三効湯


(感無量…時代劇のセットのようだが、現役銭湯である)

aqua.gif (191 バイト) 場所 近鉄 上野市駅 徒歩8分

伊賀上野の三効湯が超濃いという話を聞き、たまらず発動。

松坂に仕事に行った後、駅近くの銭湯でも行くか…それにしても松坂、あいかわらず昭和フレーバーの街。ポルノ映画館とか残ってるしい。駅近く、徒歩で3分ほどの京町共同温泉に行ってみるが、これがなんと今日に限って工事中で休業。なかなかユニークな建物だったが…それにしても、松坂も市中心部の空洞化が進んでいるようっす。車社会化のためだろうなあ…


(現役のポルノ映画館)

(この建物、何なんだよ…
野球の殿堂?)

(京町共同温泉、いい感じだがなんと工事中休業…
屋根の上のパイプ?が気になる)

さて、別の銭湯にも行ってみたいし、伊勢うどんも食べたかったのだが、今日は交通の便の悪い伊賀上野に行ってみるっつー予定がある…仕方ない、次回にしよう。っつーことで近鉄特急を伊賀神戸で降り、ここから単線ディーゼルに乗って上野市へ。向かいからくるこのディーゼルで、車体に「くの一」が書かれているのがあったっす。後でこれが松本零二の作と知る。それにしても、東京だとあまり高校生とか見かけんけど、こっちの電車は高校生多いっすねえ。


(単線ディーゼルにて伊賀上野へ)

いよいよもって上野市下車。なお、名古屋からだと高速バスが便利、一時間に一本程度あり、時間は一時間半っす。それにしても上野の駅前も何にもないねえ…


(上野市駅舎、右側に上野城が見える)

上野市は結構銭湯の町と聞いていたので、駅に近いところを一通り探索。まずは駅の南、銀座通りを南下して電気湯発見。煙突は関西系だなあ。さらに銀座通りを進む。上野市は空襲がなかったらしいっす。お陰で戦前の木造建築がかなり現存、背の低い民家の数々。それにしてもこの街もどこが中心部か良くわからんっす。やっぱり駅の近くなんだろな。さらに南下すると、既に廃業した鉄湯があったはずなんだが…暗いせいで、銭湯を確認できず。煙突がみつからんのっすよねえ。さらに南下、一乃湯を発見。この銭湯の入り口のネオンはなかなか見ものっす。周辺からそこそこ銭湯に人が集まってきている模様。さらに南下すればまだ銭湯があるはずだが…このくらいで引き返して、さあ、ターゲットの三効湯へ。


(一の湯、この銭湯も凄いよなあ)

駅を北に出ると、かすかに伊賀城が見えるっす。ここを右折、8分ほど行った辺りで通りから一本入るっす。割烹旅館の三田清が見えてくるっす。ここは牛刺がエラく旨いらしいが、この門構えは…ちょっとあっし一人で入るには敷居が高いなあ。


(割烹旅館三田清、ちょっとあっしには敷居が高い…)

さて、この先辺りにあるはずだ…が、通りはほぼ暗い。おかしいなあ、もしかしたら休みかも、だったら大ショックだよなあ…長屋の軒下にぼんやりと電球がついている。ん?こ、これは…その薄暗い電球の下に、牛乳石鹸の大型暖簾。同時に上部に細い煙突を発見、まさに銭湯に違いない、良かった…暖簾が出てるっつーことは営業中だ。それにしても、真っ暗な中に暖簾が。中はどうなってるんだろ?とはやる心を抑えて外観チェック。正面に廃材が積まれているっす。裏手に回ると細い煙突、ちなみにこの三効湯の裏手が高台になっており、上野の夜景を眺めることが出来るっす。


(色補正をしていない写真、さて銭湯はどこでしょう、っつーか)

さあ、暖簾をくぐろう…と、とつぜん向こうにガラスの戸。ガラスにしかも「ゆ」と書かれている。その向こうに見える光景は…廊下?どうなってるんだ?中に侵入すると、脇は民家っつーか生活スペース、中ほどに…番台?いや、フロントだろうなあ。レンガのフロント?入浴料金300円と書かれている。誰も居ない…さてどうしようかな?


(入り口のガラスから中を望む…左側に、レンガのフロントが見える。
その向こうに釜、突き当たりは銭湯入り口、上にエビス様がいるのが見えるが
かなりブキミである)

いや、それよりも…このフロントの前になんと釜が。レンガで覆われ、しかもパチパチと燃えているしい。釜場の脇にはおびただしい廃材とオガクズ。この釜場の前に爺さんがいる。「すみません〜、ここに置いておきます」と声を掛けても返事なし。さて、これは

(1)フロントの仕事は自分の仕事でないと割り切っている
(2)耳が遠くて聞こえない
(3)見知らぬ人間は客じゃないから返事しない

どれでしょうか?っつーか。後から来た客のお姉様が、「ここに置いておきゃいいのよ」ってな仕草をしてるので、300円をフロントに置いて中へ。


(…凄いフロントだ…この手前に釜場)

中へ…ってったって、これどうなってるの?釜場の脇に通路、奥に浴室入り口らしきものがあるが、さっきのお姉様が入っていったからどうやらこっちは女湯らしいっす。「曲がった方が男湯」と聞いたような記憶が。っつーことで釜場手前を曲がり、奥へ進むと浴室入り口らしき戸へ。

ここには一応、鍵付きの下足入れが数個あるっす。もっとも全部鍵は壊れているけど。で、正面に便所があるんだが…これがまた、新幹線の男子小用トイレのように、丸くガラスが。

戸を開けて脱衣場へ。この時期、冷たいっす。しかしこれがまた…木の番号付きのロッカーがあるけど、鍵は全部壊れているっす。まああっし以外客がいないから、別にいいけど。脱衣場天井は低い…民家の天井の高さ。床は木の板。この時期結構寒いっす。椅子と…火鉢?灰皿代わりの大きな鉢。日本度量の背の低いアナログ体重計。


(そしてこれが脱衣場、平成14年時点の写真っす。戦前じゃないぞ)

寒いんでサクサク風呂に入るか…と浴室へ。浴室手前のコンクリ壁には紅葉の模様。で、浴室へ入ると…これがまた凄い。天井は低く、斜めになっていて、表面はペンキが中途半端にハゲ落ちてベロベロ。桶は?無いかと心配したが、3,4個あったので一安心。椅子はゼロ。浴室床はコンクリ、っつーか冷たいよ、これ。あっしの前に誰も入ってなかったのかなあ。

カラン…これが謎であるっす。男女の境近くに、カランコーナーがあるのだが、これが小さなところに5組も密集してるっす。隣のとの間隔が30センチもない。こりゃいったいどうやって使うんだ…しかもトップに「水」「湯」と彫られた金属のレバー型カラン。ま、とりあえず湯を、とカランを押すが…お湯が出ないっす。幸いに水の方は出てくる。

まあ、なんとなくそういう気がしてたんだよなあ、と、それはそれで汲み湯体制に入る。浴槽は奥部に1槽式、真ん中がやや深いが、周辺部はかなり浅い。さっそく湯をすくう…が!こりゃ熱いよ!50度くらいあるぞ。身体に掛けるとヒリヒリ。

こうなったら仕方ない、マジメに洗うのは別のところにするか、ととりあえず風呂に入ろうとするが…さすがにこれは熱すぎ。蛇口があるので、ヨソ者が水を埋めるのは気が引けるが、まあ誰も入れないに違いない、と蛇口を開ける。

この時期、水もかなり冷たいのだが…注いでもなかなか湯温が下がらない。蛇口の下、水深20センチもないところで、直立不動。だって動くと熱いんだもん。足湯ならぬ足首湯。傍で見てると結構ナサけないものがあるだろうなあ、あっしも伊賀上野くんだりまで来て、ナニやってんだろうか…

ようやく蛇口周辺が45〜6度くらいまで下がってきたっす。これならなんとか…と深い部分に侵入。それでも身体を動かすと、熱い湯が攻めて来てかなわん。じっと不動でこらえることにするっす。しばらくすると、ジワジワっと汗が出てくる。うむ〜、堪えた後のカイカン、マゾ系だよな。

周辺を見る余裕が出てきたので、観察へ。最奥部の壁には模様のタイル、この模様はどうやってつけてるんだろうか?なんか一緒に焼いたような模様。その上部の壁は、これまたペンキが剥げてボロボロだが、もしかして昔はここに絵があったのかも?わずかに「人参」という、右から左向きの字が認識できるっす。カランコーナーの脇には、高い位置に鏡。この位置はたまに見る…立ってヒゲを剃るためだろうな。

男湯はあっし一人だが、女湯は何人か入っているらしく、結構話し声が聞こえるっす。それにしても凄い…このクラスのボロ銭は、日本でも数少ない…っつーか、後は那珂港の亀の湯くらいか?あっしの知る中では。しかしあそこも構造は一般的だしなあ。

何度か熱い湯に入っているうちに、結構暖まった。脱衣場に出ると、入れ替わりで客が。あっしを見て「こんばんわ」しかし顔は驚いた顔。常連客が当たり前なんだろうが…このボロ銭に突然、スーツと黒革のコートの男。どう見ても怪しいか?それにしても、伊賀上野といえば「忍者の里」、なんか血生臭そうな話だが、それに反して実際のここの人たちは人が良さそう、っつーか「スローライフの里」っつー場所っす。


(三効湯裏手からの上野市街の光景)

(夜の伊賀上野城)

っつーことで上がってきたが、相変わらずフロントには誰もいないっす。奥の居室の方にお姉様らしき背中が見える。っつーことでなんつーか…マニアは一度いくべきだぞ!


(伊賀の古い商店建築)

(中にクラウンが止まってたりして)

(2002年12月)