1月
上燗
年の初めのためしとて終わりなき世のめでたさを松竹立てて角ごとに祝う今日

元日であります。
賢きところにおかせられては四方拝が行われ(天皇が、午前5時半に束帯をお召しになり神嘉殿の南座に出御、皇大神宮・豊受大神宮・天神地祇・天地四方・山陵を拝され、宝祚の無窮・天下太平・万民安寧を祈念される儀式)、あまり賢くないところでも国民それぞれが新年への希望をふところにしながら夕べの酒の残滓を楽しむ(苦しがるのもいるかもしれない)。
鹿児島市内ならば錦江湾べりに出て櫻島を仰ぎ、空と海を染めながら昇ってくる初日を拝みたいところである。
初日に手を合わせた後は、鶴亀旭日のラベルも華やかな「真鶴」をいただきましょう。

江戸の昔から初夢は「一富士、二鷹、三なすび」

正月二日に見る夢を初夢という。
室町時代から良い夢を見るには、七福神の乗った宝船の絵と歌を書いたもの枕の下に入れると良いとされていた。これでも悪い夢を見た時は、翌朝、宝船の絵を川に流して縁起直しをする。さて、のん兵衛の皆さんの見る初夢は?
この日は「かきぞめ」。年が明けて初めて書や絵をかく行事。書き初めで書いたものを左義長で燃やし、その炎が高く上がると字が上達すると言われている。左義長はもともとは爆竹の意味があるらしいから中国伝来だろうけれど、この火にこめられた意味合いは日本独自の祭りとなって伝承されてきた。キーボードばっかり打っていないでたまには万年筆や筆で字を書いてみるのもいい。焼き芋焼酎の「鬼火」を一杯いただきながら。

●変革の狼煙は薩摩の剣から。

慶応4年正月3日、戊辰戦争が始った。京都の鳥羽・伏見で旧幕府軍と薩摩・萩軍が戦闘、装備で劣る旧幕府軍は敗退し、徳川慶喜は海路江戸へ敗走。新政府軍は慶喜追討令をうけて江戸へ進撃した。この年の8月下旬から9月はじめにかけて戊辰の役のもっとも激しい戦いが山形県温海(あつみ)町で繰り広げられた。庄内軍の奮闘は凄まじかったが、9月11日にいたりついに関川口を破られ、その後も奮戦空しく終戦を迎えた。
この激しい戦いで敵味方とも多大な被害を出した。一歩も引かない見事な戦いぶりの庄内武士に対して、攻める薩摩は大隅岩川「伊勢家私領五番隊」のつわものたちだった。それから130年を経て、あつみ町と岩川の交流を見る。感無量。「私領五番隊」をストレートでいただきながら時に夢を飛ばす。

●新年宴会…え、いまさら?

5日は「新年宴会」の日である。いや、過去形で、であったと言わなくてはならないかな。明治7年から昭和23年まで行われていたこの宴会、天皇が豊明殿に出御され、皇族・大勲位・親任官・勅任官および外国使臣を召して宴を賜った儀式である。
民間でもこれにならって、この日に新年を祝う会がいたるところで行われていた。民間企業の仕事始めは1/5というところが多いから最初の宴会ならずとも飲みが始まるのはやはり昔と一緒でしょうか。なじみの暖簾をくぐって「さつま白波」を6:4のお湯割で注文する。焼酎飲みの一年が始まる。

●焼酎のんべえの聖地は易居町、碁打ちの聖地は市ヶ谷。

1/5は囲碁の日である。東京の市ヶ谷に本部を置く日本棋院が提唱した。もちろん「い1ご5」の語呂合せ。碁が好きで焼酎のファンと言う方々には、この市ヶ谷はたまらぬ好い場所。もちろん川向こうには原酒娘こと水谷保子女史が奮闘する嘉多蔵があるからですね。はい。ここで「八幡」をいただいたあと、ぶらり歩いて四谷三丁目の羅無櫓。店の前のベンチには将棋セットがおいてある。出前してもらったお湯割り片手に将棋というのもいいかも。

●七草を全部言えますか?

7日は七草である。七草粥(春の七種を刻んで入れた粥)を作って、万病を除くおまじないとして食べる。セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロこれぞななくさ、と覚えましたね。
ナズナは別名「ぺんぺん草」、スズナは蕪、スズシロは大根。
さて、この日は爪切りの日でもあります。新年になって初めて爪を切る日。七草を浸した水に爪をつけ、柔くして切ると、その年は風邪をひかないと言われています。ほんとかね?爪に火をともす暮らしを続けていると爪を切るのももったいなくて…なことはないか。

●裸火を燃やせる場所がなかなかない。

8日は、左義長,どんと焼き,どんどん焼き。正月に飾った正月飾りや書き初め等を燃やす。10日や15日に行う地方もある。書初めの紙を燃やして炎が高く上がると書の手もあがるとは、書初めの段に書いた。焚き火を見ながらの酒はいい。青竹に酒を詰めて焚き火で暖めるのもいい。竹の落ち葉を焚くならさらに風情。
そういえば、前に焚き火をしたのはいつだっただろう?「古酒櫻井23号タンク」をかっぽ酒にしてみる。まろやかな味わいに若い青さが加わる。

●天才とよべるのは、ドン・リー・ジュンとこの人

1935年の1/8、エルヴィス・プレスリーが誕生。毎年ファンによるエルビス生誕際が九段会館で行われている。この人の人気もほんとうに不滅である。なくなって27年、毎年何枚もあたらしいアルバムが発売される不思議。

●中毒しそうなサブウエイ

1863年の1/10、ロンドンに世界初の地下鉄が開通した。蒸気機関車の地下鉄で、車内の照明はガス灯だった。映画「スチームボーイ」のシーンを思い出すような、なんとも懐かしい風情を感じるが、乗客は咽返っていたのだはないだろうか。トンネルの中の蒸気機関車というのは知っている人だけがわかる世界だ。

●刃物で切ってはいけません。

正月11日は鏡開き。鏡餅を雑煮や汁粉にして食べ、一家の円満を。
刃物で切るのは切腹を連想させるため、手や木鎚で割ったり、砕く。
切るという言葉をさけて、「開く」という縁起の良い言葉を使うのである。近世以前は20日だったが、徳川家光の死亡により慶安5年(1652)から11日に変わった。
商家では、新年初めて蔵を開き、商売繁盛を祈る行事をこの日に行う。縁起のいい「夢鏡」で一杯といきましょうか。

●火の島大爆発。大正の大噴火である。

大正14年、正月気分の抜けない12日、年鹿児島県の桜島で、史上最大の大噴火が始まった。紅蓮の炎を吹き上げ、火山弾、礫を噴出し、大量の溶岩が流れ出した。35人の死者を出し、流出した熔岩によって大隅半島と地続きになったのである。
いま、溶岩原は松の自生で崩壊しつつありあの偉観も色あせてきた。鹿児島の景観資源としても大事にしたいのだがそんな声は上がっていないのだろうか。
鹿児島の芋焼酎では基本OSのひとつである「桜島」をいただきながら、長渕の曲をききつつ故郷の空を思う。

●新生日本の出航につながってゆく。

万延元年正月13日、江戸幕府の軍艦「咸臨丸」が、勝海舟、福沢諭吉、中浜万次郎らの遣米使節を乗せ、品川沖を出発しアメリカに向かった。サンフランシスコに到着したのは2/26。日本人初の正式な太平洋横断航海であった。勝が帆柱に体を縛り付けて頑張っている情景を描いた絵をガキのこと見た覚えがある。
詳しい説明は忘れたが、船酔いと戦っていたのではなかったか。これから40年の後、大ロシア帝国のバルチック艦隊を全滅させる海軍国へと日本は育ってゆく。大東亜戦争で敗北しいまは世界一の腰抜け国家になってしまったが、ご先祖さまたちが日清日露を戦い抜いたことが日本とアジアを救ったことはいまや誰しも否定できない世界史となった。「山田の凱旋門」で酷寒零下の戦場で戦った先人たちを偲びつつ。

●生きていた!

昭和34年1/14、この日昭和基地に飛来したヘリコプターが2頭の生存を確認したのだった。昭和31年秋、11人の南極観測隊員と15頭の犬ぞり隊が南極へ。2年後「宗谷」は厚い氷にはばまれて到達できず。 11人はヘリコプターで救出するが、カラフト犬は救出できず、鎖につないだまま氷原に置き去ったのだった。発見後ジロは南極で死亡したが、タロは5年後に日本に生還、北海道で余生を送った。いま、上野の科学博物館にジロの剥製がりりしくその姿を伝えている。

●バカ成人たちに税金での祭りは不要。

1月の第二月曜日は成人の日である。(「民法」第3条に満二十歳ヲ以テ成年トスとあり、法律上、独立の社会人としての地位が与えられ、選挙権が与えられる。
この日には、各地で「成人式」が行われる。もともと成人を祝う儀礼は古くからあり、男子には元服・褌祝い、女子には裳着・結髪等があった。明治時代以降は男子には徴兵検査がこれにかわった。
会場でバカ騒ぎする連中にはもう一回徴兵検査をどうだろう?いや、懲役のほうがいいかも。

●15日の語呂合わせ二題。

全国いちご消費拡大協議会が制定した「いいイチゴの日」である。「いち1ご5」の語呂合せですね。それから、もうひとつ、「いい碁の日」、これは鹿児島市が制定した。「い1い1ご5」の語呂合せです。囲碁といえば、岩崎谷洞窟の西郷さん。最後のときを前に悠然囲碁を楽しんでいたと伝える。囲碁盤の上には宇宙があると思うがなにしろ覚えが悪くて親に呆れられた口なのであまりえらそうなことは言えない。

●いま週休二日、むかし年休二日。

1/16は薮入り。昔、商店に奉公している人や、嫁入りした娘が、休みをもらって親元に帰ることができた日である。この日と7月16日だけ実家に帰ることが許されていた。
週休二日のお休みよりも間違いなく嬉しい年休二日だろう。どう?と言われるといやだけれど。
働き者で強い国民と国だった日本および日本人。そのイメージの遺産でいまのへたれ日本人とその政府は助かっている部分もあるかもしれん。

地獄の釜の蓋があく。

初閻魔,閻魔賽日,十王詣である正月16日と7月16日の閻魔賽日(地獄の釜の蓋が開いて鬼も亡者も休むとされる日)に、寺院で十王図や地獄相変図を拝んだり、閻魔堂に参詣したりすることをさす。十王とは地獄にいて亡くなった人の罪を裁く10人の判官のことで、特に閻魔王のこと。この日は晴れの特異日でもある。山ノ神とお参りにいくのもいいかもしれない。

(1月下燗につづく)


ひるね蔵表紙へ  のんべえ歳時記表紙