焼酎寸言

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 鶴 見(つるみ)
...............大石酒造 .oki.......鹿児島県阿久根市波留1676   (平成14年12月8日記 平成20年7月加筆)

昔ながらのカブト釜式蒸留機の復刻や、それで蒸留した「がんこ焼酎屋35度」で話題の大石酒造。この蔵のレギュラー酒がこの「鶴見」である
我が家の押入に積み上げたP箱の下の方に格納していたが、ローテーション作業により救出したもの。
出水地方への鶴の飛来は冬の到来を告げる歳時記として全国的に有名だ。かっては阿久根の潟地区にもシベリアから鶴の大群が飛来していたという。この焼酎のラベルにも松と鶴が配されている。
大石酒造の初代長次郎が名付けた銘柄名と「鹿児島焼酎台帳」で知った。庭の松越しに大空を舞う鶴を見て命名したのでもあろうか。

この蔵は明治32年創業。それ以来延々と地元の生活者たちに愛され親しまれてきた芋焼酎だ。しっかりと軸足を地元に置いている酒。白麹仕込みの芋焼酎25度。

カラカラに水と一緒に入れて湯煎。これが芋焼酎の美味しさを味わうには一番です。
「日毎夜毎に飲む酒はおのれの女房であり、愛人である。いちいち気取って接しなければならぬようなものではストレスの解消など思いもよらない。そんな気取りを持たずにすむところが焼酎のよさである。」(穂積忠彦「焼酎学入門」昭和52年刊より)
穂積氏の焼酎定義だ。地酒としての焼酎をあらわす<レギュラー酒>の定義でもある。空気のごとくそこにあって、水のように日常にある。暮らしに即したダレヤメの酒。気の置けない日常の酒「鶴見」は一升で1800円ばかりの価格。薩摩の焼酎伝道師、にっしーさんの「鶴見レポート」をごらんになってみてください。地元ん衆がそこの焼酎を愛好せんでどげんすっとか、という真理を明解に喝破されている。
2006年の9月、『dancyu』の取材でお伺いしたときのことはこちらを御覧ください。『dancyu』に執筆したものにかなり加筆してあります。



■飲んでみた
莫祢氏」や「がんこ焼酎屋」など、大石さんの酒に共通する「重ね」の厚い香りが、この酒の栓を開けた途端に薫る。米麹かふかしたサツマイモか、一種フルーティな(減圧蒸留の酒にみられるものとは違う)芳醇がその香りにある。ジョイホワイトを使用する「がんこ・・・」と通じる香りだから、単に原料に由来するものではなく、大石さんの蔵特有の癖、と言ったほうがいいのかもしれない。蔵の至る所に付着し浮遊している生き物たちのせいかもしれないと想像が膨らむ。ストレートではこの酒の剛の面よりもむしろ「甘い」といった印象の方が強調される。昔ながらの「辛さ」の中には、実は芋焼酎本来の甘みがひそんでいるのだけれど、それが「鶴見」では、他に比較してより強い香味のプレゼンテーションになっている。お湯割りでいただくと、表情が一瞬優しさを見せる。深く甘い柑橘系といっても良いような濃醇な味わいは、ストレートでの印象から寸毫も減衰することはない。ちょっと下世話な表現で申し訳ないけれど、つい舌舐めずりしたくなるほどの旨みの濃さだ。
ふくよかで、暖かい。剛直だが柔和。ロックでいただくと、また表情がやや変化してくる。華やいだといっていいほどの香味の広がりが、氷が焼酎に溶け出してゆくにしたがいゆっくりと静かにまとまってゆく。いや、実にうまい酒である。この「鶴見」、ブランド化した数多の焼酎に比べて一歩たりともひけを取るものではない。明治32年(西暦1899年)創業以来、日露戦役から大東亜戦争そして戦後を一貫して造り続けてきた蔵だ。堂々のレギュラー酒。地元の誇りとしていつまでも愛好される存在であって欲しいものだ。


写真は、「そらきゅう」と「なんこ棒」。そらきゅうを片手に、なんこで勝負し、負けたら喜んで焼酎を飲み、勝ったほうもなぜか飲む(^^;)。
「げたんは!」「おとっ!」「あいちゃ〜、しもた。しょうがねで、のまんなら・・・」と、のんごろたちの夜はいつまでも続いてゆくのですね〜。

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