182話     こだわることについて


 こだわって仕事をするひとと、漫然と流した仕事ぶりの人では、やがてその結果は明確に出るものだ(なんという書き出しだ。自分で書いていて冷や汗が出る)。

 ま、仕事だけではない。人やモノへのこだわりも、ある意味では必要なことだ。情熱を持って事物に取り組むということだから。
 たとえば、こだわりのない迷い風のようなつき合いで結婚し(てしまっ)た人など信用しろと言ってもムリである。

 インターネットとはいってもこのページを見る人など極めて限られているだろうから書いて仕舞うんだが、離婚経験のある友人知人たちを見ると、ほぼ一様に他人へのこだわりが希薄な人格が多い。小生の周囲、半径2キロくらいの範囲に限ってもたくさんいるバツイチ君たちの中で(バツニも、バツサンもいるけれど)まっとうなのは二人しかいないのだ。

 いや、そんなことを書こうとしたのではなかった。ドック入りしていたジープを、さっき引き取って来たことを書くつもりだった。全くもの忘れが増え、話しの筋道をはずすようになってしまったな。歳のせいだろうなあ。それが歳をとると言うことだろうから、仕方がない。

 人でもモノでも、こだわりを持って接してはじめて本当のつき合いが生まれると小生は思う。したがって、くだらないモノにこだわりはしないし(できないし)それが人の場合でもじつは同じなのかもしれない(狭量といわれるけれど)。心を囚われるということは自在闊達な心機の活動を阻むことでもあるけれど、囚われるほどの対象を持つことの心の至福感も何物にも代え難いものだ。この手控えに何回か書いたが、小生の愛車は昭和42年製のエンジンに換装した45年製のJ3ジープである。それを昭和27年タイプのM38型に改造している。故障頻発、気息延々の老体だが、丁寧に整備していればなんとか釣りの足としての役目を果たしてくれる。なんといっても一切の無駄のない「鉄とガラスとゴムとキャンバス」だけでできた車体、直線的なローシルエットが潔いではないか。基本設計は昭和17年のままのJ4エンジンを積んでいるが、そのロングストロークが生む重厚なしかも品格ある咆哮音。う〜む、素晴らしい!

 どうだろう、ものにこだわると他の物が見えなくなり、バランス感覚が麻痺し、ひとりよがりになってしまうことがおわかりだろうか?ま、そんなもんである。アルファロメオにこだわって遂に愛車をゲットした(らしい)年若い友人がいる。修身斉家治国平天下というが(我ながら、古いなあ)カミサン、家庭、車、仕事の順番にプライオリティを(たぶん)おいてのアルファロメオの獲得だから、えらい! カミサンを最初に、仕事を最後に持ってくるなんてところに、したたかなとでもいうべき誠意を感じてしまう。

 で、お昼前にカミさんと一緒に、買い物クルマで郊外の修理工場に出かけた。シャッターは下りていたが、工場の前庭にぽつんと爺さんジープが止まっていた。マフラーの溶接修理のついでに、三菱のハンドル(S45製)を米軍のM38用純正のモノ(S27製)に取り替えてもらったのだ。このハンドルは去年信州の山奥で行われたフリーマーケットで奇跡的に発見し、12.7mm機関砲弾一個と一緒に1200円で買って仕舞っておいたのだ。砲弾は文鎮にした。いま使っているハンドルのひび割れがひどくなったので、ハンドルも交換したのだ。

 カミさんの赤いクルマと隊列を組んで家にむかった。ジープ、ジープ、ジープ。やっぱりジープだ。快走するジープ、秋の涼しい風が心地よい。新しい(じつは古いのだが)ハンドルはすぐ手になじんだ。三菱のものとは微妙にちがうグリップ感が気持ちいい。ホンのすこし細身なのでハンドリングが軽く感じる。

色は黒からオリーブドラブ(OD色=C48,M21,Y95,K20)にかわった。うちにかえって、ジープを裏の原っぱに止め、フードを開けた。電気系統、燃料系統と順番に見て行く。オイルが減っていたので、ホームセンターで買ってきた安いオイルを入れた。このエンジンには高価なオイルの必要がない。フューエルフィルターを交換し、キャブレターのスロージェットを掃除する。古いエンジンだから、両方とも詰まりやすいのだ。爺いジープは入念にチェックしてやらなければすぐダメになる。え?人間といっしょだって?いいところに気がつきましたな。その通りです。


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