焼酎寸言

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蔵の扉
 
太久保酒造  鹿児島県志布志市松山町尾野見1319-83        report 2011/2/4 
(右が白麹仕込み、左が黒麹仕込みのもの) 昨年10月に太久保酒造(HP)をおたずねしたとき、日記レポートにこう書いた。

「このシステムを通した焼酎とそうでないものの違いははっきりしています。これまでの焼酎の味が変わるのでは?」という問いに、蔵人は「そうです。このシステムはあたらしい酒に応用するつもりです」と答えてくれたのだった。

この「蔵の扉」はこの年の11月末から出荷されたあたらしい名の酒である。黒麹と白麹仕込みのふたとおりがある。
特筆すべきなのは「ジェム電子チャージシステム」が焼酎の製造工程全般にわたって導入されたということだ。食品業界、有機農業などに広く使われているシステムで、焼酎蔵でも水の浄化に使用している所はあるが、工程のすべてに導入したのは太久保酒造のこの酒が初めてとのことである。

焼酎は嗜好品だ。ノンベエの官能にうったえる到酔性飲料である。飲んで満足できる味わいか。
この「蔵の扉」、白麹仕込みのものも、黒麹のものも誠に美味い。まちがいなくノンベエを唸らせる酒だ。
その美味さを一言でいえば「至純」となるだろうか。「至醇」といったほうがいいかもしれない。

■麹の違いがはっきりと味わいに出ている。香味のバランスがよく極めて上質。

白麹仕込みのものをまず生(き)でいただく。開栓すると広がりを感じる柔らかな香りが上立つ。
甘いのだがその甘さを例えるならば「綺麗」なそして穏やかな甘さだ。穏やかだが決して弱くはない。ノド越しもスムーズに少々緩やかに感じる。そしてそのあとに長い余韻が響く。転寝で浅く長くよい夢を見ているようなとでもいいますか、構えず侮らず自然体で飲み続けたい人にとっては、つい、ビンゴ!といいたいほどの味わいを持つ酒。お湯割りではまろやかさ、ふくよかさがさらに広がる。優しさが深まってゆく。薩摩人なら、「なんちゅわならん(言いようのない)」良い味わいと言うだろうね。

黒麹のほうを試す。開栓する。香りはさほど開いてはこない。くちあたりはやや強い。
口の中に広げてゆく。厚みのある辛みが広がる。ノド越しはその独特の辛み(というかコクのある旨味)が存在感を示してくれる。深みの在る、それでいてノンベエの体に馴染み五感を浸潤するような躍動感を持っている。すっと切れる潔さもある。いわゆる「黒麹仕込み」の酒に時にみる「〜風の外連味」がない。育ちの良い体育会系とでもいいたい爽やかさがある。

自然体の素直な味わいの酒だ、といえば焼酎はもともとそんなものだよと言われるかもしれない。
元来酒に限らず、飲むもの食べるものは自然の恵みだ。人間がそれに手を添えて美味しさを工夫するというだけのこと。その素直さを忘れ、逆の方向に流れてゆく現代の社会にとっては、こういう造りにトライする人々の姿勢が何かを教えてくれるような気がした。

左(仕込みカメにシステムを作用させるテスト風景/2010.10.撮影)
このシステムの導入にあたった太久保酒造顧問の松本恭祐さんは、「これによって、原料からアクが抜け、ガス臭が少なくなり、発酵熟成にもよい環境となりました。角のとれた優しい芋焼酎に仕上がりました」と言う。多くある造りの工夫のひとつではあるが、国酒焼酎の将来への伝承を考えるという点では注目すべきではなかろうかと思う。

参考:株式会社 ジェムのホームページ
 
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