contemporary jazz/improv の文脈で活動するスイス出身ベルリン在住の trombone 奏者 Samuel Blaser [関連レビュー] の 4tet での新譜。 今までの 4tet は Marc Ducret など guitar を入れていたが、piano に入れ替えている。 彼のもう一つのプロジェクト Consert In Motion の piano 奏者 Russ Lossing と bass 奏者 Drew Gress が加って、室内楽的な色を濃くなっている。 Jimmy Giuffre トリビュートがテーマのアルバムで、Giuffre の曲を3曲 (1, 7, 8)、 Giuffre が取り上げた Carla Bley の曲を2曲 (3, 12) 演奏している。 1950s の Bob Brookmeyer - Jim Hall との trio 時代ではなく、 アブストラクトな Free Fall (Columbia, 1962) でもなく、 その直前の Thesis (Verve, 1961) と Fusion (Verve, 1961) から曲が採られている。
オープニングや “Cry Want” やエンディングの “Jesus Maria” など、 淡々とした Jimmy Giuffre の clarinet を、trombone で重さを感じさせずにカヴァーするのもさすがだが、 drums 入りの編成でバワーアップした “Temporarily” や複雑な展開にシャープさを増した ”Scootin' About” のカバーも良い。 自作曲も Giuffre とも共通する抽象度の高い淡々とした展開の曲が多く、 “Trippin'” のように Blaser の特殊奏法を堪能できるソロの曲もある。 強い piano の音と歪んだ Rhodes の音を交えた展開に爆発寸前の不穏さを感じる “Missing Mark Suetterlyn” も良い。 Giuffre の曲の カバーの絶妙さだけでなく自作曲の楽しめるアルバムだ。