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ある日の小滝家
※『ぐだぐだ。』の数時間後

===============CHARACTERS===============
小滝 茅子:23歳 会社員
荏原 慎悟:23歳 会社員
小滝 雅美(茅子母):47歳 主婦
小滝 義則(茅子父):49歳 会社員
小滝 雄太(茅子弟1):20歳 大学3年生
小滝 陽司(茅子弟2):17歳 高校3年生
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「ただいまぁ」
「あらあおかえり。早かったのね。ご飯は?」
「食べてない。慎悟来てるよ」
「こんばんは。お邪魔します」
「あらまっ。やあねぇ慎ちゃん、お邪魔だなんてそんな他人行儀な。茅ちゃん、ちゃっちゃっと着替えてきて手伝っ……って、ちょっ! 茅ちゃんっ! あんたっ!」
「えっ? えっ? なにっ? なによ?」
「なによ、じゃないわよ。あんた、それ!」
「あっ。……あーっ、……茅子だからそれしまっとけって言ったじゃんか」
「まあ! まあっ! あんたたち、そうなの? そうなの? とうとうなのっ?」
「あう。帰る前にしまおうと思ってたんだよ。もーお母さん目敏いー……」
「目敏いーじゃないわよ。お父さん、ちょっとちょっと! お父さんってば」
「あーもーーーお母さん引っ張んないでよー」
「ほら、お父さん、これ! 見てこれ! 雄ちゃん! 陽ちゃんもっ! もう、二人でオセロなんかしてる場合じゃないわよっ」
「なんだよおふくろうるせーったら……うお、お姉! 何これ!」
「何もなにも。貰ったんだもん」
「……うっそ、マジ?……姉ちゃん結婚すんの?」
「……慎悟くん。これは……、そういうこと、と解釈していいのかな」
「は……、まぁ、見ての……通り、です」
「つーかさ、つーかさ。『お嬢さんをくださいっ』ってやんないの? でもって親父が『ばかもーん、貴様なんぞにうちの娘やれるかーっ』って言ってちゃぶ台返すやつ」
「ばっかねーうちちゃぶ台なんてないじゃない。まずはちゃぶ台買ってこないと」
「……ちゃぶ台返し確定かよ……」
「別に父さんはだな。頭ごなしに反対するつもりは」
「お、じゃあ『熨斗つけてくれてやる』ってか」
「どうして雄兄はそう両極端なんだ……」
「もー、なんで昨日のうちに言わないのよ。そしたらお母さんササゲ買っとくのにー」
「ササゲ? なにそれ。つーか今日貰ったんだから昨日なんて知らないってばー」
「小豆の兄弟みたいなもんよ。お赤飯炊いとくのにってことよー。もー、慎ちゃんたら、おばさんにだけでもこっそり言ってくれれば準備したのにー」
「どーだっていーじゃん赤飯なんてたいして美味くもねーし」
「赤飯はまた今度で。その、今日はまだそのつもりじゃなかったんで、いずれちゃんとご挨拶させていただきます。そん時は、できればちゃぶ台返さないどいてください」
「いや、慎悟君。順調に行けばいずれこういうこともあるだろうと思っていたからな。……しかし本当にいいのか? 親が言うのもなんだが、うちの娘は融通の利かないから、結婚となるとかなり難儀すると思うぞ」
「お父さんそれって本当に親が言うことじゃないんじゃない?」
「性格は承知しているつもりです。きっと喧嘩もたくさんすると思います。でも俺、決めましたから」
「慎悟ってば、なんかはずかしーよ」
「なんでだよ」
「んなことより慎悟兄、プロポーズの言葉は? 言葉は?」
「もーほらー、やっぱ訊かれたー。だからそれっぽいセリフあった方が良いよって言ったじゃん」
「いいだろ。人に訊かれるからなんて理由で言い直しなんかできっかよ」
「んじゃそれっぽくないセリフは言ったんだ? 何? 何?」
「もーいーだろ」
「うは、照れてやんの」
「雄太もうぜってー奢ってやんねぇ」
「ちょ、慎悟お兄様、未来のお義兄様ってば」
「知んねーって」
「んじゃお姉」
「……雄兄、切り替え早すぎ……」
「んーと、『これ』、『やる』?」
「おまっ、そこ抜粋するか!」
「んじゃ、『付けとけ』、かな」
「わざとだ。こいつ絶っ対わざとだ!」
「なによもー。気に入らないなら自分で言えばいいでしょー」
「あー……こらこら騒ぐな。で、おまえたち、いつごろ、その、予定してるんだ」
「あ、いえ、まだ気持ちを確認しただけっつーか、具体的には……。部屋借りるのとか家財道具そろえるのとか、そういうの、俺としては自分の稼いだ金でやりたいし。そのための貯金がまだ全然足りてなくて」
「うん? 私その程度の貯金あるよ? 慎悟より二年長く社会人やってるのは伊達じゃありません」
「『俺の』、稼いだ金でやりたいの」
「うっわ、強情ー」
「茅ちゃんったら、意地見せる男の子のかわいさがわからないだなんて、まだまだねぇ。ねぇ慎ちゃん、式は? 式は? やんないの? 茅ちゃんのドレス姿、おばさん見たいわぁ」
「うす。がんばります。披露宴とかはちょっとキツイけど」
「え、や、あー、……マジ? やんの?」
「俺も見たい」
「う、ダイエットがんばります」
「必要ないだろ」
「だってほらぁ見て、二の腕がすごいんだよー」
「俺がいいっつってんだからいいの」
「なによそれー。ドレス着たらすっごい目立つんだからね。『うわ、花嫁さん、腕ごんぶとっ!』って、絶対言われるんだから」
「女はぷにっとしてるくらいがいいんだよ」
「わはは、慎悟兄、デブ専かっ! 良かったなお姉!」
「ちげーよ!」
「ざけんな。よくないっつの。デブじゃないっつの。人よりちょーっと二の腕が立派なだけだっつの」
「……慎兄、あのさ」
「うん?」
「その、ほんっとーに姉ちゃんと結婚すんの……?」
「なんだ、陽司反対?」
「そうじゃなくて……、姉ちゃんのどこがいいの?」
「わが弟ながら失礼なヤツめ。この姉のどこが悪いと!」
「どこって。んー、全部? でもとくにカワイイとこがサイコー」
「すげ、言い切り! おわ、お姉顔真っ赤!!」
「うっさい黙れ!」
「ほら陽司。茅子カワイイだろ」
「あああ、あんたも黙れぇ」
「な? けっこう照れ屋なんだ」
「もー、慎ちゃん! ノロケんのもたいがいになさいね! ほらもう、お父さん固まっちゃってるじゃないの」
「スミマセン」
「あ、や、いや、その、程ほどに、だな」
「もう晩の支度なんかしている場合じゃないわね。お寿司頼んじゃおうか!」
「お、らっきー。やっぱ特上な! 特上! こういう時頼まないでいつ頼むんだっていうようなヤツ!」
「……俺、握りより鉄火丼のがいい……」
「雄ちゃん、茅ちゃんのお財布の中身も考えてほどほどにね」
「え、うそ! 私? なんでっ? 私祝われる側じゃないのっ!?」
「やあねぇ。ゴルフだってホールインワン出した人が振舞うのよ。茅子が出すの当たり前じゃない」
「わはは、お姉の結婚はホールインワン並の珍事だってよ」
「黙れ雄太。あーもーしょーがないなー」
「あ、だったら俺も出す。俺もホールインワン出した側だし」
「慎悟はいいの! 結婚資金貯めるんでしょ! 無駄遣いしないの!」
「う、は、はい?」
「……慎兄、もう尻に敷かれてる……」
「おう、茅子の尻なら喜んで敷かれてやる」

――数秒沈黙――

「わはははは! 慎悟兄、Mか! Mなのか! マジ腹いてー!!」
「慎悟、恥ずかしすぎだよ」
「もー、慎ちゃんったら、いやぁねぇ。おばさん照れちゃうわぁ」
「……慎兄、……色ボケ……」
「慎悟くん、その、いろいろ後悔しないようにな」

「モウシワケナイデス」

<<< おわり >>>

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