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    はてるまへ。

    会社をやめた私は、旅にでようと決めていた。退職金は全部自分のために使おう。
    そして一円もなくなったら、また新しくやりなおそう。

    それはアルバイト先の松阪屋の社員食堂だった。休憩時間にクリームソーダを 飲んでいた私は、昨日テレビで映ってた海の色もこんなだったなぁ、とぼんやり 思った。その次の瞬間(沖縄だ、行こう)と脳味噌を左から右に何かが走った。
    アメリカの友人のところに一ヵ月行く予定がチャラになり、どうしようかと考え ていた矢先のおもいつきだった。
     一ヵ月。日本を横断しよう。友だちノリちゃんも、仕事をやめたばかりでのん びりしてるっていってたな…。
    その後の行動は素早かった。休憩中にノリちゃんに電話した。
    「沖縄あたりにさぁ、旅行にいかない? …一ヵ月くらい」
    「ええ〜いいよ〜、楽しみぃ!」
    一ヵ月も付き合ってくれるか不安だったけど、よかった。
    ひとりで行くのつまんないなぁと思っていたから。
    気を使う人とじゃ嫌だけど。ノリちゃんは高校の時から一緒で栃木(わたしの出 身地)の友だち。高校時代にテニス部で、タブルスも組んでた。わたしが東京に 来てからもよくあそんでて気の合うお友だち。

    日にちを決め、まず離島へ行こうということにした。
     沖縄…。なんとなく私のなかでは軽い気持ちでは行くことのできない場所だ。
    いちばん遠い日本。日本でいて日本じゃないところ。
    「旅」のほうから呼んでいるような気がする。

    そして、あのテレビの海の色はすこし大げさに青すぎたなぁ…なんかちょっと嘘 くさい。期待はそこそこにしよう、と心の底で用心しながら、今から思えば奇跡 のような旅が始まったのでした。


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