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南薩の光と風の中で

高良酒造

「白麹なら、高良さあに聞けばよか」と言うのは、黒麹だけで仕込む村尾さん。
まあ、高良さんにも「古八幡(いにしえはちまん)」という黒麹仕込みの古酒はあるが・・・・・・。
高良さんにはこの3月、上野の竈屋で開催された会でお会いした。「いつか蔵を見せてください」という小生のお願いに、仕込みの時は大変ごわんどという言葉が気になっていたが、仕込みは9月からだ。お伺いしたのは明るい風が吹き渡ってゆく、晴れた日の午後だった。

県道29号線から262号線へと走り、一路北上。川辺町宮は15キロメートルほど内陸に位置する。穏やかな緑に包まれた農村地帯だ。後背に小高い山を持つ高良酒造のたたずまいは明るく穏やかだった。
いつもにこやかな高良さん、この日はすこし痩せたかもと思わせる精悍な表情。仕込みの時を間近に控えているからだろうか。
いろいろとお話を伺った。
「村尾さんの黒とわたしの白ねえ・・・」麹についてお尋ねしたら「白麹のほうが最初の勢いが良いと感じっとですよ」
高良さんと仲のいい村尾さんは、黒麹でなくては焼酎を造っている感じがしないと仰っているが、杜氏さんそれぞれの経験と勘と相性ゆえの違いなのだろうか。
以前何かの雑誌で黒糖焼酎の富田氏との対談中、高良さんが蒸留について語られていたことがある。
「蒸留」についてはあまり変えないようにしています。安定した酒質を確保するためにはそれが必要、そういう高良さんは手堅い造りを継続できる確かな技の持ち主であることを感じさせてくれた。

蔵の内部。このカメでの造りは9月に始まる。

蔵を見せていただいた。埋め込まれたカメの列。小振りの蒸留機。芋の処理ライン・・・さすがに効率性を考えて整理が行き届いている。やがて9月になると夜も昼もなくこの蔵が動き始める。麹菌という生き物と杜氏という騎手がほとばしる蒸気の勢いに乗って酒を造りだし始める。そう思いながら再び蔵のなかを見渡した。まだ空っぽの三角棚の底の闇になにか蠢く予感が潜んでいるような気配がしたのは錯覚だっただろうか。

1000リットルの蒸留機

一日2回の蒸留をおこなう。一回に要する時間は約3時間半。

驚くほど清冽な良い水だ。
焼酎の1/4から1/3は「水」というわけだから、良質の水が酒質のかなりの部分を決定する。
裏庭に出た。明るい日差しの中にちいさな泉がひろがり、清冽な水がこんこんと湧いている。その滴りを手に受けてみた。おもいがけないほど冷たい。この水もたしかに生きているなと感じた。

明るい陽光の下で、しばしの静寂をたのしむ焼酎蔵。夏の終わりから年内一杯は戦争のような仕込みの日々が続く。
どうぞ元気で、よい焼酎を産み出してください。


見送っていただいた高良さん。

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