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Review: 『TOPコレクション トランスフィジカル』 @ 東京都写真美術館 (写真展); Luigi Ghirri: Infinite Landscapes @ 東京都写真美術館 (写真展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2025/07/21
TOP Collection — transphysical
東京都写真美術館 3階展示室
2025/07/03-2025/09/21 (月休; 月祝開, 翌火休). 10:00-18:00 (木金-20:00; 8/14-9/19木金-21:00)

総合開館30周年を記念してのコレクション展の第2弾です。 第1弾 [鑑賞メモ] に続いて学芸員4名の共同企画で、 「撮ること、描くこと」、「dance」、「COLORS」、「虚構と現実」、「ヴィンテージと出会うとき」の5つのテーマ展示 (「COLORS」が4人の共同企画で他はそれぞれの企画) の組み合わせです。 第1弾の開館記念展の再現のようなわかりやすさはありませんでしたが、 第1室に展示されたHenry Peach Robinsonの合成印画法と第5室に展示されたAnsel Adamsの技法Dodging & Burningに発想の近さを感じるなど、個々の企画を超えて意外な相関に気付かされました。

個別の作家では、ニュージーランド出身で戦間期はロンドンで活動した Len Lye の純粋映画的なアニメーション、 1970年代後半に南カルフォルニア Zuma Beach の廃住居に抽象的なグラフィティなど手を加えてカラーで撮った John Divola: Zuma Series など、 芸術運動的な文脈から見落としがちな作家に目が止まりました。 日本の作家では、液晶絵画的な映像作品の液晶モニタに実際のペインティングをオーバーレイした exonemo: Heavy Body Paint (2016) に引かれました。

Luigi Ghirri: Infinite Landscapes
東京都写真美術館 2階展示室
2025/07/03-2025/09/28 (月休; 月祝開, 翌火休). 10:00-18:00 (木金-20:00; 8/14-9/19木金-21:00)

測量技師としてのキャリアの後、コンセプチャルアートの影響下で1970年代から1992年まで活動したイタリアの写真作家の展覧会です。 といっても、意識して観るのはこれが初めてで、イタリアの写真史もしくは現代美術史の中での位置付けなど、表現の文脈も把握できていません。 やはり日本と米英仏独程度しかちゃんと観てこなかったのだなと、反省させられました。

正面性の強い構図で絵を描くかのようにパンフォーカス気味に撮った写真が多く、 鑑賞者も入れ込んで美術館の中の絵画を撮ったものなど Thomas Struth など連想させますし、 いわゆる Becher Schule のドイツの写真に近いものを感じました。 その一方で、そこまで即物的でクールではなく、彩度を抑えたほんのり色温度低い画面作りに人間の体温を感じられるようでした。

B1F展示室では『被爆80年企画展 ヒロシマ1945』 [Hiroshimada 1945 — Special Exhibition 80 Years after Atomic Bombing]。 2023年に報道機関と広島市が共同でUNESCOの「世界の記憶」[Memory of the World] への登録を申請した「広島原爆の視覚的資料 ― 1945年の写真と映像」 (写真1532点、映像2点) を基に構成した展覧会です。 この前の展覧会『ロバート・キャパ 戦争』もそうでしたが、 今までにも本やTVドキュメンタリーなどで観たことのある写真もありましたし、 個々の写真の持つ迫力ももちろんありますが、写真約170点という量にも圧倒されました。