焼酎寸言

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  一壷春  
....................古澤醸造 .okin  宮崎県日南市大堂津4-10-1       report 2008.2.3

すばらしい銘柄名である。
「一壺春(いっこしゅん)」というこの名はラベルに書かれた漢詩に由来するとは誰しも思うだろう。
 
何用巖棲隠姓名 
 一壺春酎可忘形 
 伯倫若有長生術 
 直到如今酔末醒

この作者は、酒の一壺があれば人生ずっと飲んで幸せだもんね、と脳天気なことを言っているのだが、我々焼酎飲んべえがうかつにそんなことを口走るとかみさんにどやされるのが落ちだ。
作者は西晋の劉伯倫というおっさん。筋金入りの飲んべえ詩人。飲み過ぎる旦那から酒壷を取り上げて割って諌めたという賢夫人を、騙してまでさらに飲んだというから半端ではない。
それでも、このおとっつあんが未だに尊崇されるのはいわゆる「竹林の七賢人」のお一人だからだろう。


宮崎の古澤さんがつくる芋焼酎熟成酒。

飲んべえ詩人といえば、わが国では大伴旅人がまずイメージに浮かぶ。
例の万葉集「酒を讃むる歌」の一連の傑作の作者である。
この大伴旅人に、劉伯倫の「酒徳頌」の影響が大きいらしいと言う研究者もいる(下欄参照)。

古澤さんの酒は、「船徳利」のコンセプトといい、いにしえの飲んべえたちの系譜を踏んでいるような気がして嬉しい。

■飲んでみた

ひとくちに言うと、のみやすい、とっつきやすい「芋焼酎」だ。
しかし、それだけではもちろんない。
香りは控えめにしかししっかりと広がり、すこし生で含むと微かな刺激がここちよい存在感を口中に押し広げてくれる。
喉ごしも透明感がある、と表現したくなるスムーズさ。
その透明な光の底に、春の芽吹きを静かに待つ蕾のような力の蓄えを感じるのである。
生(ストレート)で受けるやや端正な表情が、お湯割りにするとゆっくりと変化する。伸びやかで豊かなそして深い香味は、もう春の到来を酔眼に捉えたかのようである。まさしく、春の酎を封じた一個の壷、である。

(左)傑作「船徳利」。〜黒潮に ごろり枕の 船徳利〜

大伴の旅人「酒を讃むる歌」より。

験無きもの念わずは、一杯の濁れる酒を飲むべく有るらし
古への七の賢しき人どもも、欲せりし物は酒にし有るらし
中々に、人に非ずば酒壷に成りてしかも酒に染みなむ

ちなみに薩摩に伝わる古流「薬丸自顕流」の流祖も大伴氏に由来する。
薬丸氏の本家肝付氏の出自を辿ると、平安時代に薩摩に入った大伴姓伴(とも)氏なのである。現在でも薬丸自顕流の修行者たちに飲んべえが多いのは故無しとしない(~~;)。

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