焼酎寸言

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兼八 10年貯蔵 (終売)
 
四ッ谷酒造  大分県宇佐市大字長洲4130        report 2011/1/22 
四ッ谷酒造さんのサイトに、この「兼八10年貯蔵」のニセモノがネットオークションに出ている疑い有り、ご注意をと書いてあった。あいかわらず儲かれば何をしてもいいというバカは絶えないものだ。この寸言を書くまいかと迷ったけれど、飲んだ感想と記録だからと割り切って書くことにします。

昭和50年代半ば頃にチューハイや飲みやすい麦焼酎を主体にした、いわゆる第二次焼酎ブームといわれる時期が
あった。人の嗜好は変わってゆくし、大メーカーのマーケティングで創出されることもある。しかし四ッ谷酒造は造り手さんたちが信じる「普遍的な旨い焼酎」造りにこだわる蔵だ。

(10年ほど前に田染荘-たしぶのしょう-さんから購入)

この酒は四ッ谷酒造四代目の芳文氏が造り貯蔵していた兼八古酒。ラベルにある代表名が三代目兼彦氏の令夫人であるシゲ子さんになっているから、約10年前に蔵出ししたものだろう。
原酒で10年、瓶でさらに10年という時間のままに、至極のまろやかさというべき優雅をまとっているが、確実にいまある「兼八」の上流にある酒だと思う。兼八のあの香ばしさの極みといえる香味は、ここから始まったのかもと誤解を恐れずに言いたくなる。

小生が初めて「兼八」と出会ったのは赤坂にある居酒屋「まるしげ夢葉家」だった。まだ開店してまもない頃だったと思う(まるしげさんは、今年が12年目)。店長の小久保さんがニコニコしながら、「これ、麦ですが飲んでみますか」と瓶を掲げて勧めてくれたのだった。
いつも八幡や寿を飲んでいた小生の味の好みに、小久保さんがすすめてくれた「兼八」はどんぴしゃりとハマった。それ以来、まるしげさんに伺うと一杯頂くようになった。麦焼酎の美味しさを教えてくれた酒がみっつある。岩倉さんの「三段仕込み」、谷口さんの「御神火」、そしてこの「兼八」だ。

■「普遍」の旨さは「不断」のこだわりから。

ゆるがない、ということが大事なのだなあと、この酒や、他にも真面目にコツコツと造り続ける酒に出会うとそう思う。時代に耐えたもの、時間に錬られて継続してきたものはそれが酒であれ何であれたたずまいが確固としている。
一過性のものにはありえない強さと爽やかさと凛々しさを持っている。この「兼八」はそういう酒だ。
はだか麦を麹にもそして掛ける原料としても使用する。その麦の「一粒一粒」を丁寧に蒸し麹とし酒母を育て、原料麦を掛けてじっくりと発酵させやがて蒸留する。その蒸留は自家製の常圧蒸留機。垂れた原酒も必要以上の濾過を行わない。従って原料本来の味わいがストレートにそして深い旨味を以てノンベエに浸透してゆく。

四代目の技を五代目で専務の岳昭氏が確かに受け継ぎ、そして次代に繋げる。
「家業」としての酒造りには「人」の香りが充満している。四ッ谷さんが造るから「兼八」が生まれるのだと思う。

「兼八 10年貯蔵」、香ばしさ、まろやかさ、よい甘さを響かせるそして深い旨味。美酒の極みである。

(は、25度の一升瓶ラベル)

 
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(c)hiken@2011.1.19