焼酎寸言

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さつま西の海
 
田崎酒造  鹿児島県いちき串木野大里696        report 2011/1/25 

リストでは今井一二さんの銘柄は「花の香」となっている。地元出身の第十六代横綱、初代 西ノ海嘉治郎に因むこの酒の名はどういう歴史を経てきたのだろうか。
鹿児島限定販売の芋焼酎である。鹿児島県の西、東シナ海を望む串木野にある蔵、田崎酒造が造る銘柄名。
実は、この銘柄名は昔から継承されている。
『薩摩焼酎の回顧』(昭和15年/鹿児島県酒造組合刊)の銘柄リストで見ると、日置郡入来の原口金次郎氏の銘柄となっている。現在も同地で造り続ける原口酒造だ(金次郎氏の名前に由来する銘柄がある)。
しかし、現在の原口酒造が造るのは「西海の薫」だ。
そして田崎酒造が継承する前に「西の海」をその銘柄としていたのは、川内の今井商店である。


(デザインは今井さんの頃とは随分違うスマートなものだ)


■飲み飽きしない酒。やや辛口、のち豊かな甘み。

「地焼酎」という言葉がぴったりの芋焼酎25度だ。
ストレートでいただくと豊かな芋の香りの中に、昔ながらの辛みが感じられる。軽やかで飲み口の優しい、マイルドな芋焼酎の対極にあるような酒。ここから来て、ここに帰ってゆくんだねとでも言いたくなるような味わいだ。元来、ダイヤメの酒はそうであったと思う。

地の酒が本物志向の時代性に合致して、全国にファンを増やし、一時のブーム的な(過渡的な)時代を超えて定着してゆくことの嬉しさ。そして産業自体の幅が広がり、ユーザーからみれば選択性の「拡大」に繋がった。その広がりと同時に、この西の海のような落ち着いた酒が飲み続けられる、あらたなファンを増やすという「深耕」も現実になっていった。有り難い事だと思う。

硬質といっていいストレートでの味わいイメージは、お湯割りでいただくと、これが「豹変」する。芋の甘さが立ち上がって、柔らかな表情が広がる。のどごしもスムーズで切れもほどよい。笑うような満足が余韻となって続く。一日の労働のあと、ゆたりと飲む焼酎。まさしくダレ(疲れ)をヤメる、よか焼酎だ。

「味噌舐めて 晩飲む焼酎に 毒はなし 煤け嬶に酌をさせつつ」
(味噌でも舐めながら、愛妻と飲む晩酌の焼酎は良いもんだね)
この酒の事を考えていたら、出水にあるあの有名な「味噌なめの碑」を思い出した。

 
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(c)hiken@2011.1.25