焼酎寸言

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    園の露  
.................................川崎醸造場 .okin  宮崎県東臼杵郡諸塚村家代4006  (report 15.6.8)

「雲が白く流れるのを眼下に見る、そんなところにある蔵なのですよ」と語ってくれたのは「酒のやままん」の吉田大道(まさみち)氏。
昨年春まだ浅い宮崎の山村、諸塚村家代(えしろ)の川崎醸造場を訪れたときのことを、静かな語り口で、思い起こすように話してくれた。
「小さな小さなお蔵さんです」わずかに60石(一升瓶にして6000本)を一年間に造る。その造りも昔ながらの道具を継承し、知恵を受け繋いで家伝の味を護っている。
女主人の黒木秀子さんが、実弟の川崎一志さんと二人で造る「園の露」。穏やかな時間が流れる山村の蔵で、先人への思いと敬意を積み重ね、積み重ねて丁寧に醸された酒なのだと感じます、そう語る吉田氏の口調にも表情にも、この酒を扱うことへの責任と満足がうかがわれた。


「初代の近治の嫁の名がおソノ。それで『園の露』とつけたげなですもん」(前山光則著「山里の酒〜九州蔵元紀行」葦書房 2000円)

銘柄名の由来はこの本で知った。
地図を見る。日向から耳川に添う国道327号線を熊本県境までの半ばほどまで辿り上がってゆくと、「諸塚村」だ。ここの宮の元には西南戦争のときに熊本から鹿児島に向かう西郷軍にまつわる話が残る。麦古酒「藤の露」を造る藤本さんのご先祖様が薩軍兵士に酒を振る舞って励ましたというのである。追っ手と闘いながらの山中行、その酒に傷ついた兵たちはいかに癒されたことか。この記録でもわかるように、宮崎県の山中に位置するこの村は、北は大分、西は熊本と、山岳の道でつながっていた。雲が低い朝などには、まさしく雲上の道を踏んで人々は移動していたのだろう。川崎さんも藤本さんも焼酎造りの創業は明治20年代。薩摩でいう「十年の戦(いっさ)」で、西南戦争の兵士達が喉を潤したのは、自家製のどぶろくでもあっただろうか。

■ダイヤメ日記より

(15.5.29)
宮崎諸塚の米焼酎は昨日「酒のやままん」さんでいただいたもの。ストレートで。園の露はかねて評判は聞いていたけれど、味わうのは初めて。開栓したとたん、ふくらみのある穏やかな香が立ってきた。口のなかにまとわりつき浸潤してゆくような滋味。さすがに米というキレの良さがあるのに香味の残響はかなり長い。あじわいは太い。そして南国の山のような明るさと、反面、深い重さを持っている。存在感も凄い。しかしまちがいなく優しく力がある酒。たとえば猪のような獣肉をも軽い肴に替える強さがある酒だ。「粕入り」の表示に、伊豆大島の谷口さんが造る「いも太郎」(蔵でしか買えません)を思い出してつい頷いてしまった。
(15.5.31)
宮崎の米焼酎で〆。この米焼酎、なんともいえない味わいのふくらみがいい。間違いなく美味しいのだけれど、飲んでいて「楽しい」というほうがぴったりくる、そんな豊かな味わいの酒。よか晩でした。
(15.6.3)
まずはショットグラスで。生でいただいた。しみじみとうま味が響いてくる酒。甘く、厚く、そして楽しい酒だ。昨年の春、宮崎県東臼杵郡諸塚の川崎さんを訪れた「酒のやままん」の吉田さんは、この蔵のたたずまいを「雲上の蔵」と表現した。深い霧に沈む蔵の全景写真、製造の特徴である二次もろみに加える酒粕の写真などを見せて貰いお話をお聞きした。丁寧な小仕込みを伝えるお蔵さん、その酒を大切に大事に扱う酒屋さん・・・こういう関係がお互いの信頼を紐帯にごく自然に続いてゆくというのが有るべきカタチなのだろうと思った。
(15.6.5)

川崎さんの酒はストレートで。うなってしまう旨さ。

■ここからは、吉田大道氏のお蔵訪問のお話と写真から構成しました。


【雲上の蔵】

村の中心から蔵までの山道は途中道を間違えたかと思うほど。
人家もなく不安になる。山の斜面などに茶畑があり、10分ほど走ると前方に集落が見えてきた。
看板などはなく、もし酒の空き箱が無かったらおそらく通り過ぎていただろう。
雲の低い日で、雲上の蔵という幻想的な印象を持った。






【木製の甑】
原料は国産米。木製の甑を使って蒸し上げるが、その甑が一回に70キロしか蒸せない小ささだ。

【手造り麹】
麹は3日間を費やして造る。
床からモロ箱に分けた麹は木製の棚に並べる。箱をずらして並べる風景はおなじみだが、先人からの知恵でこういう工夫を伝えている。この方が通気性がよいという。

【仕込み】
園の露の仕込みは一次、二次ともカメ壺で、仕込み日数も全部で4週間ほどと長い。木製の暖気樽もりっぱに現役だ。

【酒粕】
園の露の一番の特徴は、二次仕込みに加える吟醸酒の酒粕。品質を保つためにマイナス15度で保管している。

【昔ながらの木桶蒸留機】
木桶蒸留機はこれまでいくつか見たことはあったが、そのどれよりも小さく、よく使い込まれているものだった。この蒸留機で丁寧に少しずつ得た原酒を一年ほど熟成させた後に出荷される。


【女主人 黒木秀子さん】
結婚されて黒木姓。40年以上園の露の造りにかかわり、ご主人が亡くなられたあとは、弟さんの一志さんと二人で園の露の味を護っておられる。造る酒とおなじく、とても優しく温かみのある女性。


「園の露」のことをもっとうかがいたいと思い、吉田氏に取材を申し込んだところ、仕事中にもかかわらず時間を作っていただいた。
場所は西武池袋線「中村橋駅」近くの居酒屋「美酒佳肴」。吉田氏はご父君ともども毎年九州の地を幾回も巡っている。杜氏と話し、蔵の仕事を体験した氏の説明は、お客を自然に焼酎の世界に誘い込む魅力と説得力に満ちている。


「酒のやままん」
練馬区中村2-10-5電話03-3990-3334
「美酒佳肴(びしゅかこう)」
練馬区向山1-14-1電話03-6761-5631


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