鹿児島県曽於市大隅町岩川の農士たち。
「たまり農園」の巻

(たまり農園の情報は末尾に掲載)
鹿児島県曽於市大隅町岩川。
たぶん(一部の焼酎のんごろを除き)全国的な知名度は無いに等しい田舎町である(ここで生まれた小生が言うから間違いない)。
この町のはずれ、高原になっている場所に「たまり農園」がある。薩摩名物の黒豚を育てている牧場だ。
黒豚は鹿児島の各地で育てられそれぞれの美味しさを全国に届けている。芋焼酎とともに薩摩の名産といっていい。
そのなかでも「たまり農園」の黒豚はちょっと違う。ちょっとではなく、おおいに違う。まことに奇跡的な美味さといっていい。
「味わい」の表現はひとそれぞれだしややもすると抽象的になりがちだ。
それでもあえて言う。

まずお肉そのものの味わいが秀逸。
そして脂身のほどよい軽さ爽やかさ。
皿に盛って置いておいてもドリップがでない質実。
薄切りにした肉をしゃぶしゃぶでいただくととろけるような柔らかさと肉の甘さが交響する。

ここの農園主である「玉利泰宏」氏にその味わいの訳について聞いてみたことがある。

「ストレスのすくないひろい牧場で、のびのびと運動させて育てています」

「市販の穀物飼料は使用せず、周りで手に入る材料を使った手作りの餌を与えています。 」

「餌は発酵菌を利用して発酵処理し、酵素の力で餌の質を高めています」

豚くんたちが走り回る畜舎をみると一目瞭然だ。
一般的なイメージだと豚小屋の地面は排泄物で濡れているはずだが、ここは違う。表現するならば「ほくほくとした」床なのだ。残ったエサを床土に漉き込んでいるために土の中で酵素が作用しているのだ。



床の「ほくほく」感が伝わりますか?

今年の五月、岩川をおたずねしたとき「弥五郎どんの丘」を歩きながら聞いてみた。
「発酵菌はどこから持ってきやっとな?」
「もちろん専門店から購入することもありますが・・・」と玉利さんは言って腰をかがめた。そして道ばたの竹やぶに分け入った。
「ほら、竹の根っこのところなどにこうやって生きている土着菌を採取したりもするんですよ」


白く見えるのが、自然酵母
自然の恵みだけで飼料を手作りし、よく運動している黒豚くんたち。
その肉を玉利氏は精肉から肉製品加工までのフローをしっかりと管理し、販売までも自分が見える所で行っている。
手のかかる仕事だ。マスプロの対極にある生産と加工販売だ。
その手の掛け方がそのまま味わいに反映する。

蜘蛛たちが虫を退治してくれる。

いま、たまり農園の豚肉を希望する消費者が増えている。
個人でやっている(たった一人です)農園での小規模生産と販売ではいずれ追いつかなくなる。いうまでもなく、規模のマーケティングはじつは危険をはらむ。
人を増やし、豚くんたちの数を増やし、畜舎を拡大してマーケットの要請に応えてゆくのは必要な事だが、これは経営的なバランスをしっかりととってゆかなくてはならない事でもある。


ドラムでエサを作っている農園主

農園を始めて今年10年を迎えた。
玉利氏はじつは鹿児島の古流剣術「薬丸自顕流顕彰会」の門人でもある。
薬丸自顕流発祥の地といっていい大隅にあって、そこの大気と土を相手に豚を育て作物を栽培している。まさしく剣と農の一致を体現しているといっていい。
ある日、自顕流の同門で芋焼酎を酌んでいるときに玉利氏がつぶやいた。
「うちの農園のブランドをはっきりさせて、自信をもって豚肉を提供できる体制を作りたいのですよ」
なにかブランド名としてふさわしいものは無いですかね?という。
「鹿児島産の豚のブランドとして、ひとことでわかるような、ね。」


岩川八幡神社境内「弥五郎どん祭り」で演武する玉利氏(正面)

芋焼酎のお湯割りを舐めながら、同門のM君(41才)が玉利氏に答えた。
「こんなのは、どう?・・・さつまはやとん!」
皆が笑った。玉利氏はしばらく考えていたが、うなづいて言った。
「そいじゃが!そげんしもんそ!(それです!それにしましょう!)」
M君の命名に、小生作成のブランドマークを添えてやがて「岩川たまり農園、黒豚さつまはやとん」が誕生するその瞬間だった。よっぱらいたちが考えたといえば身もふたもないけれど。


玉利氏は一人で農園をやっている、そう書いた。
しかし、玉利氏は一人ではない。実におおくの仲間、同志たちに恵まれている。
焼酎原料の芋を作る農家、仲買の方々、精肉の専門家、行政、マスコミ、なにより消費者の方々。
そんな人たちの縁の中に、たまり農園はしっかりと根を下ろしている。

その縁に、生産農家というか、さつま芋全般をプロデュースする竹下一成さんというオヤジがいる。ただの芋オヤジではない。鹿児島の焼酎生産の現場に深くかかわっているオヤジだ。
県内いたるところの焼酎蔵で◯に竹と書いた芋袋を目にする事がおおい。すべて竹下さんの手配に寄る原料芋だ。品種改良にも多くの実績を残している。自顕流同門の定番酒「岩川私領五番隊」(大石酒造)の原料芋ベジータレッドは竹下さんの命名だ。竹下さんと玉利氏の縁が鹿児島の焼酎蔵へと拡大してゆくのは必然だった。国分の中村酒造そして志布志の若潮酒造にも共に伺ったのだった。


左から、芋農家、芋焼酎、黒豚農園主

黒豚、芋焼酎、自顕流。
この縁は循環する(けっきょく、そこかい^^;)

鹿児島大隅の高原の大気を存分にあびて肥沃な土の上で育つ黒豚「さつまはやとん」にこれからも期待したい。
つけたしで恐縮ですが、ここの牧場の片隅で飼われているニワトリ。豚クンとおなじエサで育っているためにその卵の秀逸はことばにならない。

昨年11月の「弥五郎どん祭り」演武奉納のおりに玉利氏が宿に届けてくださった卵を、同門といっしょに翌朝の朝食にて「たまごかけご飯」でいただいた。空前絶後の美味しさだったと申し上げておきます^^。



たまり農園のたまご(撮影:農園主)

有用微生物の発酵作用を生かした環境と社会に優しい技術の創造
たまり農園 玉利泰宏
〒899-8102 鹿児島県曽於市大隅町岩川4988-2
電話&ファックス 099-482-5540 メール mail@tamarifarm.com


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