焼酎寸言

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  野井倉  
....................太久保酒造 .okin  鹿児島県志布志市松山町尾野見

シラス台地を水田に変える。そう決心した19歳の若者が目的を達したのは60年後だった。
有明町野井倉台地に上流から水を引く。水を引いてこの痩せた土地を豊かな水田にする。野井倉甚平衛の思いは大東亜戦争を挟んでさらに強くなり進駐軍の干渉にも負けなかった。そして、待ちに待った通水の日を迎えたのは、1949年(昭和24年)6月5日だった。13キロの水路を勢い良く流れる水は長い年月をこの事業に注ぎ込んだ人々とりわけ甚平衛さんの心の鼓動だった。

菅笠をかぶり小舟に乗ってトンネルからあらわれた甚平衛さん。
この酒は大隅の心の詰め合わせだ。
芋は大隅産のコガネセンガン。割水は志布志湧水「御前の水」。そして麹米は野井倉開田で育った米。造りは志布志の蔵、太久保酒造。そしてなんといっても、この酒を生み出すことで先人の故郷の農民たちに対する思いとそれを実現する情熱を今に伝えようとする人々の心。
こういった要素が、ただひとつの揺るぎなく一貫していると言えよう。酒は地のもの、受け継いできたもの。そしてさらに受け継ぐべき物語りをそこに込めて発信するメディアでありうるのかもしれない。

■飲んでみた

さすがに太久保さんだ、と思わせてくれる重厚な香りと味の整合。
まるで「食べて」いるような味わいの濃さ。黒麹での仕込みとあるが香ばしさは一種独特のインパクトを持っている。
容易には馴染まない、安易には懐かない。筋の1本通った酒だ。

ストレートでいただいた。
流行りの「滑らか」とか「優しい」とか「スムーズ」とかいうワーディングを笑い飛ばすような気骨のあるインプレッション。
口当たりも一筋縄ではいかないが、喉越しもまた同じである。
本当に25度かね?とついラベルを見てしまう濃醇は飲んべえの満足の笑みを伴う。足腰のしっかりした、頑健な、しぶとく粘り強い男を酒にするとこうなるのかもと思わせる。正しく「農士」の酒である。
お湯割りでも印象は変わらない。
香味が強靱になりこそすれ、「優しい香り」がなどとは表現できない個性。う〜む、よか酒です。

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