本格焼酎寸言「流鶯」より
自然と共にあるもの

この酒と本稿は無関係です。
平成14年6月のある夜、武蔵藤沢の焼酎居酒屋「からいもの里」さんで、萬膳を造る蔵元さんと話した。
「木桶をつくる人がおいやってですね〜」と万膳さんが静かに語ってくれた。山形県のさる酒蔵のために桶を作る職人さんがおられ、この方に会って「蒸留機」の木桶を作って貰うことになったのだという。鹿児島には木桶を作る職人さんがもう一人しかおられず、しかも体調がすぐれないため今後の製作が危ぶまれると聞いていた。
木桶蒸留機は6〜7年ごとに作り替えなくてはならず、万膳さんが木桶職人を探していることを聞いていたので、万膳さんの木桶職人探しの旅はやっと終わったのか、と思ったら、その方もすでにご高齢で後継者を持たないのだそうな。

それにしても、もの作りの伝統がここまで消滅していることに唖然とする。
経済大国だ、バブルだ、そしてその反動だと、我が国はすでに砂上にあってなお砂上の楼閣を積み重ねることばかりで、この長大な瑞穂の国のあらゆる土地、暮らしとともにあり先人が作り伝えてきた豊かな文化・伝統を省みないこと、まったき長きにわたりすぎたと思う。

この国は、公共投資の名目で中央からの財政移転(補助)によって、恵まれた自然をブチ壊すことにだけ血道をあげてきた。塩害防止、水害防止、農地開拓・・・虚ろに響く政治屋と役人たちの本音が、中央や地方を問わず、建築、土建業者からの収賄・献金・集票、天下り先確保のためのみにあることは今は誰でも知っている。
自然を壊し伝統を破壊し人の心を喪失させることは一見別々のものにみえて実は同じ事なのだ。もういい加減にしなくては我々が祖先から受け継いだ祖国は、取り返しのつかなくなるところまで来ていると思う。

「焼酎」造りは、言うまでもなく自然とともにある産業だ。自然が侵蝕されれば酒もできない。太陽と共にあり、水と共にある。山が壊れれば川が死に、川が死ねば海もまた死ぬ。大地の水と共にある生き物が滅びれば土もまた沈黙する。
「ひるね蔵掲示板」に、長野県出身の方が「下諏訪ダム」建設にからむ長野県知事と議会の対立のことを書き込まれていた(14.6.28)。またぞろ利権屋どもの蠢動。議会を解散し、選挙で信を問うことになるだろう。
地元利権主義者たちは不要なダムを作ることで、何を喪うことになるかをよく考えて欲しいと思う。

閑話休題。

リカーハウス長崎さんに教えて貰ったのだが、信州小布施に枡一市村酒造場という蔵があり、そこのセーラ・マリ・カミングスさんというアメリカ人の女性が呼びかけて、「桶仕込保存会」という会がたちあがったのだそうな。
味噌・酒・醤油という、桶を使う蔵に呼びかけ、昔ながらの桶で発酵させよう、また伝統の桶作りを伝承しようというものだという。
日本人が忘れつつある伝統への尊重心を、アメリカ女性に教えて貰ったようではある。

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