アートと福祉を巡って

身体表現の可能性


古代の宗教的舞踊に端を発し、舞踊はいくつもの様式を生み出し、
様々な型や方法論で発達してきた。


試作途上のダンスに関しても、昨今やっと少し、”身体表現”として
認知され、人々の目が向けられるようになったと思う。


舞台芸術(必ずしも舞台で行なわれるとは限らないが)は、
非日常的空間を演出する表現の場である。
では、そのとき、そこにある”からだ”は、一体何を演じ、
表現できるのだろうか?


生まれたときから死ぬまで共に過ごすこの肉体は、日常の空間において、
その身振りやしぐさで、すでに演技しているといえるのではないだろうか。


”自然に”といいながらも、実は潜在的な心の動きが働いている場合もあるし、また、その人の体癖が関係する場合もあるだろう。


対して、障害をもつ人たちの偽りのない身振りやしぐさには、
ハッとするほどの輝きをもった瞬間がある。
そして、彼らが自らの意志を持って舞台に立つとき、
まさに、そこには、”身体表現”と呼ぶにふさわしい
原点があるのかもしれない。


本来、舞台芸術は、日常の多くの偽りを暴いてみせることも、
使命の一つだったと思う。
そこに人は、”普遍”や“真理”や”愛”を見出し、共感してきた。


障害をもつ人たちの身体表現は、これからの我々の歩んで行くべき
彼方を示唆しているような気がして、私は限りない可能性を感じている
のである。
 


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(C) 1998-2002 Yukari Hayakawa
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