6/13、14の両日、久しぶりに渓流の魚を求めて釣行しました。
同行者から行き先を明かされない、ミステリーツアーだったのですが
なんと東北の一地方だ、というのも味方を欺く方便で
じつは木曽川水系の支流いくつかと本流でした



岩魚とアマゴの夏


木曽 隠し川 渓流魚


  その岩魚は、背がかりで釣れてきた。
「これじゃ、鮎の友つりだなあ」苦笑いしてしまう。
アタリは明快にあったので、手首を返してアワせたのだが、そいつが吐き出した釣り針が反転した背中にささったのだろう、と想像した。
「要は合わせが遅かった、のだな」
きりがないな、ここまでにしようと観念して、竿を納めることにした。
もう昼近い時間だ。激しい瀬音に送られるように、渓谷から林道にでた。いつか高くなっていた陽が道を白く照らし、あふれるような光が目にまぶしい。
「少し早いが、弁当にしよう」
リュックをおろし、握り飯の包みをとりだす。思いついて、携帯電話のスイッチをいれてみる。繋がるのに驚き、ついでに自宅のかみさんに電話をいれようとした。ところが液晶板には留守電がはいっていることを示すアイコンが表示されている!不吉な予感が!仕事のトラブルかあ!
「う〜む、携帯持ってなかったことにしよう。ま、一応聞くだけ聞いておこう」
1,4,1,7とボタンをおして伝言を聴く。すると、突然、なんのあいさつもなしに野太いがさつな声で
「ば、爆釣お〜っ!」
とんでもない叫び声が耳に飛び込んできた。会社の釣り仲間、Kの声だった。
その一言のみで電話はぷっ!と切れていた。伝言を消去しますか?という電話会社の女の機械的な声に「うん、うん」とうなずき消去ボタンを押した。 いにしえの賢人も言ったではないか。
〜友の憂いに我は泣き、我が喜びに友は舞う!

なぜかそのとき心優しい渓流釣り師であった小生は、昨年来悪夢の釣りボウズをくりかえしてきたその男が、この日伊豆伊東港からイサキを釣りにただ一人内緒で出船し、大漁に恵まれ、そのボウズ菌がついに落ちた(んだろうなあ)ことを、心から素直に喜んだのであった。
ところで、
この日、6/14の早暁0430時、木曽川水系の○○支流の沢に入渓した小生は、初めての川に少々手間取っていた。0300時に入渓点で合流した現地情報員某から受け取った最新情報では、状況はいいはずである。
「とりあえず、これ使ってください」と渡された川虫も大きく元気なものが揃っている。川が活性に溢れている証拠である。魚ももちろん豊富なはずだ。支流とはいえ、6.1mの竿を存分に振れる渓相である。焦らずにゆっくりと遡行していく。
最初のあたりは10分くらい後にきた。大きな岩のすぐ下流に沈み岩があり、その脇をゆっくりと流した時、目印が小さく円をかくようにクルッと回った。あわせは遅れ気味だったが針がかりしてあがってきたのは19cmの岩魚だった。
天然魚特有のいさぎよい白斑点とかすかなパーマークが、まだ明け切らない早暁の川面を背景に、目に鮮烈に映った。それからは、ぽつぽつとアマゴ混じりで岩魚が釣れあがってきた。気持ちのいい、釣っていて楽しい川だった。
結局この日のあさまづめの釣りは、アマゴ3、岩魚6だった。(ちなみにこれは多摩川での2カ月ぶんに匹敵するなあ)えさはヒラァ?!"6.1mの渓流竿に0.4号の通しのしかけである。
伊豆のイサキ男に電話して、その嬉しそうな釣果報告を聞きながら、握り飯で昼をすませた。林道を川に沿って下の本流との出合いへ向かう。同行した釣りニュース社随一の渓流師O氏と駐車場所で待ち合わせていたのである。
「いやあ、40cmオーバーの、金色の岩魚を取り込む寸前でバラしましたよ」
O氏は実に悔しそうであった。氏の入渓した川は、また別の支流で、水量ももっと少ないボサ川だという。そんな魚を棲息させられるほどの奥の深い支流がこの地方には120もあるんだ、と現地諜報員が誇らしげにその夜の膳を囲みながら語った。
この日のゆうまづめ、小生は木曽川本流に挑戦することにした。
川虫ではなくキジをエサに、ウグイの多いぶっつけの淵を丹念に探る。この釣法のイメージは、多摩川の山女魚道、あの細山長司さんのものである。粘り強く餌を流し続けるのだ。それでも魚篭にはすでに、別のポイントで釣った型は中型だが、本流独特の体高のあるアマゴが2匹おさまっていて、気分はらくだった。
何投目だっただろうか、水中の目印が水面すぐ上の目印とは逆の方向に緩慢ともいえる速度で動いた。左手を支点に右手でするどく合わせる。
お、喰っている。これはうぐいじゃないぞ。最初は軽い感じだった竿が次第にのされはじめてきた。なんとか水面に浮かせる。魚がひらをうった。でかい!焦る気持ちをおさえながら、タモを腰から抜き、あとずさりして、魚を岸によせていった。魚が見えた!たのむから、バレないでくれよ!その魚がタモにはいったと同時に、渓流スペシャル61の2節が折れてしまった。
魚はアマゴだった。パーマークはほとんど消えている。しかし赤斑がかすかにアマゴであることを示している。木曽の本流アマゴの戦闘的な顔つきと力を感じることのできた瞬間であった。
翌15日、早朝0500時、現地伏兵によればとっておきの隠し川、○○沢に入渓。残された時間はあまりないが、帰途につく前にわずかな時間でも竿を出したいと言う気持ちが先にたっての入渓である。
現地保全のため極秘の沢につき、あまり詳しくは描写できないのが残念であるが、そこはいわゆる「里の川」であった。両岸には農家、段々畑、お花畑、工事現場などが展開し、川沿いの道を農夫が軽トラで行き交う「里の川」であった。日曜日というのに釣り人はだれもいない。畑で草をとっているおじさんが酔狂なやつもいるなあといった表情で「おー、つれるかあい?」と声をかけてくる。その農家の裏の川の落ち込みで、22cmの天然ピンシャン岩魚が飛び出した。朝だけのつりで、(多分移動距離は200mくらい)20cm級の岩魚とアマゴあわせて12匹釣って、この遠征の納竿としたのである。
東京へむかう中央道は渋滞もなかった。心もかるく、魚篭は重く、ひさびさに楽しい釣行だった。帰ってみると、子どもたちからのプレゼントが待っていて、はじめて今日が父の日だということに気がついたのでしたあ。
おしまい。





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