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Review: 『恵比寿映像祭2024 — 月へ行く30の方法』 Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2024 — 30 Ways To Go To The Moon
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2024/02/11
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2024 — 30 Ways To Go To The Moon
東京都写真美術館 ほか
2024/02/02-02/18 (月休), 10:00-20:00 (2/18 -18:00)

東京都写真美術館主催のアニュアルの映像芸術展です。 ほぼ毎年定点観測的に観てきていますが、去年は上映プログラムを優先して観たので [鑑賞メモ]、 今年はメイン会場の展示を中心に観ました。

2F展示室は東京都写真美術館のコレクションを含む多様な作品を展示です。 パーティションの類を立てずに展示していたので、雑多さが一層増し、 個々の作品に向かい合うのがなかなか難しい展示空間でした。

そんな中では、雑誌 Life のフォーマットを使って 日常の中の何気ない中での性的偏見によるトラウマを受ける時を切り取るという シミュレーショニズム的な作風の Tracey Moffatt: From the series of “Scarred for Life” (1994)、 いかにも1970年代のコンセプチャルな作風ながら可愛らしい不条理さの Marcel Broodthaers: Interview with a Cat (1970) や John Baldessari: Teaching a Plant the Alphabet (1972) などが印象に残りました。

最近の作品の中では、動物園での飼育動物向けの玩具を人が淡々と無表情に使用する様子をビデオで捉えた Joanna Piotrowska: Animal Enrichment (2019) が皮肉も効いていて面白く観ました。

大判のポスターを床に整然に積み上げ観客に持ち去らせる Felix Gonzalez-Torres: Untitled (1992/1993) はタイトルだけでは区別し難いのですが、今回の作品では空に飛ぶ鳥を小さく捉えたモノクロの写真のポスターを使用していました。 ポスターや銀紙包みのキャンデーなど何回か体験したことのある作品です [鑑賞メモ]。 他の観客が誰も取ろうとしないので、手本になろうとポスターを取ったものの、やっぱり持て余します。 今回はポスター自体はスタイリッシュで良かったのですが。

3F展示室は去年から始まった「コミッション・プロジェクト」に関するもの。 去年はファイナリスト4名の展示でしたが、 今年はその結果の第1回特別賞を受賞した2名のアーティスト (荒木 悠, 金 仁淑) による総合テーマに合わせた作品を展示していました。

B1F展示室では4組の作家に焦点を当て、それぞれ区画されたスペースで展示をしていました。 このくらいの展示密度の方が、個々の作品には向き合えるでしょうか。 今回の総合テーマ「月へ行く30の方法」の元となった、拾ったものを組み合わせての 土屋 信子 によるインスタレーションも、 雑然とした空間ではなくホワイトキューブの空間で展示されてこその空間構成の面白さでしょうか。

青木 陵子 + 伊藤 存 《9歳までの境地》 (2011) の スマートフォン大の小型モバイルプロジェクタとせいぜい20〜30cm大のオブジェを組み合わせた 小さなプロジェクションマッピングは、その投影されているアニメーション映像も含めて、観ていて童心に還るよう。 今回の恵比寿映像祭で最も印象に残りました。

恵比寿ガーデンプレイス センター広場 では、オフサイト展示として 『Poems in Code—ジェネラティブ・アートの現在/プログラミングで生成される映像』 と題した上映が行われていました。 自分が見ている間は、原色を多用した映像が多く、 クラブでのテクノのオールナイトイベントへ時々足を運んでいた2000年前後に目にしたVJの映像を連想しました。 鮮やかな色彩の映像は商業施設という空間の中でも目立っていましたが。