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Review: The Music Of Georg Friedrich Haas (concert) @ Tokyo Opera City Concert Hall: Takemitsu Memorial, Tokyo
2025/06/15
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル, 初台
2025/05/22, 19:00-21:00
Felix Mendelssohn: The Hebrides overture, op. 26 (1830/1832)
Gustav Mahler: Adadio aus der Symphonie Nr. 10 Fis-dur (2014-15)
Georg Friedlich Hass: “... e finisci già” for orchestra (2011)
Georg Friedlich Hass: concerto grosso Nr. 1 for 4 alphorns and orchestra (2014)
Jonathan Stockhammer (conductor), Hornroh Modern Alphorn Quartet, 読売日本交響楽団 [Yomiuri Nippon Symphony Orchestra].

現代音楽 (contemporary classical) の作曲コンペに合わせて開催されるコンサート『コンポージアム』の審査員の曲の演奏会です。 今年の審査員となった作曲家 Georg Friedlich Haas はスペクトル楽派 (École spectrale) の流れを汲むとも言われるオーストリア出身の作曲家ですが、 今までCD/レコードも含め聴く機会はありませんでした。 そのような感じで特に予備知識はありませんでしたが、最近『コンポージアム』へ行けてなかったので、2022年以来の3年ぶりに足を運んでみました。

自作曲からなる後半の1曲目、10分弱の “... e finisci già” は、微分音も使い、倍音を意識してテクスチャを作るように音を重ねていくような曲でした。 この曲も興味深かったのですが、面白かったのは2曲目、約30分のアルプホルン4本とオーケストラのための concerto grosso Nr. 1。 アルプホルンは民族楽器的というよりむしろ低音の持続音発生装置のような使い方で、 音高をずらしたアルプホルンを持続音で鳴らすことで、うなりでウォンウォンと聞こえるようになります。 そこで、そのうなりに合わせるようにオーケストラが打楽器と弦楽器で Steve Reich も連想させるような反復するフレーズを脈動するように鳴らし、それを引き継いでいきます。 そして、それを再びアルプホルンのうなりへと返します。

パンフレットによると Haas はスコアの中でこれを「響きと連続体の幻影」と呼んでいるとのこと。 楽譜で書かれていても分解能低い自分の耳ではよくわからないことが多いのですが [鑑賞メモ]、この曲では本当にそう聴こえて、そのことにむしろ驚いてしまいました。 うなりの周期は周波数差によるので、正確なアルプホルンのピッチとオーケストラのテンポのコントロールが必要な演奏をしていると考えると、 自分にはオーケストラがこのように鳴ることを聴く機会など滅多に無いだけに、ますます面白く感じられました。 後半になると、コンチェルトらしくオーケストラの方がテクスチャ感強い音を響かせている中でアルプホルンが動き回ったりと、展開というか変化も感じられました。

前半は Haas 選曲による交響曲の抜粋2曲、合わせて30分余り。 おそらく、後半の自作曲に向けた意図あるとは思いますが、それを掴みかねました。 後半の2曲がかなり好みの音だったので、前半も Haas の曲を聴きたかったと思わせる、そんな演奏会でした。