32話   GOOD BUY MITUBISHI-JEEP

 三菱自動車がジープの生産終了を発表した。

 小生の愛車のぼろジープは、昭和42年製JH4エンジンを積んだ「新三菱重工業」製、「ジープコーポレーション」からのライセンス生産ものである。ただしシャーシ以外は1952年以降のあらゆる部品の寄せ集めだ。乗り手同様に爺いなので、ときどきせき込むようなエンジン音をたてることはあるが、拙者が海や山へ釣りに出かける時は勿論だし、家族を乗せて河原にバーベキューに行ったり、近くの酒屋やスーパーに買い物にゆく時の大事な足でもある。

 インチキパジェロとかスペースギヤとか、旧車もどきとか、この頃の三菱は狂ったとしか思えない妙なクルマを作り続けているが、クルマの原点と言う意味ではTフォードに列する「ジープ」を見直すどころか、儲からないので生産を止めてしまうというのだ。すでに作ってしまった「ジープ」J55用のエンジンが余っているので、特別仕様車と称して限定300台200万円で販売し、すべてを終わるという。

 しかし、本当のジープ乗りにとっては、三菱のジープの歴史はとっくに終わっているのだ。シャーシを変更し、ワイドタイヤを装着し、ターボをつんだり、デカールと称するプラスティックシートで飾りたてた「太りすぎたジープ」は、すでにジープではなくなっていたから。

 ある日の午後、旧型のジムニーが、交差点で右折車線に並んで停まった古いジープと話した。

「ジープどん、頑張って走ってますねえ」

「なにジムニーさん、お宅こそかなりのもんですなあ」

 隠居の爺いどうしが出会うと、だいたい「ま、そこらで一杯いかがかな」となるのであるが、そこは車輌同士のことであるから飲酒などはしない。信号が青に変わった。アイドリングを止めていた二台は、エンジンスタートを一発で決めてセンターブレーキを解除した。みごとなコンディションだ。

 老ジムニーは直進。爺いジープは右折。

 ジムニーは破れた幌のバタつき音に負けじと叫んだ。

「さようなら、三菱ジープ!」


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