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Review: 『こどもとファッション ––小さい人たちへの眼差し––』@ 東京都庭園美術館 (ファッション展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2016/08/21
東京都庭園美術館
2016/07/16-2016/08/31 (7/27,8/10,8/24休) 10:00-18:00 (8/5,6,12,13 10:00-21:00).

18世紀末から20世紀初頭の西洋のこども服と、同時代の日本の洋装のこども服を、 保存状態の良い資料 (実際のこども服) やファッションプレート、 当時のこどもを描いた絵画、絵本や写真などを通して辿る展覧会です。 単なるファッション展というより、近代以降の「こどもの発見」をこども服を通して見るような展覧会でした。 また、扱っている時代が 『ファッション史の愉しみ−石山彰ブック・コレクションより』展 (世田谷美術館, 2016) [鑑賞メモ] と同じということもあり、その展覧会をこども服の観点から補完するよう。 この展覧会で18世紀末から20世紀初頭のファッション史が頭に入っていたことも、理解の助けになりました。

18世紀の思想家 Jean-Jacques Rousseau の「こどもの発見」などを背景に、 大人の服と区別されるこども服が登場するのですが、その流れは一様ではなかったとのこと。 帝政スタイルのシュミーズ・ドレスは18世紀にこども服として登場し、それが大人の服として広まったとのこと。 19世紀前半は大人服のミニチュアに戻ったものが、 19世紀後半、エプロンドレスやローウェストのワンピースのようなこども服が登場するという。

日本の洋装こども服については、服の資料は少なく、絵画等の関連資料が中心。 それでも、まずは和装にエプロン (前掛け) という形から洋装がこどもへ浸透していったことや、 大正から昭和初期にかけての戦前モダン期は、大人より洋装が進んでいたことなどが伺える展示でした。 ところで、大正〜昭和初期のこども服の資料として、 絵画、写真、ポスターなどの商業美術等が使われていたのですが、映画はありませんでした。 しかし、例えば、小津 安二郎 『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』 (松竹蒲田, 1932) や、 清水 宏 『子供の四季』 (松竹大船, 1939) などのこどもを主人公とした映画は、 この展覧会の関連資料として使えそうとも思いました。