本格焼酎ひとりごと

「それは、人。」


「(この店で)提供されるものにはとびきりの値打ちがあるが、やはりお客はとよさん(店主氏)に会いに行くのだ。飲食店ことに居酒屋は、つまるところ立地や店舗の内装などより人。人で決まる。厳しい時代に強い店ほど、人の力がものをいう」と、『繁盛できる』(飲食文化研究所)の編集後記に編集発行人の立山雅夫氏が書いている。


立山さんは大阪京橋の立ち飲み屋台「居酒屋とよ」に、ある飲食業界のコンサル氏を連れて行こうと誘ったことがあったそうな。当のコンサル氏、「あれは商売じゃない」と吐いて捨て、去って行ったという。

そう、繁盛していようがいまいが、確かにコンサル氏にとっての商売じゃない、商売にならない。そういう意味では当たっている。

では、何か?と立山さんは思った。そして合点がいった。あの屋台はコンサルのいう「商売」ではなく、店主とよさんの「生き方」なのだと。

昔の言葉でいうならば、「士道」という潔さが近いかもしれない。そして個人経営の店を応援するというコンセプトで優しく厳しく様々な店を見て、そして真心のこもる丁寧な雑誌作りを長く続けている立山さんもまた士道の人である。

きのう、この雑誌の最新号が届いた。もう第25号を迎えた。渡辺伸雄さんの写真は単なるシズルだけではなく造り手の心を活写するその絵には料理人が唸る。そして、絞り込みかつ豊かに構成されたコンテンツもすばらしい。でも小生が真っ先に読むのはいつも編集後記。柴田書店『居酒屋』編集長時代から一貫する立山さんの真摯な姿勢は変わらない。

今年2月、鹿児島県本格焼酎鑑評会で最高賞を得た「さつま黒若潮」は志布志の若潮酒造。この蔵には知的障害者たちが造る芋焼酎「夢しずく」がある。

この蔵のあり方と人を、立山さんは自ら取材している。もう三回目になった。立山さんは、ここで仕込みにあたるひとりひとりを、短いが愛情のこもった文章で読み手に紹介してくれる。

こういう雑誌は出版社の企画で産まれはしない。真似をしようとしてもできもしない。このパブリッシングは「出版企画」などではなく、まさしく立山さんという人間そのものだからだ。(平成21年4月28日)

「酒亭」入り口   「ひるね蔵」ホーム    ひとりごと表紙