焼酎寸言

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利八
 吉永酒造  鹿児島県指宿市十二町645        report 2011/1/26 
この酒、そしてこの銘柄名に変わる前の「さつま白雪」を知る人は焼酎(ブーム)の最中でも比較的少なかったと思う。
指宿の町の住宅地と商店が入り交じった場所に静かに佇んでいるような小さな蔵である。蔵の中には、一次仕込みに使う和カメが18個並ぶ。小振りの常圧蒸留機と三角棚、ドラムが蔵の一角にこじんまりと配置してある。整理整頓がきちんとなされた清潔感あふれる蔵だ。
年間400石を吉永章一さん(26)と熟練の蔵人で造る。御父君の病気により、大阪にあった勤務先を辞め、蔵にはいった若い杜氏をご母堂のひろみさんが支える。
平成15年、長く造ってきた「さつま白雪」は商標権等の問題で銘柄名の変更を余儀なくされた。そして新しく命名されたのが「利八」だった。蔵の二代目である利八氏に因む銘柄である。若くして半身不随になったにもかかわらず、不撓不屈の精神で家業を守り通した利八氏の名前を酒の名とした後継者たちの思いを深く感じるのだ。平成22年10月に蔵を訪問させていただいた時の記録はこちらの日記で。

(シンプルだが気迫のこもった筆文字で構成されたラベル)


■さつま白雪は優しさが印象的な味わい。利八は優しさはそのままに静かな迫力を感じる骨太い酒。

 まったく同じ造りというのは出来ないのが焼酎。しかし、利八の確信的に剛直な香味が、次第に強くなって来るように感じるのは、造り手の時代が次第に変わってきたからだろうかとも思ってみる。
「さつま白雪はファンでした。銘柄がなくなると聞いて買い求めた一升瓶は、いまでも開封せずに置いてありますよ」と章一杜氏と母親のひろみさんに話した。
「そうですか。それで味わいはどうでしょうか?」利八との味わいの違いをおふたりに笑顔で聞かれて、最初に書いたような感想を述べたのだった。
「おかげさまで、利八を飲んでいただいた方々が同じようにおっしゃいます。さつま白雪とはすこし違い、味わいの強さがハッキリしていると。お湯割りはもちろん、水割りやロックでも味わいがしっかりしていると言っていただいてるんですよ」
「うれしい事ですね」おふたりの笑顔を見ながら、この蔵の酒がもっともっと美味しくそして皆に受け入れられる銘柄になるのだろうと確信したのだった。
 
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ホームページを作りました」ちょっと照れながら、章一さんが言った。見てみて驚いた。必要な項目は全て網羅してある。芋焼酎の出来る迄の工程を、われわれ一般のノンベエにもよく理解できるように工夫をこらしたコンテンツに仕上げてある。

多くのメーカーが、マーケティングやプロモーションのためにウエッブサイトを画像やテキストで飾り、結果として見苦しい(見づらい)肥満体サイトにしてしまっているなかで、吉永さんのサイトの淡々としたシンプルな、そして造り手の思いのこもったたたずまいには感銘を受ける。人を映す酒、人を映すサイト。ものごとの根っこには、すべて「人」がいることを考えさせてくれたのだった。

章一氏の御父君、四代目俊公氏は2010年11月22日に逝去された。章一氏の帰蔵以来、二年間と短い時間だったが、五代目へのバトンタッチができたことを嬉しく思いつつ旅立たれたのだろうと拝察した。合掌。


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(c)hiken@2011.1.26