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Review: Ballets Russes: The Art Of Costume 『魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展』 @ 国立新美術館 (展覧会)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2014/08/03
国立新美術館 企画展示室1E
2014/6/18-9/1 (火休), 10:00-18:00 (金10:00-20:00)

20世紀初頭、パリ (Paris, France) そしてモンテカルロ (Monte Carlo, Monaco) を拠点に活動し、 それ以降のバレエ・ダンスに大きな影響を残した Sergei Diaghilev 率いるバレエ団 Ballets Russes (バレエ・リュス) の展覧会。 その総合芸術性を多面的に捉えるものではなく、 オーストラリア国立美術館 (National Gallery of Australia) 所蔵の約140点の衣装をメインに据え、 その衣装から Ballets Russes の変遷を観る展覧会だった。

Ballets Russes については、 『バレエとダンスの歴史』 (平凡社, ISBN978-4-582-12523-8, 2012) [読書メモ] でも一章が割かれている。その他、様々な本などを通して、 当時の前衛的な芸術運動との関係やバレエ・ダンス史上の重要性については、予備知識はあった。 しかし、その第1回公演の1909年から Diaghilev の死の1929年までの20年間の変遷については、 1912年に Vaslav Nijinsky が振付家デビューして Mikhail Fokin が去ったが、Nijinsky も1914年には解雇された、とか、 1921年にモンテカルロに拠点を移し、1924年にロシアから亡命してきた George Balanchine が加わった、などというエピソードとしては知っていたが、 Ballets Russes としてのスタイルの変遷については具体的なイメージを持ち合わせていなかった。

この展覧会で年代順に展示されたバレエ衣装を追って見ることで、衣装を通してスタイルの変遷、 さらに、Ballets Russes だけでなくその時代の雰囲気の変化も見るようだった。 とても興味深く観られた展覧会だったが、その一方で、 展示されていた衣装の約半数はモダニズム的傾向が顕著となる1913年以前のもの。 その異国趣味も楽しめたけれども、 有名な Parade (1917) に関連する資料もなく、 モダニズム以降の薄さに観ていて不完全燃焼気味になったのも確かだった。 もちろん、展覧会の元となるコレクションに依存するところもあり、仕方ないとは思うけれども。

作品の題材は衣装も異国趣味もののが多いのだが、 1913年頃までのものが古典趣味的で細かい装飾なのに対し、 第一次世界大戦以降は異国趣味にしても大胆な柄だったり (Le Coq d'Or, 1914; 衣装: Natalia Goncharova)、 スッキリした直線的なシルエットだったり (Le Chant du Rossignol, 1920年; 衣装: Hwnri Matisse)、雰囲気が大きく変わる。 これは、Ballets Russes 自身の変遷もあるだろうし、 ベルエポックの Art Nouveau 的なスタイルから戦間期の Art Deco / Avant-Garde 的なスタイルへ、 時代の流行の変化を反映してもいるのだろう。

個人的な好みは、やはり、モダニズム以降のもの。 中でも最も興味を引かれたのは、工業国家としてのソ連邦建設をテーマとした Le Pas d'Acier (1927; 衣装: Georgi Yakulov)。 この展覧会でこの作品を知ったのだけれど、Sergei Prokofiev の音楽で、写真を見ると構成主義的な舞台だ。 1925年パリのアールデコ展 (L'Exposition internationale des arts décoratifs et industriels modernes) のソ連館 [関連レビュー] に触発されたようで、 Ballets Russes は Avant-Garde のアーティストと交流があったので影響は不思議ではないが、 ここまで直接的な作品を作っていたのか、と。 そんなことを知ることが出来たことも、この展覧会での収穫だった。