清水湯

2001年3月31日をもって廃業しました


(いい感じなんだけどねえ)

aqua.gif (191 バイト) 場所 地下鉄東西線 妙典駅 徒歩3分

ギリギリセーフ。

やっとこさ妙典の清水湯へ。この駅、回りの地名が「塩焼」だのヘンな名前が多いっす。魚の塩焼でも焼いてたのかな?いや、やっぱり塩を造ってたんだろうなあ。「妙典」の由来はなんなんだろう。そういや行徳っつーのも謎だよなあ。駅を降りて徒歩3分ほど。駅周辺の再開発が進んでいるようである。この辺りも東京のベッドタウンとして、没個性な街になっていくんだろうなあ。

さて清水湯、遠くから煙突発見。建物の造りがこれまた味のある古い建築だが…正面に裸電球が1個。これまたいい感じっす。正面に「長らくご愛顧…」と廃業宣告書が張ってある。下足の鍵はさくらの旧タイプ。男、女の表示は扇子型の板。関東では珍しいかも。


(廃業宣告書)

番台はかなり低く、女湯脱衣場も素通しで見えそう。番台にはお姉さん、ここの娘さんか?それとも嫁?「終わりだから手伝いに来たの」と客と話している。銭湯料金は385円のはずだが、400円出すと20円おつりにくれる。番台の上には、古い木で出来た…銭箱?この箱が貨幣で重くなった時代もあったんだろうなあ。

さて脱衣場。天井高く格子になっている。センターに長いすと灰皿。丸籠が積んである。で、ロッカーが…これまた木のロッカーで…鍵がない。まあ浴室から素通しで見えるからいいか。一個だけ使えない鍵がついてるのがあったが、なんとこれはFUJIの鍵。幻の鍵だ。たしか函館で見たヤツだぞ。

で、ロッカーを使ったのは良かったのだが、このロッカー、内側に木のスライドの引っかかり棒がついてる。昔は付いている鍵と一緒に機能したんだろう、なんて思いながらいじっていると、ふと扉を締めたとたんに「すとん」と内鍵が落ちた? ありゃ〜。扉には小さな穴以外なにも付いていない。開けられない。素っ裸でひと思案。考えてみたら番台に言う以外ないだろう。番台のお姉さんにその旨告げると、「あ、それは」と先の曲がったバールのような器具を貸してくれる。たしかに、この造りなら同じような目に会う客がたくさんいてもおかしくない。 しかしまあレトロな脱衣場である。

さて浴室へ。これまた凄い。島カランが10個、カランのみ。当然シャワーも鏡も付いていない。驚くことに窓際と男女の境の壁にもカランなし。男女の境はXX 工房?と書いてあるタイル絵。富士山と湖畔のもののようだが、半分はげかかっていてよく判別できない。どうやら脇に「岩手」と書いてあるようだ。

黄色の赤線付きケロリンを持ってカランへ。しかしこの赤線って、何のためにつけてあんだろ。カランは赤青ボール型のWAGURIのカラン、押すと脇から水がぷしゅーと漏れる。ふと隣の爺さんを見ると、タオルをカランの上において使っている。なるほど!漏れるカランは結構あるけど、こうやりゃいいのか。湯音は適温、湯量もOK。

天井は高い2段型。窓側の壁にシャワーらしきものが一つある。客はほかにゴマ塩頭の爺さん、この爺さんが良くしゃべる。ありゃ〜、総刺青にゴールドチェーンのお方も入ってきた。爺さんと会話している。千葉の道路の話をしている。「ハマコーさんが力あったからねえ。」そうか、千葉だもんな。この銭湯廃業したら「また他のところで会うかもしれないけど」。そうか、銭湯廃業はこうした地元の繋がりを立ちきってしまうんだなあ。

さて浴槽。これまたすごい。小さめの2槽式でオーソドックスだが、あちこちがタイルが破損していて、パテで補修してある。こんな風呂でも浅風呂の方にジェット。バスクリンらしい緑色の入浴剤が入れてある。温度計は静かに46度上を指している…浅いほうにまず入る。お、熱いや、44度以上あるかも。こりゃ温度計の温度は本当かな?いやしかし、熱い風呂はいいっすねえ。続いて深風呂へ…泡が少し出ている…う〜ん、45度以上あるなあ。ナイス。壁画は男湯富士山のペンキ絵。手前が湖、画風からいってナカジマ師っぽいよなあ。

上がりは脱衣場でグレープフルーツジュース。さっきの総刺青のお方が、深風呂にじっくり入っているなあ。長いすで一服していると、ゴマ塩頭の爺さんが、「ありゃ〜、魚ひっくり返しちゃった」とやっている。「お風呂出てからだと魚屋しまっちゃうからさ」と話かけてくる。

「魚屋で切ってもらったの買うと、他じゃ食えないね。いいところのマグロで筋のないとだけど、500円だったもんね。」
「外で食べたら高いもんねえ。」
「そりゃそうだよ、1000円以上するよ。」

そういいながら、その爺さんがテーブルの上に放り投げたのはDOCOMOの503i。まったく変なハイテク国家ニッポンっす。こんな爺さんも親指でメール打ったりするんかな。ニッカボッカにタオルを頭に巻いた客がやって来て爺さんと挨拶。この爺さん、この銭湯では顔っつーか長い常連なのかな?しかし困るだろうなあ、無くなったら。常連として。客の会話を聞いていると、みんな実は家風呂あるみたいっす。でもやっぱり、ボロ銭湯でも銭湯きちゃうんだよなあ、わかるなあ、その気持ち。「来月からウチの風呂だよ」と嘆いている。

帰りがけ、つい自然に爺さんに 「お先に〜。」「ほいっ、お休みなさい〜。」 まあしかし、相当にレトロだが、人の会話の多い人情銭湯っす。名残惜しいが、これも時代の流れか。

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(2001年3月)