チタン(チタニウムとも、titanium)は原子番号22の単体金属で、極めて
軽く(アルミニウムと同程度)、機械的耐久性に優れ、また腐蝕しにくいのが
特徴です。そのため、ダイバーズをはじめとするスポーツウォッチに使われる
ことが多かったのですが(IWCのPORCHE DESIGNシリーズ、OMEGAのSeamaster
シリーズ、SEIKOのSpeedmasterシリーズなどの一部製品)、最近、さらに
金属アレルギーを起こさないという点も注目されるようになり(そのため、
以前より歯科・医療用材料(ペースメーカーのケーシング、人工関節など)と
して幅広く使われています)、その点を謡文句とした製品も販売されるように
なりました(CITIZENのATTESAシリーズなど)。なお、純チタンはステンレス
スチールとほぼ同じ硬度しかもたないので(150Hv前後)、時計素材としては、
合金にしたり、表面を窒化処理したりして傷がつきにくくしたものも用いら
れています。
これだけ優れた性質をもったチタンがなぜ最近まで一般化しなかったかと
いうと、極めて加工しにくく、そのためコストが高くついてしまったため
です(単体では融点が1800℃と高い。合金にすると融点は下がるが硬度が
上がってしまう(450 - 500 Hv程度)さらに、空気中で加工すると酸化して
機械的性質の低下をきたすので、真空ないしアルゴンガス充填などの不活性な
雰囲気も必要となる)。それでもその優れた性質により需要がじわじわと増加し、
粉体を鋳型に入れて形成する技術などが実用化されてコストも次第に低下し、
より広く使われるようになってきたのです。また、最近では、さらに低いコスト
でその非アレルギー性、耐蝕性を生かすため、IP(イオンプレーティング;メッキ
の一種)により表面にチタンの層を形成した製品も作られています。
変わった使い方として、チタンをカーバイド化し、一種のセラミックとする
方法が挙げられます。これはRADOのSINTRAが素材として採用しており、チタンの
軽さ、非アレルギー性に加えて、より高い硬度を得ることができます。また、
これも金属チタン同様に、ステンレスなどの表面に膜として形成する方法も
実用化されています。