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Review: 『闇に刻む光 アジアの木版画運動 1930s-2010s』 @ 福岡アジア美術館 (展覧会); 吉岡 徳仁 『ガラスの茶室 – 光庵』 @ 佐賀県立美術館 (デザイン展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2019/01/20
Blaze Carved in Darkness - Woodcut Movement in Asia 1930s-2010s
福岡アジア美術館
2018/11/23-2019/1/20 (水休;12/26-1/1休), 10:00-20:00.

1930年代に魯迅が推進した木版画など戦間期の日本と中国の木版画に始まり、 現在 (2010年代) のインドネシアやマレーシアのパンクミュージシャンやアーティストによる木版画まで、 20世紀の東アジアと東南アジアで展開された政治・社会運動と強く結び付いた木版画を取り上げた展覧会です。 その表現の形式や内容というより、国を越えた影響関係や運動のネットワークを示すような資料を含めた展示が、とても興味深いものでした。 1930年代の魯迅の活動は中国と日本に跨るものだったし、 1950年代の日本の版画運動の版画がインドネシアの版画運動の新聞でも紹介されていたり。 『アジアにめざめたら アートが変わる、世界が変わる 1960-1990 年代』を観た時に 「美術史も各国史からグローバルヒストリーの時代へ」という言葉が頭を過ぎったわけですが、 こちらの展覧会の方が、政治・社会的背景を踏まえつつ木版画運動の国を越えた文化交渉の現代史をきちんと描いていて、よりそれらしい展覧会でした。 さすが、アジア近現代美術に特化した美術館として20年活動し続けてきただけはあります。

Glass Tea House - KOU-AN
佐賀県立美術館
2018/11/28-2019/2/11 (12/29-12/31,1/21,1/28,2/4休), 9:30-18:00.

素材に着想した透明感あるデザインを得意とするデザイナー 吉岡 徳仁 が、 2011年にデザインを発表し、2015年に京都東山の将軍塚青龍殿に実作・設置した「ガラスの茶室 – 光庵」を巡回設置させる展覧会です。 屋外ではなく屋内での展示でしたが、白く光る壁面を背景に設置された茶室は お点前する人のシルエットも計算されており、実にフォトジェニック。 しかし、関連しての展示が期待したのですが、 ガラスのベンチ “Water Block” やテーブル “Waterfall” などいくつか展示されているだけで、 過去のプロジェクトを紹介する30分余りのビデオ上映はあれど、会場でのインスタレーションは無し。 ガラスの茶室も、お点前パフォーマンスをしていて使用のイメージも楽しめたものの、 鑑賞者も参加できるわけでなく (もちろん鑑賞者を参加させるのは無理がありそれも仕方ないとは判るのですが)、 微妙に物足りなく感じた展覧会でした。