季節と友と和歌について

コラボレーションのたのしさ

 十数年前、あるきっかけがあって、下手な歌を詠むようになった。師匠もおらず、理屈もしらない自己流の和歌である。

 最初、一日一首と決め、朝の書斎だけでなく、歩きながら心象を得たときとか、釣りに行った河原や船の上でも心に浮かぶままに詠み、七年ほど続けた。およそ3000首くらいも作っただろうか。その後は、時折、感興のままに詠むように変わってきた。

 いつからか、渓流釣りのページを主宰されている後藤章さん(リンク蔵参照)からの歌に返歌を送る形で何首かを詠んだし、ひるね蔵を見てくださっている山本夫妻に第一子が誕生したとき言祝ぎの歌を詠ませて戴いたりもした。(リンク蔵「ひとくち童話」参照)

 小生にとって、和歌は剣道と同じ、自分の心の内をただしく見、励ますための努め、といえば良いだらうか。

秋、深まりゆくころ。渓流の禁漁後のある日、後藤さんからメールが送られてきた。

>紅葉のきれいな谷を登ってみた。やまめが数多く見られた。渓魚達にもシーズンが終わった ことがわかるのであろうか。

ただ一人落ち葉散る谷訪ねれば走るやまめの数の多さよ  後藤 章

返歌  秘剣@

やがて深き雪に消えゆくいのちらの眠り静けく春を聴くまで

瀬の音も舞ひ落つ木の葉にうづもれて静かに深く森の秋行く

 ひきつづいて、こんな歌も送られてきた。

舞い落ちる黄色のもみじ葉水に触れいわな緩やかに弧を描き  後藤 章

返歌  秘剣@

おおそらの高み駆け往く風に乗る冬の渓魚の夢の翼は

 この年もおしつまった12月、

年の瀬にクリスマスカード読み直し 賀状に託し送るせわしさ  後藤 章 

返歌  秘剣@

冬の夜にかすかに響く瀬の音に輝くごとき初春を聴く

クーラーに2匹のイナダと潮風と今年の釣りの感謝おさめて

 明けて正月10日、三首の歌をいただいた。

硬雪にかすかに残る足跡の 踊れるごとくに見える楽しさ

一夜明け硬雪を踏む多摩川の 沈まぬ雪に故郷想う

初春にとどいたメールの懐かしき 吾妻の山は故郷のやま   後藤 章

返歌  秘剣@

おほぞらに白き海原あれいでて舞ふ波のごと春の雪ふる

 つづいて、

ベランダも押しつぶす雪に北国を想い描きます春待つ日々を  後藤 章

返歌  秘剣@

重き雪にたわむ木ぞみてこころつよくやがて吹きくる春の風想ふ

 

 この正月あけてすぐ、山本夫妻に風流(ふる)ちゃん誕生。
   ※風流ちゃんのすくすく成長記は、おとうさんのページで。(リンク蔵「ひとくち童話」参照)

春はいま心のうちにあれいでぬ あらたまの雪あれいづる子

しづやかにふたりの親の生まれしはあたたか色の雪の降る朝  秘 剣

 春3月、奥多摩に釣行した後藤さんから

>谷すじにはまだ雪が大分残っていたので、奥まで入る予定を変更して

日原の部落の下で釣りました。天気は風もなく最高の状態でした。

早春の静かな渓を一人釣る流れにとけるやまめの影が  後藤 章

返歌  秘剣@

川波にさざ散る光輝きていま山里に山女魚おふ春 

 渓魚がさかんに瀬を走り始める4月、後藤さんから

ひさびさにいわなの走る渓にきて我おもうことあり明日の自然を 後藤 章

返歌  秘剣@

変じゆく海山川も人の世のこころの映しとひとり道ゆく

5月、楽しい釣りをしたといふ後藤さんより、

日原の冷たく白き水泡を切り裂き岩魚おどり出でくる

目にしみる青葉のなかを釣り登り休む日向に遠河鹿の声  後藤 章

返歌  秘剣@

木漏れ日のひかり川もに跳ね踊りみどりはじける夏はきにけり

空かける風の青さに瀬の音に融けつ水面の影に高ぶる   

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