「酒と火の出会い」資料準備室

ROOM / 12345

「酒文フォーラム2002」に行ってきた
TaKaRa酒生活文化研究所主催 10月1日
六本木 オリベ・ホール



「他(ほか)んセンセイたちは、ずるっ(みんな)東大ぢゃっちよ〜。偉かしばっかいぢゃよ。何(ない)をはなしすればよかとね〜?」(桑鶴さん)

「ないがですか〜。あん人たちで、焼酎を実際に造れる人は、だいも(誰も)おらせんですよ。桑鶴さんだけぢゃっですよ」(秘剣)

始まる前のたちばなし・・・(^^;)

「お酒が人にできること」というテーマのとおり、同研究所は、酒と食、生活文化などについて幅広く活動している。もちろん宝酒造の組織だから「焼酎」のとらえ方は、結果として他社と一緒でも、視点の置き方と問題の見方、表現方法などにカラーがでるのは当然だ。しかし、毎回ユニークなテーマを掲げて「酒と人」を微細に追求して発表し続けている文化的貢献には衷心から敬意を表する。

今回は、テーマに「蒸留酒」のルーツと伝搬、そしてその楽しみ方を掲げ、甲類焼酎と本格焼酎双方にわたっての研究発表とトークセッションが展示された会だった。

「蒸留酒の誕生から世界への広がりの歴史をたどることで、蒸留酒には人間のどのような思いがこめられていたのか。そしてそのものの味わいを楽しむこととミックスベースとして楽しむことという2つの蒸留酒の飲酒スタイルが、これから21世紀にどのように楽しまれていくかを探っていきます」

・・・・・・というコンセプトには、企業としてのポジションも見えるし、企業を超えた普遍のテーマへの取り組みも伺われる。

プログラムは短い休息をはさんで、3部で構成された。
司会は同研究所の杉本奈於子氏。
第一部は辻宏主幹研究員による研究成果発表。第二部はトークセッションの1として、玉村豊男氏と福西英三氏が語る「ミックスドリンクとしての楽しみ」そして第三部はわれらが桑鶴さんも登壇してのトーク、「蒸留酒のアイデンティティと未来」だった。

この第三部では、壇上に薩摩芋(黄金千貫)も並べられ、玉村氏のMCで、話題は芋焼酎の造りや、鹿児島の風土、飲酒習慣などにも及んだ。
同研究所が3年半ほど前に出版した酒文選書「焼酎〜東回り西回り」の300ページに及ばんとする中に、おそらく(カッコ)付きで数回しか登場しない「本格焼酎」というワードが、この日のトークセッションでは溢れんばかりに湧き出していた。
なんと手元のレジュメにも、本格(乙類)焼酎という書き方がされているではないか。

最初ちょっと緊張気味だった桑鶴さんの人間味はすぐに遺憾なく発揮されて、おそらく会場の観客はみんな桑鶴さんのファンになったのではと思う。鹿児島の焼酎屋さんのよかところは、関東の焼酎ファンが口を揃えて言うように、やっぱりこの明るさ、ものにこだわらない奔放さにあるのだろう。

全体の構成を見ると、焼酎の歴史を民俗学的に、あるいは文化人類学的な側面への考察も加えながら、酒、焼酎の起源から説き、さらに世界の蒸留酒の多様性から、我が国の独自性とすすみ、「文化」が「文明」へと移行してゆく先に、墨守され維持された「文化=本格焼酎」と、「文明=甲類焼酎+somethingミックス」という両面があるというものだった。この「文化」と「文明」そして、東洋の「焼酒」と西洋の「スピリッツ」の対比的考察も興味深かった。そして、なんといっても圧倒されたのが、ラウンジに展示された「世界の蒸留機」の数々だった。ヘレニズム型の発展型というべきギリシアの蒸留機。モンゴルで収集したという甑外取りという中国型蒸留機。そして冷却部分を除くと、薩摩酒造<明治蔵>に展示してある「らんびき」と同型の、朝鮮半島型蒸留機「土古里」などなど・・・。すばらしいコレクションだった。

とりわけ、モンゴルの蒸留機をみていて思ったことがある。
「酒」は蒸留酒を含み、いまの日本では考えられないが、もっともっと身近なものだったのではないだろうか。明治半ばまでは、鹿児島でも自家醸造・蒸留していた。大きな声ではいえないが、つい十年前まで自宅の庭で焼酎を造っていた友人もいる(上京してできなくなった)。彼は「洗面器」で造っていたそうな。五島列島で農業をやりながらどぶろくを造っていた友人もいた。村でたった一人の駐在さんと、よく宴会をやっていたそうだ。
土地の原料を使って、その土地で造る。もちろん味わいは造りの数だけある。昔なら、主婦の(家庭)の数だけ多様な味わいの焼酎があった。それが地焼酎の原点だろう。効率論(そのバックには徴税がある)でまさしく暮らしの文化である「酒造り」を考えてはならないと思うのだ。
現在の国家収入に占める「酒税」のシェアは約4%だ。明治35年の国税収入にしめる酒税比率は42.2%に登った。日清・日露の国家の命運をかけた戦いの戦費をまかなうためと思えば、我々のご先祖たる飲兵衛たちの苦衷はわからないでもない。
平成13年の酒税額合計は、1兆7788億円。あの拉致テロ国家が我が国に要求している金額に等しい。国民(成人)一人当たりの負担額は、17498円だ。国のためでなく、拉致誘拐国家の頭目を延命させるためにこの血税を垂れ流そうとする政治屋・官僚の脳みそにはメチルアルコールか、無濾過の生ゴミでも注入したらいいかもしれない。

閑話休題。
秋めいてきたある日、日本橋にある宝酒造本社に伺った。
フォーラムで展示してあった「蒸留機」が、同社の酒文研究所に保管されていると聞いたので見せて戴こうと連絡をとったのだった。「どうぞ、いらしてください」と快諾していただき、辻主幹研究員から色々な現地でのお話しもうかがうことができた。
この手のテーマ研究には、デスクトップでの研究もだが、フィールドワークが重要だ。同研究所のスタッフによる「蒸留酒ロード」踏査の足跡を拝見して感嘆したが、それ以上に羨望の思いはモバイル型蒸留機の冷却鍋を吹き飛ばすくらいに噴騰してしまった。「よい職場ですね〜、それにしても」とつい口走って研究所のスタッフのみなさんに笑われてしまった。
わざわざ梱包を解いて、蒸留機をくみたて、説明してくださった同研究所の皆様に感謝申し上げます。


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