潮湯


(これ銭湯、「ゆ」のマークが可愛い)

aqua.gif (191 バイト) 場所 広島駅からバス、日宇那下車3分

「うしおゆ」で検索かけてたから分からなかったんだよなあ…「しおゆ」と読むっす。

広島では前々から行きたかった潮湯へ。この銭湯は写真集「廿世紀銭湯」にも登場してる、広島エリアでは有名なレトロ銭湯。なんと昼から営業中、盆暮れ除いて無休の模様。広島駅からバスで30分ほど、広島市街から南を見ると金剛山っつー小さな山が見えるが、この裏側にあるっす。すなわち海に近いエリアっすね。


(金剛山と、近くにあったお寺)

仁保車庫行きバスで日宇那下車。小さな町並みになっているっす。で、このエリアは正面にどーんとマツダの宇品工場。さらに広島ベイブリッジが未来的な光景をかもし出す。もともと古いエリアなんだけど、新しいものと混在する街。


(マツダの宇品工場)


(夜の広島ベイブリッジ)

バス停を降りて2分ほど、古い住宅街の中に…「しおゆ旅館」の看板と、丸い「ゆ」の看板。広島はなぜかみんなこの丸い「ゆ」が出てるっすね。建物がまた、木造の風格はあるけど庶民的な建物。銭湯はこの奥の部分にある模様なんで、洗いものとかやってる脇を抜けて奥へ。手前の部屋に座っている親父が番台代わり、ここで350円払うっす。なんか人の家に来たみたいだな。


(玄関、普通の銭湯とは、ちと異なる)

入り口は「男」「女」に分かれてて、そこはさすがに銭湯っす。中に入ると土間に下足棚。番台らしきものがあるんだけど、今は使われていない模様。男女の境にはカーテンの出入り口。木の番号が書かれたロッカー。ロッカーの鍵はツルカメっす。鍵付きロッカーは旅行中の身分としては有り難い。天井はまずまず高いかな?家庭用体重計、プラスチックの籠も積まれているっす。真ん中に木の長いす、さらに…水の張られた金タライ?灰皿代わりになっているっす。


(番号が書かれたロッカー)

浴室の入り口に、「湯中思郷」と書かれた木の板が張ってある。「湯に浸かり故郷を思う」っつーような意味かな?いい言葉じゃん。じ〜ん。


(シブいです)

さて浴室へ。天井はさほど高くはないが、真ん中に高い湯気抜きが。カランは男女の境に1列に7個。桶は普及品、カランは赤青の逆三角形のものっす。湯の出がかなり不安だったけど、湯量、湯温ともにばっちり。少し熱めの湯だけど、ドバドバ出るっす。男女の境の上部は擦りガラスになっているっす。

さて、この銭湯の最大のウリ、それは海水をくみ上げて沸かした風呂っす。だから潮湯っつーんだな。ちなみに、最初「うしお湯」だと思ってたんだけど、「しおゆ」が正式のようっす。真ん中に円形の浴槽、確かに海水っぽく、少し吸い物のような色がついているっす。さっそく入るかー。

温度は42〜43度くらいか?それにしても…優しい。湯感がとても優しくて、柔らかく感じるっす。おそらく45度くらいにしてもチクチクすることは無いのではないだろうか?しみじみ浸かるにはベリーグッドっす。海水と身体の水分成分は似通ってるっつーことなんで、浸透圧もバランスが取れてるからだろうなあ、なんて少し理屈っぽく考えてみる。

浴槽は3段になっているっす。で、浴槽の中空をパイプが通り、浴槽に落ちている。なるほど、海水だとパイプの傷みも激しくて、しばしば交換が必要だろうから、埋めて置くことはできないんだろうなあ。パイプが浴槽に浸かる辺りは竹が巻かれてて保護されているっす。あとはライオンの湯出口。このライオンが…塩分がすっかり張りついており、梅津かずおのマンガに出てくるような、表情レスのグロいライオンと変わり果ててる。この湯は循環だろうなあ、と思いながらも、たまらずライオン口の湯をナメてみる。しょっぱい。確かに海水だ。

さらに、隅に水風呂もあるっす。これもまた嬉しいっす。こっちは真水、ただしパイプ類は全部浴室中に剥き出しで上部を通っている。水風呂に入って再び潮湯へ。いいっす。サイコー。ここまで来た甲斐があるっつーもんだ。

で、この銭湯の気になるもの…それは…サウナ。古典的なレトロ銭湯の癖にしっかりスチームサウナがあるっす。っつーか、「蒸し風呂」っつー方が感じを表しているかも。で、浴室の奥に高さ1メートルくらいの古いドア、極狭のドアの上に、小窓から中が…真っ暗。なんか「パピヨン」が閉じ込められてた独房みたいで、すげー恐い。使われてないのかな?と思っていると…親父が一人中に入って、3分ほどして出てくる。うぉー、すげー気になる!

っつーわけで恐る恐る進入。身体を超かがめて中に入るが、なかが真っ暗な洞窟のようで全く見えない。ドアを閉めるとまさに独房状態。恐いよ〜!が、次第に目が慣れてくると…小さな洞窟になってるのが分かるっす。天井がどのくらいあるのか分からない?それにしてもすげー蒸し風呂だ。中に入ると蒸気がこもり、これがなかなか効き目あるっす。上がって水風呂。さらに、壁にイキナリ唐突にシャワー口がついているっす。しっかり水の立ちシャワー。これまた少し嬉しいかも。

上がりは脱衣場で一服しながらまったりと。西に行くと、時差の関係で夕方が遅いっす。東日本の夕方とはなんか違った感覚。どう違うかっつーと難しいのだがとにかく空気が違うっす。親父の座っているところで、ビン牛乳も販売中の模様。


(なんとなくまったりとした感覚の、西日本の夕方)

さて、東京から来たことだし、親父に声かけてくかな…ここで一思案。あっし的にはヨソ者が無遠慮にいろいろと「質問」するのは、なんか場の破壊者みたいで嫌いなんすよねえ。なんか不自然でなく快く思ってくれるように…

「この間、写真集に出てたでしょ?」
「ああ?あれね、ヘヘヘ」
「アレ見て、東京から来たんですよ」
「えーっ!?東京から?」
「と言っても、仕事のついでだけどね、へへへ」
「いや〜、ボロいところでしょ」
「いやいや、なかなか良い風呂でしたよ、東京から来た甲斐がありました」

っつー感じでひとしきり会話。「良かった」っつーことは伝えておかんと…客のヒトコトがこれからも仕事をやってく励みになるっつーのはどの商売でも同じだろうからなあ。


(夜のマツダの工場の煙突)

風呂を出てから、少し広島の港町、宇品周辺を散策。市街から離れた港湾エリアっつーのも、だいたい面白いことが多いっす。市電に沿って銭湯を少し見てみることに。それにしてもさっきの潮湯のお陰で、なんか身体の温度が高い気がするっす。保温効果があるんだろうなあ、冬ならなかなか効きそう。


(広島の市電って、本数がすんごい多いんすよ。乗るべし!)

まずは勝利湯へ。ヘンな名前ついている銭湯はレトロ系が多いはず…やっぱりだ。かなりキてる店構え、相当気になるがなんと今日は休業中。裏に回ると湯気抜きと太くて低い煙突が見えるっす。この名前といい、次回ここに来てみないとなー。


(勝利湯、休日のようだが、レトロな予感がたっぷり)

さらに南下。まいづる湯。ここは割と一般的な街の銭湯っつー感じ。残念なことにここも休業中。


(まいづる湯、ここも残念ながら休日)

さらに南下し、海岸近くに、いなり湯。ここは完全にスーパー銭湯系だなあ、改装して現役バリバリ。入ってみたいが、市電の終電が気になる…


(いなり湯、スーパー銭湯系)

先に飯だな、と、宇品の街の中に何気にあるお好み焼屋に進入。市街の店より、こういう離れたところの店の方が味わい深かろう。 この店で…どういうわけか地元の職人と意気投合、鉄板焼をおかずに延々と呑むハメに…結局終電気にしてたのが関係なくなっちまった。帰りは職人が「車で送ってってやろうか?」というも、向こうも結構ベロベロなんで遠慮しとたっす。タクシーで市中心部まで1500円くらいかな?市街に帰って深夜に音戸温泉に行こう、っつー構想が酒のみ過ぎでもろくも崩壊。でも面白かったっす。お好み焼屋のママさんが、「なんで宇品まで来たの」と聞いたので、結構はずかしながらも「潮湯に入りに」って言ったら、やっぱりあの銭湯有名なんだなあ、いたく感銘したような感じだったっす。あと、やっぱり地方に行くと、価値観は家族と仕事がガッチリ中心にあるっすねえ。え?場所と関係無くフツーそうだって?そりゃまあ失礼しましたっす。


(ガンガン呑んでしまいました…とさ)

(2002年6月)