庇護希望者への庇護のあり方を考えるデータベース


  解説&新聞記事:プラハ事件について


 

 

2002年5月7日

「日本では亡命者はいっさい受け入れず、数年間投獄の可能性も」
駐チェコ日本大使館員が現地報道機関に無責任回答

 最近、東欧を中心にロマ人(一般に「ジプシー」といわれている人々)に対する憎悪犯罪や迫害、差別事件が相次いでおり、ロマの人々の中には、攻撃に耐えかねて西側に亡命しようとする動きが起こっています。それに対して、イギリスなどの西欧諸国は必ずしもこれを歓迎せず、一部チェコ人の入国を拒否するといった動きが見られます。
 これについて、ロマ人の亡命申請に対する各国の対応の仕方について国営チェコ通信(CTK、http://www.ceskenoviny.cz/news/)が調査したところ、駐プラハ日本大使館の職員が「日本では亡命者はいっさい受け入れられず、数年間投獄される可能性もある。絶対チャンスはない。多額の航空券代を使い、失望するだけだろう」と回答したと報じられました。
 悲しむべきことですが、たしかに日本は厳しい「難民鎖国」政策をとっており、実際に数年間、強制収容所に収容される可能性が高いことは事実であり、この回答のしかたもあながち誤っているとは言えません。しかし、現実がそうだからといってその点だけを指摘するのは、あまりにも不適切です。す。逆に「日本はコワい国、行かない方がよい」といって、体よく難民申請者を追っ払うための方便としてこうした回答をしているという解釈もなりたちます。
 実際には、日本は難民条約の加盟国であり、あまりにも多くの点で改善が必要ではありますが、一応、難民受け入れのための制度も持っています。それがこのような回答では、日本が「難民条約」を遵守していないということを海外にふれて回っているようなものです。
 アフガニスタンについても、外務省と法務省が結託して、日本に入国しようとするアフガン人に正規の入国許可を与えないように画策していたという事実が明らかにされました。外務省は日本政府の一員なのですから、自国の難民認定行政のあり方についてこのような無責任な態度をとるのでなく、国際人権法である難民条約を遵守するよう、法務省をはじめ、政府部内を適切にコーディネイトすることに力を入れるべきです。

2002年5月3日 共同通信記事

チェコ通信による報道(翻訳)

 

2002年5月7日 共同通信

日本に亡命のチャンスはない?

 【ウィーン2日共同】在チェコの日本大使館(石田寛人大使)職員が、チェコのロマ(ジプシー)が日本に来て亡命を求めた場合の対応について、日本では亡命者は一切受け入れられず、数年間投獄される可能性すらある、と答えていたことが二日、分かった。チェコ通信が伝えた。
 チェコでは東部オストラバ地方のロマの間で最近、日本など西側諸国への集団亡命の動きが出ている。
 日本は、亡命を求める外国人が難民認定申請した場合、入国管理局で審査、最終的には法務大臣が判断を下すと定めている。しかし、在チェコ大使館の対応は、実際は難民受け入れに消極的な日本の姿勢をあらためて浮き彫りにしたといえそうだ。
 プラハの日本大使館は「大使や領事は取材を受けていないが、現地職員も含め再度調査する。亡命は一切あり得ないという大使館の公式見解があるわけではない」と話している。
 チェコ通信外国ニュース編集部は「大使館の当局者から取材して書いた確かな記事だ」と話している。
 チェコ通信によると、同通信記者が二日、日本大使館に、ロマの日本への亡命の可能性を問い合わせたところ、応対した職員が日本は亡命者は受け入れず、誰にも避難所は提供しないと回答。さらに「絶対チャンスはない。多額の航空券代を使い、失望するだけだろう」と述べたという。
 オストラバ地方では高失業率からロマへの差別事件が頻発、比較的裕福なロマの家族が西側諸国への亡命を試みている。日本とチェコは相互に査証を免除しており、亡命を検討している家族が複数いるという。

 


2002年5月2日 チェコ通信(翻訳:稲場雅紀) 

日本はチェコのロマ人たちを歓待しない

プラハ発5月2日木曜日(チェコ通信) 「もし、チェコのロマ人が日本に庇護を求めたら、彼らは航空運賃に無駄に金を使った上、数年間投獄されるかも知れない」日本大使館は本日、チェコ通信に対してこう語った。
 日本大使館は「日本はいっさい難民を受け入れないし、誰にも庇護を与えない」とも語った。
 水曜日以降、オストラヴァ地方のロマ人の複数の家族が、今回は日本に対して新しい移民の波をスタートさせようとしているが、大使館はこのような形で、その情報に対応し続けている。「彼らは絶対にチャンスを得ることはない。彼らは航空運賃にたくさんのお金を費やすだけだ。彼らは失望するだろう」と、日本大使館の職員はチェコ通信に語った。
 東京への航空運賃は、往復で最低でも23000クラウン(75万円程度※訳注:正規運賃と思われる)する。
 国際ロマ連合(The International Romany Union)の指導者であるエミール・スクカ(Emil Scuka)はチェコ通信に対して、チェコのロマ人が集団で日本や他の国に移動する計画を立てているという情報は持っていないと語っている。
 ロマ市民イニシアティヴ(Romany Civic Initiative)の議長であるステファン・リカルトフスキー(Stefan Licartovsky)も、ロマ人たちが日本を新しい故郷として選ぶことはないだろうと語っている。
 チェコのロマ人たちは、過去にイギリス、ノルウェー、カナダ、ニュージーランドへの旅に挑戦した。カナダとオーストラリアは、チェコ人にビザを義務づける制度を導入してこれに対応した。イギリスは、プラハのルジニェ空港でのビザのチェックを強化した。
 一方、チェコは日本との間で1998年からビザ免除協定を結んでいる。しかし、日本の入国審査はとても厳格であり、すべての旅行者が説得力のある方法で自分の旅行の目的を示さなければならない。
 オストラヴァにあるロマ民主センター(Romany Democratic Centre)の議長を務めるジョセフ・ファクナ(Josef Facuna)は、オストラヴァ地方のロマ人の家族たちはイギリスとカナダへの試みが失敗した後で、今回は日本に向けて移民の波を準備していると水曜日に述べた。
 「彼らはだいたい、高価な航空券を購入する経済的余裕のある裕福な家族ですよ」とファクナは述べ、彼らは故郷での悪い生活状況に対して抗議したいのだと付け加えた。
 ファクナによると、次の移民の波は夏が来て気候が暖かくなった段階でスタートするだろうとのことである。「もっと多くの家族が私たちに、自分たちがフィンランド、ノルウェー、イギリスに育子とを計画していることを教えてくれた。私たちは全く驚かない。オストラヴァ地方のロマ人の失業率は100%であり、人種主義的な動機を持った襲撃も今までに例を見ないほど頻繁だ」とファクナは述べた。
 オストラヴァ地方は北ボヘミア地方と同様に、失業が最悪の状況を迎えている地方であり、国全体で9%の失業率であるのに対し、この地方の失業率は20%に近づいている。
 ファクナは、ロマ人たちは親切で有名なのでこの国を選んだのだと述べた。


2002年5月9日 チェコ通信(翻訳:稲場 雅紀)
 

 

日本は難民をほとんど受け入れない

プラハ発5月9日(チェコ通信) チェコ共和国の日本大使館の参事官であるクボタ・トヨカズはチェコ通信に対して、チェコのロマ人移民たちが日本に来る可能性についての情報はメディアからしか得ていないと述べた。
 彼は、ロマ人たちが今回、日本に来ることを計画していると聞いたのはこれが初めてだと述べた。
 数日前、国際ロマ連合(International romany Union)も、このことについての情報はないと述べた。
 5月1日、北モラヴィアのオストラヴァ地方にあるロマ民主センターの議長、ジョセフ・フォクナはチェコ通信に対し、オストラヴァ地方のロマ人の家族が、イギリスおよbにカナダへの試みが失敗した後で、今度は日本に移民の波を準備していると述べていた。 
 クボタは、東京(の政府)はチェコ市民からの庇護申請を未だ受け取っていないと述べた。プラハの日本大使館の職員はすでに先週、日本は難民をいっさい受け入れないと述べたが、クボタは本日、この情報を修正した。
 彼は、1980年代から2000年までの間、日本は国際条約に基づく難民をわずか265人しか受け入れていないと述べた。一方、クボタは、日本がインドシナから10000人以上の難民を受け入れたが、この多くは「ボートピープル」であると述べた。
 クボタによると、庇護申請は日本の法務省によって審査される。大使館で庇護を申請することは不可能で、到着後、日本国内で審査することになる。クボタは、チェコ市民からの難民申請が受け入れられるかどうかについては明言を避けた。
 プラハと東京の間には、ビザ免除の関係がある。チェコ人は日本に、90日間、旅行者として滞在することができる。
 チェコ外務省は以前、日本では女性が売春をさせられ、虐待される可能性があると警告したことがある。クボタはこの問題について詳細を語らなかったが、このようなことが起こる可能性を否定もしなかった。
 彼は違法な雇用の問題はチェコ市民だけでなく、そのほかの国民、たとえばスロヴァキア人、中国人、ロシア人の女性をも巻き込む可能性があると述べた。クボタは、芸術家ということで労働を許された女性が、実際にはナイトクラブで働かなければならないということが起こり得ることを認めた。また、彼はプラハの日本大使館が一年間に多数の労働許可を出していると推測した。クボタは、外国人が旅行者として日本に生き、許可なく英語の教師やセックスワーカーとして働くというケースが一般に知られていると述べた。チェコ外務省によると、日本当局は空港でのチェックを厳格にしている。もし何らかの疑いがあれば、渡航者は入国を許されない可能性がある。

 

 


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