12月
下燗
●浅草といえば観音様。寺の裏といえば・・・。

浅草観音羽子板市は師走の17〜19に開催される。関東でもっとも古いといわれる浅草観音、推古36年(西暦628年)に端を発するという歴史ある名刹である。下町の風情をたっぷり味わえる仲見世や六区。歩きつかれた黄昏どきには、ゴロゴロ会館近く、頑固オヤジと美人女将で知られる居酒屋「ぬる燗」でいっぱいやるのもいい。
酒は観音様のように優しげな香りが立ち上る「萬膳庵」かな。もちろんお湯割りで。

●土用の丑の日に「うなぎ」ってのもこの人の発明。

12/18は源内忌。安永8年(1779)のこの日、平賀源内が獄中で死去した。51歳。江戸時代のダヴィンチ、エジソンと呼びたいほどさまざまな発明・工夫をした。多才、才人というのはこういう人だろう。日本初の物産会となる薬品会を主催、源内焼き・火浣布・寒温計・エレキテル(摩擦起電器)を創作。風来山人の名で戯作者としても活躍。浄瑠璃本、また洋画なども手がけ、司馬江漢、太田南畝らに影響を与えた。浄瑠璃『神電知渡』、談義本『風流志道軒伝』のほか、『物類品隲』が有名。土用の丑の日をうなぎを食べる日としてプロモーションするなど、天性のマーケターであり、コピーライターであり、マルチタレントだった。当時はおそらく「奇人変人」扱いされたのだろうね。気宇の壮大に敬意を表して「亜士亜」の黒と黄を一杯ずつ。

●栄枯盛衰、白木屋と越後屋

江戸橋の先にあるのが「日本橋」で左岸は魚河岸だった。その先の「一石橋」をくぐるともう御堀。江戸の町には掘割がめぐらされ小船が行き交い岸は緑に揺れていた。
こういう景色は昭和のかなり後まで残っていた。役人たちが掘割を暗渠となし、その上に見苦しい高速高架をこしらえるまでは。
明治37年の12月20日、日本橋の三井呉服店が三越に改称して日本で初めてのデパート形式での営業を開始したころも、江戸の風情をよく残す町並みだったのだろう。約150年前、安政三年の江戸の地図には「越後屋」の名が見える。現金掛売りなしで富を築いた三井財閥の発祥の地。

●ループのてっぺんで止まったらどうするんだろう?

昭和27年12/20、日本にジェットコースターが初お目見えした。兵庫県宝塚温泉(現・宝塚ファミリーランド)である。当時は「ウェーブコースター」と呼ばれた。現在の名称が登場するのは昭和30年、後楽園遊園地のものかららしい。いま、絶叫マシンブームとやらでテレビの画面でみるのもおぞましい仕掛けが登場しているが、あれが好きだという人の気が知れない。乗せられるテレビ局の新人アナウンサーは仕事だからしかたないだろうが。あれにのって一杯やるとすれば、絶叫をあげて剣を奮う絵柄のラベル、「薬丸野太刀自顕流」かなあ。これは、当流の隼人道場が国分酒造さんで造ったPB。さつま国分です。

●陸のシーラカンスといえば。

シーラカンス学術調査がはじめて行われたのは昭和27年12/20だった。アフリカ・マダガスカル島沖で捕獲された個体である。7500万年前に絶滅したとされていたが、昭和13年(1938)南アフリカで捕獲されて生存は確認されていた。上野の博物館にも完全な標本があるけれど、まことに堂々たる姿をしている。隣国だけでなくわが国の廟堂にある連中のアタマをシーラカンス的と評しては失礼というものだ。残りすくない「万夜の夢」をチビリとやりながら古代に夢を馳せる。

●専門誌があるとは知らなかった。

12/21はクロスワードの日である。大正2年『ニューヨーク・ワールド』紙が日曜版にクロスワードパズルを掲載したのを記念して制定。1924にそれらをまとめて単行本としたものがベストセラーとなった。これが世界中にクロスワードパズルが広まるきっかけで、日本にも根強いファンがいる。8/30の日記にも書いたけれどオデッセウス出版の佐々木女史から頂いた『クロスワードstage 12号』を見て驚いた。全頁クロスワードだらけ(当たり前)。鉛筆を舐め杯をなめ、クイズを解いてゆくのも楽しいかもしれない。

本家本元にないのはなぜ?

12/22は労働組合法が制定された記念日である。昭和20年「労働組合法」が公布された。「労働組合法」は、労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権等の保障について定めた法律で、「労働基準法」「労働関係調整法」とともに「労働3法」と呼ばれる。おなじく22日はルーマニア革命記念日。平成元年(1989)のこの日、チャウシェスクの独裁政権が崩壊した。軍部の離反が引き金となったのだが、その処刑画像をみた世界中の(といってももう数は少ないですがね)独裁者たちがちびったらしい。お隣の国では最高指揮官が軍隊を視察するときには兵隊たちの銃から撃針を抜き取らせるという。労働者の天下なのはこっちがわで、けっしてあっち側ではないとまだ気がつかないこちらの人々もいる。

●天長節

十二月二十三日は天皇誕生日。昭和8年午前6時39分今上天皇がご誕生(宮内庁発表)。国の上から下までを覆う暗いニュースが多い中、たとえば新潟の被災地をご訪問された両陛下のお言葉や温顔で被災者を慰めておられるご様子をみると、この国にある幸せを感じるのである。政経乱れに乱れ、内政は紊乱し、外交また無能を呈している情けない国であってもなおそう感じるのは、この国を高きところから包む大御心を思えばである。生まれる国を選ぶことはできないが、逃げだす自由すら圧殺する北の国の人々を思うと哀れである。

●くるしみます(古い)

12/24はクリスマスイブ。若いのもおとっつあんもおばちゃんたちも、俄かバテレンになる日である。ケーキが飛ぶように売れて、次の日は捨てられる。変な夜である。銀座にはキリスト様とは何の関係もないおやじたちがキンキラ婆ァの店で「メリークリスマス」とか叫んで飲む。なんとも理解にクルシミマス。…おやじでした。こじつけて飲むとすれば、やっぱり「神座」…ムリがあるなあ。

●昭和が始まった日

1926年の12/25は昭和元年として改元された日。大正天皇が崩御、皇太子であった裕仁親王が践祚された。この日から長い怒涛の昭和史が始まった。そして昭和64年1月7日午前6時33分,吹上御所において崩御(御歳87)、昭和天皇と追号された。この年平成に改元。

●法律で決まっている。

12/28は官庁御用納めである。明治6年から、官公庁は12月29日から1月3日までを休暇とすることが法律で定められているとか。しらなかった。ことしは29日は水曜日、3日は月曜日である。4日の火曜日が御用始めということになる。ふつうですね。一般企業では普通最終日が29日というのは公務員と同じだが、仕事始めは1/5あたりが多い(かもしれない)。まあ、「挨拶周り」や「賀詞交換会」やらで二日からいそがしく駆け回るかたもいらっしゃるでしょうね。ご苦労様です。
正月休みのいいところは朝酒昼酒飲み放題というところ…でしょう。それでも仕事はじめ近くなると仕事場に行きたくてたまらなくなる方も…ここにはいないか。


●ヤソ教で盛り上がり仏教で押し詰まり神道で始まる。東西古今の文化の潮渦巻く日本。

大晦日である。1年の終りの日。除夜の鐘は108回撞かれる。眼・耳・鼻・舌・身・意の六根のそれぞれに苦楽・不苦・不楽があって18類、この18類それぞれに浄・染があって36類、この36類を前世・今世・来世の三世に配当して108となり、これは人間の煩悩の数を表すとされている。また、月の数12、二十四節気の数24、七十二候の数72を足した数が108となり、1年間を表しているとの説もある。
視聴率を落とし続けている紅白歌合戦、この番組は昭和26年に、ラジオの正月番組として登場。昭和28年からテレビの本放送が始まるに際してテレビ番組化が企画されたのだったが、正月はどこの劇場・ホールも一杯。そこで劇場の空いている年末に期日を移動。第4回昭和28年末から大晦日に放送されるようになった。
大晦日となれば、年越しそば。年越し蕎麦を食べる習慣は江戸時代中期から始った。元々月末に蕎麦を食べる習慣があり、大晦日のみにその習慣が残った。金箔職人が飛び散った金箔を集めるのに蕎麦粉を使ったことから、年越し蕎麦を残すと翌年金運に恵まれないといわれます。
大晦日、家族そろって歌番組を見てそばを食べ、除夜の鐘を聴く。もちろんお湯割り焼酎はずっと飲み続ける。よかもんじゃっとなあ。みなさま、よか年をお迎えください。この一年の出会いに感謝しつつ、どれもう一杯。

(12月おわり)


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