第1回:渋谷川の水系を辿る#その5

さて、話題を渋谷川本流に戻します。渋谷駅の南で地上に姿を現した渋谷川は恵比寿駅付近まで明治通りとJR線の間を流れます。

恵比寿駅の近くで代官山、鶯谷からの流れをあわせ、川は流れを東向きに変えます。水量が少ないためか、暫く下ると、川底の中央に細い溝が作られ、水はそこだけを流されています。

恵比寿1丁目29番地では、地図には書かれていませんが、支流の合流部が開渠で残っていました。この流れは恵比寿駅西側から東方向に、渋谷川に並行するように流れていたようで、もとは現在の防衛庁技術研究所付近で三田用水から分水されていた流れのようです。

ここを過ぎてようやく流れの幅はもとに戻ります。 一部は新たな護岸工事がなされ、水抜きの穴から湧水が流れ込んでいます。

天現寺橋で北側から最大の支流笄川(こうがいかわ)が合流。南岸は慶応義塾幼稚舎で、緑が鬱蒼としています。

しばらく行くと首都高速2号目黒線が平行するようになり、天現寺ランプを過ぎると川の上に覆い被さるようになります。 この辺りの護岸は昔のままで、川底はコンクリートでなく、自然の砂利のままとなっています。 水は意外に澄んでいます。高速が覆い被さっていなければ結構よい景観なのですが。

天現寺橋から古川橋にかけて、川の南側は白金台、北側は麻布台となっています。 白金台側には目黒の自然教育園(旧白金御料地)があり、湧水を水源とする池を囲んで鬱蒼とした森が残されています。この森は江戸時代以来有名な六本木界隈を縄張りとするカラス達3千羽のねぐらにもなっています。

一方麻布台側は下町っぽい風景と大使館が立ち並ぶ高級住宅地が入り交じり、各国の人々が生活する不思議な空間になっています。 台地の西側は笄川の谷で、笄川の項で触れた有栖川記念公園が、ちょっとした谷頭の地形を残した湧水地を残しています。 ここの湧水は3ヵ所で、うち2ヵ所は滝になっていますが、これは現在ではポンプによる地下水のくみ上げによるものらしいです。もう1ヵ所は自噴の井戸で、わずかですが水が湧き出しているようです。滝のうち1つは池まで100mほどが小川になっていて、蛍の養殖がされています。

また、渋谷川に面した、台地の南側、南麻布3丁目の本村小学校の裏手には湧水を利用した釣堀があります。 ここは小さいけど深い谷の谷頭の部分にあたっています。 谷底には細い道があって、道の側溝にはわずかですが湧水と思われる澄んだ水が流れています。 おそらくかつては小川だったものだと思われます。この流れは直接渋谷川に落ちていたようです。

古川橋のところで今度は流路は90度曲がり、北向きになります。また、ここから川の名前は「古川」に変わります。この辺りの標高は5m。水源の新宿御苑の標高は30m、そして前述の麻布台、白金台は27、8mほど。台地の高さは水源とあまり変らないことから逆に谷が結構な規模のものであることがわかります。