焼酎寸言

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 ... 薩摩 桐野  
.......      中俣合名会社    鹿児島県指宿市西方4670 .    i k(report 19.9.1)

桐野の名を聞くと、記憶ではなく感性が、いや魂が反応する。
少しでも郷土の歴史に思いを致す薩摩人ならみなそうだろう。

中村半次郎、のち桐野利秋。
大西郷とともに幕末から西南戦争(十年の戦)を駆け抜けて散ったますらおである。

薩摩に千年伝わる「薬丸自顕流」にいささか関心の有る向きは、すなわち彼が薬丸自顕流の達者であり、動乱の京で、そして戸羽伏見に続く戊辰の戦いに、薬丸流の剣を振るって奮闘したことをも知るだろう。


■ラベルデザインは財部出身(千葉在住)の桃太郎師。

この酒は、その桐野に因んだ名前を冠した。
企画者にもその覚悟がある。
・・・ 薩摩「桐野」として銘柄に刻むことは鹿児島県人として誇りであり、責任も重く、この焼酎から色々なものを伝えていかなければならないだろう(天世味酒販株式会社代表 前畑浩一氏)

ラベルの文字に力がある。自然体の力。誰の字かとお聞きしたら、財部出身で千葉在住の書家(というか造形作家)、桃太郎こと筵平桃太郎さんが気持ちを込めて書いてくださったものとお返事をいただいた。
桃太郎さんは、黎明館や京都市美術館、ファイエットビル美術館それに中国歴史博物館等で作品を発表している方だ。力のあるしかし優しいフォルムが特徴の作品は、書にしても土にしても好きな作風の方である。

優しく、そして力がある作家を起用した企画者の狙いはまさしく「桐野」という人物を写す酒にピッタリだと思った。

■飲んでみた
開封して小振りのグラスに注いだ。
静かに立ち上がってきた香りが円みを帯びている。すこし心配になるくらいの優しさだ。その優しさのなかに「複雑」がある。ただの飲みやすさだけの酒ではないと、このささやかな香りが告げる。

グラスを近づけて深い香りをきく。
穏やかにそしてしたたかに広がる香りが心地よい。
ひとくち含む。口当たりの滑らかさに驚く。滑らかだが、思ったとおり、何重にも重なった香味を感じる。
口中に浸潤させる。舌尖で探りだした辛みが、舌縁から舌背に回り込み、味蕾に染み込むときになると素晴らしい甘みになって広がる。
ここでいう「甘み」が、上質の芋焼酎特有の味わい「うま味」であることは言うまでもない。
喉ごしのスムーズさ。味わいの重ねの厚さ。余韻の響きは長く続く。口当たりから残響まで一貫している味わいの確かさ。それでいて口中で変化する味わいの多様さ。厚いそして熱い酒だ。
黒瀬杜氏、黒瀬勉氏が精魂込めて造る酒。
七十を越えてなお現役の長老。様々な蔵で活躍された方だ。ひるね蔵酒亭を始めたころは「島乃泉」を造っておられた。寸言「黒瀬杜氏」にそのことを書いたことがある。

この酒、 一升 25度で 2,840円。3000円に満たない値付けも納得。
ただし中俣さんの蔵で造る少量生産だから注文して気長に待つことも覚悟しなくてはと思う。


■焼酎の瓶には、刀が似合うのはなぜだろう。粗末で飾りけのない「薩摩拵」がなおのことこの「桐野」に似合う。



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