仕事場の裏は劇場
平成15年8月31日


新橋駅から昭和通りを浜離宮方向に3分、右手に古色蒼然たる石造りの建物が現れる。ユニバーサルデザインを意識したスロープや妙に新しい素材感の外壁を見て、これが復刻された旧新橋駅の駅舎であることを知る。数日前日本テレビが引っ越してきて連日賑やかなパフォーマンスで汐留エリアの空気を震わせているので影が薄くなったけれど、このさらに奥に劇団四季の劇場がある。正確に言うと「電通四季劇場 海」である。
(左)シアターはこっちです
この「電通四季劇場 海」、1200人以上を収容する大劇場だが、広告代理店電通の本社ビルの一部であることは名称の最前に鎮座する「電通」の二字でおわかりになるだろう。

電通本社ビル「カレッタ汐留」の低層階には様々なテナントが入居している。
焼酎の圧倒的な品揃えで話題になった「焼酎オーソリティー」もそのひとつ。芋、米、麦から泡盛にいたるまでのあらゆる焼酎が揃っている。だが、いかにもこのビルのテナントらしく焼酎を真摯に扱う店に共通する緩やかで暖かな空気感や店員と客の自然な会話がない。

電通には友人も先輩もいる。しかも心から尊敬しあるいは畏怖する(^^;)存在もいまなお在籍しておられる。
いたるところに超のつく優秀な社員がごろごろいる(ホントにいる)。
それでも敢えて言うと企業の宣伝担当、局の営業・編成などに、「電通」を嫌う人間がおびただしくいるのは事実だ。現場に近い担当者になればなるほどその数は増える。
逆に商工会議所に席を持ったばかりの二代目社長などには電通贔屓が多いという。

大劇場を抱した超高層ビルはたとえば外務省などよりよほど権力的な匂いを発散している。
シースルーのエレベーターがライトを点滅させながら高速でアップダウンしている風景を見て、
「あの一台くらいはウチの(宣伝費の利益で作った)ものかもしれんなあ」
と某物流会社の社員が言った。
「うちは(広告を)電通に扱わしている」
と、社長が見栄を張りたいためだけに電通をメインの広告会社に指定している中堅会社だ。
「電通の正社員は現場になんか来やしないよ。いつもプロダクションに丸投げだ。」
プロモーションの現場をあずかっている友人の嘆きは彼の社長には届かない。

かくのごとき存在の増殖。
キーワードは「権力」というところか。そして「権威」から「権柄」へと変質するにしたがってまことに始末におえなくなる。夜郎自大となる。どこか霞ヶ関あたりの一等官庁にも似ている。
官が民を忘れるのは困ったものだが、民が民であることを忘れてはさらに始末におえない。
大会社だけでなく、ちいさな会社でも、個人でも、レストランでも、焼酎でも、インターネットサイトであっても、家族、友人、同僚、上司など誰を相手にしていても、すべての存在が心しなくてはならないことを教えているような気がする。

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