Kirk (Cabaret Voltaire) のユニット Sweet Exocist。 2.1 Too Pure 4AD レーベルのオーナー Ivo Watts-Russell により、91年に London で設立された。 Various Artists "Too Pure - The Peel Sessions" (Strange Fruit, SFRCD119, '92, CD) 初期の Too Pure の音を収めた BBC John Peel Show のセッション集。Th' Faith Healers, Stereolab, P J Harvey が参加。 P J Harvey "Dry" (Too Pure, PURECDD010, '92, CD) Seefeel "Pure, Impure" (Too Pure, PURECD25, '93, CD) Laika "Silver Apples Of The Moon" (Too Pure, PURECD42, '94, CD) Mouse On Mars "Cache Coeur Naif" (Too Pure, PURE65CDS, '97, CDS) Scala "Slide EP" (Too Pure, PURE66CDS, '97, CDS) Stereolab "Emperor Tomato Ketchup" (Duophonic UHF, D-UHF-CD11, '96, CD) Turn On "Turn On" (Duophonic Super 45s, DS45-CD18, '97, CD) Long Fin Killie "Houdini" (Too Pure, PURECD47, '95, CD) The Fall "The Infotainment Scan" (Matador, OLE055-2, '93, CD) 2.2 Matador '80年代に Homestead レーベルのヘッドだった Gerald Cosloy が NY で設立。 Various Artists "Soluble Fish" (Homestead, HMS126-2, '93, CD) Fish And Roses "Dear John" (Feel Good All Over, FGAO#12, '94?, CD) Run On の前身のバンド Yo La Tengo "Autumn Sweater" (Matador, OLE250-2, '97, CD) Barbara Manning "1212" (Matador, OLE221-2, '97, CD) 2.3 Drag Ciry / Thrill Jockey Chicago をベースに活動する独立系レーベル。 Various Artists "Hey Drag City" (Drag City, DC20CD, '94, CD) Drag City を概観できる好編集盤。 The Red Krayola "The Red Krayola" (Drag City, DC52CD, '94, CD) Gastr Del Sol "Mirror Repair" (Drag City, DC54CD, '94, CD) Tortoise "Million Now Living Will Never Die" (Thrill Jockey, THRILL025, '96, CD) The Sea And Cake "The Fawn" (Thrill Jockey, THRILL036, '97, CD) 2.4 その他 Various Artists "Monsters, Robots And Bugmen" (Virgin, AMBT11, '96, 2CD) 英 "The Wire" 誌の新譜紹介ページの post-rock コーナーをよく担当している Simon Hopkins による好編集盤。post-rock 入門の決定盤。 Various Artists "Newman Passage" (Blast First, BFFP141CD, '97, CD) Various Artists play Wire "Whore" (WMO, WMO2CD, '96, CD) post-rock なバンドによる Wire のカバー集。 以上。