戸山文化浴場

2003年6月末に廃業しました


(これが銭湯だってわかるか〜!?)

aqua.gif (191 バイト) 場所 JR高田馬場駅 徒歩8分 もしくは新大久保駅10分

レトロな名前に惹かれて、戸山文化浴場に行ったっす。 文化浴場だって。けっけっけ。

高田馬場の戸山口下車、徒歩で8分ほど、都営の戸山住宅の中にあるっす。このエリアもまあ団地なわけなんだが、本当に古い団地であるっす。遠くから見ると、ビルのてっぺんに煙突。ははあ、あそこだな。古いビルだが、これが出来たころは「文化浴場」の名にふさわしいモダンな建物だったのだろう。


(ビル上部にわずかに煙突)

で、入り口…これが絶句。通り沿いの入り口は、風呂屋らしいものが何もない。白い看板に「浴場入り口」と書いてあるだけ。しかも地下に向かう怪しい階段。これじゃあ本当にクラブだぜ。銭湯マップを持っていなければ、まず銭湯とはわかるまい。まあとりあえず階段を降りて地下へ。

地下に下足入れと浴場玄関があるっす。地下に向かう階段はどうやら二つある模様。下足入れの鍵はカナリア。男女別れてるっす。自動ドアを入り、番台で400円渡す。


(ここまで来るとようやく銭湯らしい)

しかしこの銭湯の構造は…妙に両翼に長い銭湯である。両翼に脱衣場が延びている。センターに浴室。つまり、全体が凸の字になっているのである。ビル銭湯なので、もちろん天井は低い。しかしまあ古い銭湯ではあるっす。ロッカーは一般的なもので、鍵は松竹錠。でわ、中に入るか。

浴槽は奥にあり、真中に島カランがある一般配置だが、カランが手前入り口側まであるっす。ふと下北沢の八幡湯を思い出す。カラン数を多くとった構造。島カランはシャワーがないので、センター下座に陣取る。桶は戸山文化浴場名入の「ブラザー」の黄色い桶。

カランは6角の茶色型、一般的なもので温度は申し分なし。シャワーは固定式、ちょっと湯温が熱いだろうなあ、一般人には。客層は銀髪の年寄りが多い。まあじゃあ湯船へ。

浴槽は2槽式の一般的なもの、片方が深風呂のバイブラ、もう片方が浅風呂で3穴式のジェットが2機。バイブラもジェットも勢いがよく気色いい。特にバイブラの勢いはすごく、完全に湯中浮揚状態になるっす。備長炭の籠がある。壁画はなく、模様タイル。まあ風情はほとんどないっす。

で、湯温。温度計を見ると…おおっ!?47度。んなわけねーよなあ、45度弱であろう。それでも熱めの湯っす。このくらいの温度が気色いいっすねえ。泡にもまれてゆっくり入り、上がって水を浴びてからもう一度入る。最近こんなのを繰り返しているっす。同じ入るにしても気色が良い。

さて湯上り。コカコーラの自販機と、スライド型の冷蔵庫がある。冷蔵庫からビンのヨーグルトドリンクを取り出し一服。もちろん牛乳もあるっす。ビールもあったな。銭湯においてあるあのビールって、実は一応違法らしい…

と、ここで珍しいもの発見。。脱衣場の床で猫が寝ている。公認っつーか、飼っているのか?まああっしは別に嫌いではないからいいが…嫌いな人もいるだろうなあ。毛とか抜けるし。

長椅子でドリンクで一服。小さな庭状のものが外にあるが、完全に物置と化している。昔はどうやらランドリーもあった模様。実に殺風景な脱衣場であるのがだ、これがなぜか妙に落ち着く。みれば結構広い脱衣場ではあるっす。


(もう一方の入り口はまだ分かりやすいが、通りに面していない)

帰りは大久保方面に向かう。この辺り百人町なのだが、百人町の名前の由来ってなんだろうなあ。途中百人町市場っつー、エラい濃そうなエスニック食堂。本場のアジア人ばっかりっす。ってあっしもアジア人か。まったくこの大久保っつーところは、最近はアジア系の人種のるつぼになっているなあ。

(2000年8月)



(2003年6月撮影、銭湯とはわからんよな、やっぱり…)

っつーことで、廃業間近っつー戸山文化浴場へ急行。銭湯マップには新大久保より10分と書いてあるが、地図を見る限りは高田馬場からの方が近いよなあ…前回は新大久保から行ったが、今回は高田馬場から。思った通り、やや近いようで駅から7分ほど。


(こりゃもう一方の入口)

この辺りは戸山団地っつー大型団地があるけど…しかし古い団地、建物自体が相当老朽化が激しいっす。既にいくつか建て直している棟もある模様。ま、古いものを壊さんと、新しいものは出来ないからな、いいこっちゃ。


(かなりキてる感じだよねえ)

その団地の建物の中に…っつーか、一応団地とは別なのか?ほとんど同一に見えるんだが…ひときわ煙突の目立つビルが。戸山文化浴場っす。しかしこの屋号も、「文化」とは歴史を感じる屋号っすねえ。この銭湯、古いビル銭湯なんだけど、地下にあって入り口が二つあるっす。しかも入り口はほどんど目立たない…秘密基地系だよな。階段を下りると、「廃業宣告書」、6月末で終了とのこと。


(廃業宣告書)

通路に下足入れと傘立てが置いてあるっす。下足板の鍵はカナリア。自動ドアから中に入ると、ビル銭湯ながら番台形式。400円払って中へ。ビル銭湯だから天井はフラットだけど、それにしてもかなり古いビルだあな…高度成長期に作ったんだろうけど、昭和30年代かな?もしかして。脱衣場にも廃業宣告書が張ってあるけど、昭和26年創業とのこと、朝鮮特需の時代か?元々木造銭湯で始めたのを、ビルにしたんだろうなあ。53年の歴史に幕か。しかしその頃の戸山っつーと、なかなかエネルギッシュな時代だったんだろうなあ。


(玄関付近光景)

ロッカーの鍵は松竹の鉄板鍵。この銭湯、形状がちと変わってて、脱衣場は両翼がかなり広いっす。で、浴室の脇に、庭ともつかない妙な広いスペースがあって、螺旋の階段で上に抜けるようになってて、なぜかここに洗濯機が。このスペース、元々何につかってたんだろか?東京には珍しくIUCHI SCALEのアナログ体重計、コカコーラの自販機、長椅子、灰皿。長椅子に爺さんが何人か座ってるが、そのうちの一人がもっともらしい、知ったかぶった口調でウンチクを垂れている…これも見る光景だよな。

さて浴室へ。天井もフラット。桶は戸山文化浴場の屋号入りのブラザー、ブラザーの黄色桶も、前はしばしば見かけたけど、最近めっきり少なくなったっすねえ。後は緑椅子、M形のものでなく、フラットタイプのものっす。なんと、ピンク色の椅子もあるっす。

島カランは1列でシャワーなし。カランは茶色の6角、シャワーはやや古いけど、湯量、湯温ともにOKっす。ビジュアル系は特になし、奥は プリントのタイルっす。広告用のスペースがあるけど、一枚も広告はなし。

さて浴槽へ。基本的に最奥部に2槽のオーソドックスタイプ。備長炭が籠に入って沈めてあるっす。温度は…熱めかな?43〜44度っつー 辺りっす。浅風呂は2穴のジェットが2機。深風呂側はバイブラに湯内赤ランプ、このバイブラが結構噴出が強く心地よろしいっす。それに してもシンプルな何もない銭湯。

上がりはビン牛乳110円で一服、その他ソフトドリンク数種類と、ビールも置いてあるっす。この銭湯も、あと数日で終了してしまう訳か…

しかしふと思う。銭湯っつーのは、実は昭和の同一大量生産大量消費時代の象徴ではないかと。ともすれば、大量生産時代が悪のように思われるが…もともと1億人の日本人、一人一人のことなんて分かる訳がない。ごく普通の人たちに、効率よく等質の娯楽を提供したのが昭和銭湯の役割だったのではないかと。

「マス」というコトバが悪いように扱われるが、キミもアタシもタダの人、タダの人が1億も集まればそりゃ「マス」な訳っす。もちろん、そのタダの人の気持ちなんて、いちいち分かる訳もないけど、その時代も、実は確かに「個々」が生きてたんだよな。誰もそんなことに注目しなかった訳だし、今この時代だって、「個性を大事に」なんて叫んでいる人はいるけど、その「個性」は「ワタシの個性」であって、100キロ離れた知らない人の個性がどうあろうが、そんなことは知ったこっちゃない訳っす。多分、この銭湯が賑わってた数十年前も、沢山の無名の人にとっては「濃い場所」だったんだろうなあ。そしてその思い出は風化されて多分何も残らない…でもいいのかもなあ。古いものは壊さないと新しいものは出来ないんだからなあ。

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(2003年6月)