平成21年(2009)

本坊酒造郷中蔵
12月1日(火) 宝納酒店主宰「焼酎プロジェクトX」Be Kagoshima(美鹿児島)蒸留。
宝納酒店 鹿児島県鹿児島市堀江町16-7 TEL 099-225-4510 FAX 099-225-4520
本坊酒造 鹿児島県鹿児島市南栄3丁目27 郷中蔵・ガレリア 問合せTEL 099-822-7011

鹿児島の「宝納酒店」は、南九州の産地のみならず焼酎文化全体に関わるひとにとって強いそして信頼できる存在である。
店主の若松さんは穏やかでにこやかな表情を決して崩さない紳士だけれど、その笑顔の中には薩摩の武士が厳然と潜んでいると小生は勝手に思っている。
様々な取り組みを行っておられるのだが、その中に「焼酎プロジェクトX」なるものがある。

植物性堆肥を使って、神懸かり的な米を作る射手園(いてぞの)さんの農園で、このプロジェクトに参加する一般の人々。植え付けから草取り、収穫。そうやってできたヒノヒカリで作る麹は「ほかとは違う」と蔵人がいう。                  
写真:(左)宝納酒店(右)本坊酒造郷中蔵

造りを委ねているのは本坊酒造のこだわり手造り蔵「郷中蔵」。郷中は「ごじゅう」と読む。薩摩を薩摩足らしめた郷中教育のその字をあてている。機械化された工場ではできない手造りの技を杜氏から蔵人へ、またその次代へと継承する意味合いを含むのだろうと思う。

12/1の朝、この蔵で行われた、宝納酒会の酒「Be Kagoshima(美・鹿児島)〜黒麹」の蒸留に立ち会った。若松さんが、丁寧に説明してくださるので、小生にもこれまでとこれからここで行われる作業の詳細を理解することができる。

芋600本分。一升瓶にして300本。黒麹と白麹をあわせて合計約600本がここから産み出される。
蔵人がふたり、カメから蒸留機にもろみを送る準備をしている。
そこに本坊さんの作業服を着た社員さんとおぼしき男性。みっつのカメからそれぞれ500mlくらいのもろみをサンプル瓶にいれて持ち去った。生物工学研究所の方だった。これは分析に回して資料として記録するのだという。さすがに本坊酒造。
写真:(時計回りに左上から)黒麹仕込みの二次もろみ、蒸留機への搬送準備、蒸留機、アルコールメーター、蒸気を吹き出している冷却槽のパイプ、冷却槽の水中に蛇管が見える、蒸留機の上部蓋を開けて見たところ

先輩蔵人の石原さんが、まだ2年目という北山くんに的確な指示をだす。北山くんは言われずとも次の準備に移っている。阿吽の呼吸だ。郷中の字に恥じない。
二次仕込み開始から九日目、もろみを舐めさせていただく。落ち着いた甘酸っぱい味わいだ。一トン半の容量の小振りの蒸留機にもろみが音を立てて送り出される。蒸留機の上の小窓からみると、すっかり準備のできたもろみが静かに溶暗の中に鎮まっていた。

2昼夜の時間を要した麹は手麹室の中で七段九組合計63枚のモロフタで破精て出麹を迎える。スターターは、河内さんの黒麹NK菌。一次もろみは6日目に二次もろみのカメに移される。32〜33度あった温度は9日目には22〜23度まで落ち着き、発酵の音も静まったきょう、蒸留の日を迎えたのだった。このころのもろみの酒度数は、14.3度だった。ふつうは13.5〜13.8度というから、このもろみの勢いの強さがわかる。
午前九時ちょうど、蒸気の吹き込みが開始された。
写真:(時計回りに左上から)原酒を取るタンクに酒が迸る、アルコールメーターの中に温度計とアルコール浮標が見える、蒸留機、翌日蒸留する白麹仕込みのもろみをチェック、郷中蔵の内部全景。三石カメが並ぶ、蒸留を終えて廃液を出したあとの蒸留機の内部

9:30、蛇管から天井に向けてたっているパイプから出る蒸気が勢いを止めた。いよいよ蒸気が酒にかわり、冷却槽の外へと出る。初溜(はな垂れ)だ。アルコールメーターの浮標が跳ねる。

11:50、蒸留がすすみ、浮標は25度を示した。見かけの度数だ。温度計の数字を読んで数表で正確な数字に換算する。

12:15、見かけ度数19度、温度28度、実際のアルコール度数は15.3度と判断。

12:38末だれを切る。蒸留を終える。
温度28度、アルコール(の見かけ)度数14度、実際度数11.2度。
これで、アルコール度数約35度の原酒が出来た。

これから約半年、産まれたばかりの原酒は5月末のおひろめ会での披露を迎えるまで貯蔵庫で眠ることになる。

焼酎滓を排出した蒸留機の中を覗いた。
立ちこめる湯気の底に、卍型の蒸気噴出ノズルが見えた。このノズルから蒸気が激しく吹き出し、もろみを撹拌し、熱して蒸発させるのだ。役目を終えた蒸留機が汗をかいているような錯覚におちいる。

ガス香につつまれ、若松さん、下野さん(宝納酒店スタッフ)、お二人の蔵人、生物工学研究所の宿口所長、沖園主任さんたちと語った三時間半、すばらしい時間だった。
みなさまに感謝。美鹿児島に乾杯!
写真:(左から)丹念に記録をとる若松氏、本坊酒造の初代連続蒸留機、蔵人の背に輝く「薩摩郷中蔵」

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