本格焼酎ひとりごと
「崩壊して始まる価値」

昼休み、「日本酒応援」に命を燃やすPRディレクターS氏がフラッと小生のデスクにやってきてつぶやいた。
嬉しそうに言ったのは「焼酎、伸びが終わったねぇ」というひとこと。

熊本出身で芋焼酎のファンながら、米焼酎の「常圧復権」と「日本酒復興」に熱を燃やす快男児である。
もう昼というのに、芋焼酎の残滓ぷんぷんであった。「快」ではなく「怪」男児といいたくなる。
たしかに彼が引用したデータにも、その気配はちゃんと描き出されている。
ただしく、乙類伸長鈍化に「ブーム」終焉を見るのである。
ブームが「ブーム」である限りかならず終わる。そう酒亭の「ひとりごと」でも書いてきた。
最近発表の統計数字を見ても「乙類焼酎」の伸びは鈍化傾向にある。
勢いは沈静し泡はいずれ弾け飛ぶだろう。ブームの終わりである。

ムック『芋焼酎はこれで決まり』(洋泉社/1000円)のまえがきで、編集子(おそらくは担当の依田君)がこう書いた。

「芋焼酎がブームから定着へと確実に移行、浸透しつつある現在、我々は芋焼酎を再発見しつつあるのだ」

まさしくバブルのおさまってきた向こうにその地平が見えてきた。

さて、製造から流通まで、そして生産農家にいたるまでこの「ブーム」で潤い弾んでいた人々はいまどうか。一部稀少銘柄に引きずられた「ブーム」とは無縁の高いこころざしで「自分の酒づくりや扱い、そして提供」に当たっていた人々にとって「ブームの終焉」は歓迎するべきもの以外ではないだろう。
大都市を中心に、全国を彷徨った乙類焼酎はふたたび「地酒」へと帰ってくるのである。だが、いちど全国区になったプロダクトはその履歴を消すことは出来ない。
そしてこれはかならずしも忌むところではない。

全国に乙類焼酎ファンが増えたこと、理解が進んだこと、イメージそして消費のレベルが昔に較べてまちがいなく向上して残ったこと。これらは南九州の地酒としての乙類が努力で獲得したポジショニングであり歓迎すべきことである。

いっぽう、ブームに踊る足の動きが止まることを知らない(止まることを恐怖する)存在もあるにちがいない。鹿児島・宮崎の「芋焼酎」はその原料を地元に求めるトレーサビリティが主流になっている。麹用の米や造りの方法にもこだわった上質の製品の企画もある。地酒が地力をつけている。だが、先を見る目の曇っていない蔵がけっしてないとは言えないのではないか。また、このブームにのって芋焼酎を造り始めた全国「メーカー」はどうか。

中国のある商社は「年間2万トンの冷凍芋が日本の焼酎原料として好評をいただいている」と発表している。ことしの造りがどうなるか、危うさを感じるのである。
先日、ダイヤメの徒然に書いたこの中国の商社のサイトのことを思って暗然となったのだった。

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