手控え273話(13.9.9)より
ダサい酒、おしゃれな酒(通訳つき)
「まっこち、ないごっけ〜(ったく、どないなっとんのや!)」
薩摩の友人が怒りのメールを寄こした。久しぶりの同窓会に出席したら、皆が飲むのはビール、清酒、ワイン、サワー、ウイスキー・・・。な〜んと、出席者のなかで焼酎を飲んでいるのは、彼以外には片手で足りる人数しかいなかったという。「どこちおもちょっと?かごんまぢゃっど(われ〜、ここは薩摩ちゃうんか?)」憤懣やるかたなく窓の外に桜島を眺めてそう呟いた彼はまだかろうじて30代。この世代でこうだから、もっと若い層はおしてしるべし。

「ないごてそつを飲まんとね(どして、焼酎さ飲まねえだ?)」と彼は考えた。
そして周りに聞いてみた。
「ひったまげたがよ〜(驚愕し申した!)」
若い連中の答えは一言でいえば、焼酎はダサい、ということに集約されたらしい。
「いも焼酎はオヤジの飲む酒じゃん」
「ヤングはカッコよく洋酒じゃん、やっぱ」

・・・・・・う〜む。メールの向こうから若き友人の怒りが伝わってくるぞ。彼のごときいも焼酎愛飲派は、薩摩の若い世代においてはすでに天然記念物的な存在のようである。
この世紀末的な現象の遠因を大東亜戦争の敗戦と戦後の唯物経済価値社会や日教組やアホな文部行政に求めるのは血圧が上がるので止めておく。

「いも焼酎なんか飲んでいたら、都会に出ていったとき笑われるじゃん、やっぱ」
このアホ!
ダセ〜のは、お主のほうぢゃ。よいか、いま江戸や京でもっともお洒落なのは「焼酎」なのぢゃ。
う〜む、なぜか時代っぽくなってきたが、ま、いいか。
あ、断っておくが、ここでいう「焼酎」とはもちろん乙類、本格焼酎のこと。ゆめゆめレモンを絞りこんだり、梅干しをぐちゅぐちゅに潰して溶かしてのむ、あの「ピュア」なエタノールのことではない。ついでに言えば、甲類メーカーが弱小な薩摩の蔵に金を出し、自分らの浅薄なマーケティング戦略によって企画し、薩摩の蔵に造らせそこの看板で世にだすような、酒なんぞも含めたくはないぞ。
い、いかん。血圧が・・・・・・
閑話休題。
鹿児島のわけし(若い衆)には、焼酎をダサいと思うこと自体がダサいのだとハッキリ言っておきたい。「飲み放題コース」のカラメルで着色したウイスキーなどをすすっている姿の方が、ず〜っとダサい。
さて突然だが、いま都会でどんな現象が起きているのであろうか。
たとえば深夜成田エアポートに帰着した国際線スッチーたちはタクシーを走らせて都心へと急ぐ。どこへ急ぐのか?六本木?赤坂?い〜や、違う。
彼女たちが向かうのは武蔵小山の鹿児島焼酎の店だ。彼女らが飲むのは例えば「アサヒ」、「さつま」という地の焼酎だ。「もろ伊蔵」がどうしたと騒ぐのは、例外無く半可通のオヤジたち。これは、ダサい。
たとえば日比谷、銀座のOLたちがオフィスの帰りにたむろするのはどこか?言うまでもないが、日比谷のかごしま遊楽館の二階や四谷の焼酎のある店なのだ。
たとえば青山の女子大学生がコンパするのはどこか?そう、外苑前や渋谷や原宿の焼酎バー。

ことほどさように、いま若い女性達には「本格焼酎」が人気なのだ。
彼女らは「薩摩焼酎奄美黒糖焼酎」や「dancyu焼酎特集」を、楽斗や純チャンの写真集のように小脇に抱え、酷いのになるとあのマニアック&マイナーな「焼酎楽園」までバッグに入れて夜な夜な焼酎のある店を探索してまわるのである。ご禁制の「PLAYBOY」を所持している娘もいるらしい。嫁入り前というに、焼酎を特集しているだけでこのありさま。(因みに、同誌の記事とりわけインタビュー記事は全く信用できぬ内容である)

ナンパのセリフも変わってきたらしい。「ワインの美味しい店にいかない?」などとホザいたら、まず一発でふられる。ここは、いも焼酎を飲みにいこう、でなくてはならぬ。

従って、いささか焼酎にこだわっている店は常に満杯であり、いまのところオヤジ達が残業帰りにフラッと立ち寄れる状況ではないのである。これはこれで困ったことだが・・・・・・。
支離滅裂のまま、本稿を終わる。なんだか当サイトの性格そのままだなあ・・・・・・

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