毎年恒例の国立映画アーカイブのサイレント映画の上映企画 『サイレントシネマ・デイズ2021』 で このサイレント映画を観てきました。
スタントを使わないアクションで 『怪傑ゾロ』 (The Mask of Zorro, 1919) などの冒険活劇のヒーローを演じ、サイレント映画で人気を博したアメリカの俳優 Douglas Fairbanks。 ソヴィエト・ロシアのアヴァンギャルド期の映画ポスター [鑑賞メモ] にも多くなっている程ですが、 スチル写真や短い動画をチェックした事がある程度だったので、ちゃんと観る良い機会と、足を運びました。
バクダットの宿無しの盗賊が、街中で見染めたお姫様をさらおうと、偽って花婿候補となって王宮に入りこむが、お姫様の本心を知り、改心します。 そして、様々な困難を乗り越え魔法の品を得て、それで作った大軍勢で、お姫様を窮地から救い、正式に王子として迎えられてハッピーエンドという、典型的な冒険活劇物です。 まだ特撮技術も洗練されていない頃ですし、物語も単純、後半、ヒーローが様々な困難を乗り越えていく場面もロール・プレイング・ゲームのよう。 とはいえ、空飛ぶ絨毯のような特撮や、大きな王城のセットを使った大軍勢のスペクタクルなど、当時としては画期的だったのだろうと思わせるだけのものはありました。 流石に最近は実写の映画・TVドラマなどであまり見かけなくなったように思いますが、 「快盗」ヒーロー主役がで、アクションとコミカルな場面を交えつつ、陰謀に巻き込まれたヒロインを救う、 という冒険活劇の原点を観るようでした。 (自分はアニメーション映画 『ルパン三世 カリオストロの城』 (1979) を連想しました。)
併映でサイレントの短編映画 Benjamin Stoloff (dir.): Grief of Bagdad (Fox (USA), 1925)。 The Thief of Bagdad の城内の主要な場面を中心にストーリーを簡略化して、 ヒーロー (盗賊)、お姫様、敵役の (モンゴルの) 王子の3役を猿 (チンパンジー) で演じさせたパロディです。 よくこんなものを作ったなと思いつつ、元ネタを観た直後だったので衣装などのディテールにこだわりが感じられ、 笑いながら観ることができました。
上映は柳下 美恵 のピアノに加え 鳥飼 りょう のパーカッションの生伴奏付きでした。 状態の良いフィルム上映で生伴奏付きという、現在の日本ではベストに近い環境で観られて良かったでしょうか。