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    島最後の日

    碧い夢

    9・18(木)
    朝、昨日の月食のことが新聞にでていた。
    なんと中秋の名月に皆既月食になるのはおよそ200年後だという。
    そして本土ではみえなかったらしい。
    台風が荒らしているから。 
    なんという奇跡。ここでは雲ひとつ見えない快晴の夜空だった。
    しかし、なんだか200年後もまた見られるような気がしてしかたない。
    また同じ人たちと。なんだかふつうにそう思うのだ。
    それに私たちは200年後の月食も見た、ということも言える。
    きっと200年後も月は同じようにあの浜辺でそっと欠けていくんだろう。
    200年後だけじゃなく、もっと先の。
    私たちは時を超えていた。
    それは、たしかに永遠をみたのだ。

    今日の午後で私たちは島を出る。石垣島で1泊して那覇へ船で行くことにした。
    安い宿を教えてもらい(1泊2000円)予約をした。

    なんだか、さみしくってしかたない。
    たったの一週間だったのに。
    みんなともお別れ。
    たまたま見た月食のように、互いの人生が重なっただけだ。
    また、それぞれの場所でいきてくんだなぁ。
    それでも、出会ったことの意味の深さよ。

    船が港についた。とうとうお別れ。
    民宿のみんなが見送りに来てくれた。
    郵便局員のルパンも仕事場を抜け出して見送りに来てくれた。
    ドクちゃんも一緒の船で石垣島へむかう。
    彼は1ヵ月もここにいたのだから、わたしより100倍哀しいだろう。
    でも元気に手をふっていたので、私たちも笑顔を作った。

    なんて素敵な人たちだったんだろう。こんな人たちがいるならまだ、大丈夫。

    そして船は出発する。

    わたしたちの旅は始まったばかりだった。
    でもわたしはまだあの碧い夢のなかにいる。
    こころの底はあの満月にてらされている。

    Fin.

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